四逆散の効能:胆嚢炎、胃炎、神経症、ストレス、自律神経失調症
体の臓器に炎症が起こると、熱をもったり痛みを伴ったりします。そこで、体の中で生じている炎症を鎮めるために使用される漢方薬として四逆散(しぎゃくさん)があります。四逆散は胆のう炎や胆石症、胃炎、気管支炎などに対して使用されます。
また、自律神経失調症では、神経の働きが悪くなることで胃炎を生じたり精神状態が悪化したりします。そのため、神経症や不眠症、ヒステリーなどにも四逆散を活用します。ストレスに対して、四逆散を用いることもあります。
四逆散(しぎゃくさん)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。四逆散であれば、次のような人が有効です。
・比較的体力がある
・胸脇苦満(脇腹が圧迫して苦しい状態)を有する
・四肢が冷える
四逆散と同じような炎症を鎮めるために使用される漢方薬に、小柴胡湯(しょうさいことう)や大柴胡湯(だいさいことう)が知られています。小柴胡湯は「体力中等度の人」に用い、大柴胡湯は「体力充実の人」に用います。そして、「小柴胡湯と大柴胡湯の間」に位置する体力をもっている人に対して、四逆散が有効であるとされています。
漢方では体力や様子を考慮しながら投与するため、人によって使い分けが必要です。なお、漢方の古典である「傷寒論(しょうかんろん)」に四逆散が記載されています。
四逆散の作用
炎症や痛みを鎮める四逆散には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の4種類が配合されています。
・柴胡(さいこ)
・枳実(きじつ)
・芍薬(しゃくやく)
・甘草(かんぞう)
生薬の中でも、柴胡(さいこ)には炎症を鎮める作用が知られています。また、枳実(きじつ)には精神状態を落ち着かせる働きがあり、芍薬(しゃくやく)には痛みを取り除く作用があります。これらさまざまな働きを有する生薬を組み合わせることで、炎症などを取り除くのです。
薬の効果を調べる試験でも、胃潰瘍を抑制したり肝臓・胆道の障害を抑えたりする作用が動物実験などで確認されています。
四逆散の名称にもある四逆とは、「四肢の逆冷」という意味があります。「四肢の逆冷」とは、本来は温まるべきものが温まっていない状態を指します。炎症が起こると、通常は熱を帯びるようになります。しかし、炎症が起こっているにも関わらず、四肢が冷えている場合は四逆散が有効です。
四逆散の使用方法
四逆散を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
慎重に投与すべき対象としては、「著しく体力の衰えている人」がいます。これらの人に投与すると、症状の悪化を招く恐れがあるからです。
これら四逆散としては、
・胆のう炎、胆石症
・胃炎、胃酸過多、胃潰瘍
・気管支炎
・神経症、不眠症、ヒステリー
・自律神経失調症
などの症状に有効です。強いストレスを受けると、これら胃炎や冷え、自律神経失調症、ヒステリーを引き起こすことがあります。ストレスは身体症状や精神症状と密接に関わっており、「ストレスに使用する漢方薬」としても四逆散が知られています。
このような特徴により、体で起こっている炎症や痛みを取り除き、神経症やヒステリー、自律神経失調症などの身体・精神症状へ幅広く働きかける漢方薬が四逆散です。なお、心の調子が優れない場合に有効であるため、うつ症状に四逆散を用いることもあります。
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