柴胡加竜骨牡蛎湯の効能:高血圧、多汗症、パニック障害、うつ病
高血圧や慢性腎不全などの症状に陥ると、これが原因になって動悸や不眠などの症状が表れるようになります。特定の病気を発症することにより、一見するとまったく関係なさそうな症状まで表れるようになるのです。そこで、これらの症状を鎮めるために使用される漢方薬として柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)があります。
先に挙げた疾患では、神経が高ぶった状態にあります。そこで、柴胡加竜骨牡蛎湯を使用することで心身ともに穏やかにさせるのです。
精神安定作用があるため、柴胡加竜骨牡蛎湯は神経衰弱症やてんかん、ヒステリーなどにも使用されます。また、多汗症やパニック障害、うつ病などに応用されることもあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。柴胡加竜骨牡蛎湯であれば、次のような人が有効です。
・体力は中等度以上
・精神不安がある
・動悸、不眠、便秘などを伴う
精神が不安定な状態であると、動悸や不眠症、イライラなどの症状が表れやすいです。このような様子を示す人に対して、柴胡加竜骨牡蛎湯が使用されます。ただ、比較的体力のある人に用いられるため、虚弱体質の人(虚証)には向かない漢方薬です。
なお、漢方の古典である「傷寒論(しょうかんろん)」に柴胡加竜骨牡蛎湯が記載されています。漢方の原点ともいえる古典が傷寒論です。
柴胡加竜骨牡蛎湯の作用
精神不安定な人に対して活用される柴胡加竜骨牡蛎湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の11種類が配合されています。
・柴胡(さいこ)
・竜骨(りゅうこつ)
・牡蛎(ぼれい)
・黄芩(おうごん)
・大黄(だいおう)
・半夏(はんげ)
・人参(にんじん)
・茯苓(ぶくりょう)
・桂皮(けいひ)
・生姜(しょうきょう)
・大棗(たいそう)
柴胡(さいこ)や黄芩(おうごん)は、炎症を鎮める作用が知られています。また、竜骨(りゅうこつ)や牡蛎(ぼれい)、茯苓(ぶくりょう)には、気持ちを穏やかにさせる働きがあります。このような機能を有する生薬を組み合わせることで、精神症状を改善するのです。
薬の効果を調べる試験でも、血圧降下作用や動脈硬化を抑える作用、神経興奮を抑える作用、抗けいれん作用などが動物実験で確認されています。
なお、柴胡を主薬とした漢方製剤を柴胡剤といいます。柴胡剤の中で最も基本となる漢方薬は小柴胡湯(しょうさいことう)です。
小柴胡湯から甘草(かんぞう)という生薬を取り除き、竜骨(りゅうこつ)や牡蛎(ぼれい)など(他に、茯苓と桂皮)を加えたものが柴胡加竜骨牡蛎湯です。柴胡剤に竜骨と牡蛎が加わったので、柴胡加竜骨牡蛎湯と呼ばれます。
柴胡加竜骨牡蛎湯の使用方法
柴胡加竜骨牡蛎湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
慎重に投与すべき対象としては、「虚弱な体質の人」「軟便、下痢のある人」などがあります。これらの人に投与すると、症状の悪化を招く恐れがあるからです。
大黄(だいおう)に便を出させる作用があるため、「軟便、下痢のある人」は大黄が含まれていない柴胡加竜骨牡蛎湯を使用するといいです。ちなみに、ツムラが販売している柴胡加竜骨牡蛎湯には、大黄(だいおう)が含まれていません。
これら柴胡加竜骨牡蛎湯としては、
・高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病
・高血圧による頭痛、頭重、肩こり、めまい
・精神不安、動悸、不眠症、ヒステリー
・神経衰弱症、神経性心悸亢進症
・パニック障害、うつ病
・多汗症
・小児の夜泣き(小児夜啼症)
などの症状に有効です。神経の働きを鎮める作用から、自律神経の失調状態を改善させて多汗症に使用することがあります。同じように、神経を落ち着かせてパニック障害やうつ病に応用されることもあります。心が関与する疾患に柴胡加竜骨牡蛎湯が用いられるのです。
このような特徴により、「高血圧や動脈硬化に伴う症状」や「精神不安、不眠症、ヒステリーなどの精神症状」に対して活用される漢方薬が柴胡加竜骨牡蛎湯です。
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