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役に立つ薬の情報~専門薬学

乙字湯の効能:裂肛(切れ痔)、痔核(いぼ痔)

 

座ったときや排便時など、おしりに痛みがあったり出血を伴ったりする疾患として痔があります。痔は命に直結する病気ではないものの、生活の質を低下させてしまいます。そこで、痔を治療するために使用される漢方薬として乙字湯(おつじとう)が知られています。

 

乙字湯には、肛門周辺の炎症を和らげたり、血流を改善させたりする働きがあります。これにより、痔の症状を抑えようとします。

 

 乙字湯(おつじとう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。乙字湯であれば、次のような人が有効です。

 

 ・体力が中等度の人
 ・大便がかたい
 ・便秘がち
 ・キレ痔、イボ痔(病状がそれほど激しくない)

 

このように、体力が中程度で便秘傾向の人に対して乙字湯は有効です。または、実証(体力が充実している人)にも用いられます。そのため、体力の少ない虚弱体質の人には向かない漢方薬です。

 

乙字湯は江戸時代に生きた日本の医者である「原 南陽(はら なんよう)」によって創出されました。彼は自製の漢方処方に対して「甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)……」と十干(じゅっかん)の文字を当てはめました。つまり、10通りの漢方処方がありました。この中で二番目の処方であったため、乙字湯と呼ばれます。

 

 乙字湯の作用
痔の症状を改善させる乙字湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の6種類が配合されています。

 

 ・当帰(とうき)
 ・柴胡(さいこ)
 ・黄芩(おうごん)
 ・甘草(かんぞう)
 ・升麻(しょうま)
 ・大黄(だいおう)

 

これらを組み合わせることで、肛門に生じている炎症を取り除いていきます。生薬にはそれぞれ役割があり、当帰や柴胡、黄芩、甘草には炎症を鎮める働きがあります。

 

また、升麻は肛門部の潰瘍を抑えることで痔核などに作用し、大黄は便通を改善させる働きが知られています。痔の疾患に対して、乙字湯は広く使用されます。

 

 乙字湯の使用方法
乙字湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。

 

慎重に投与すべき対象としては、「下痢、軟便のある人」「著しく胃腸の虚弱な人」「食欲不振、悪心、嘔吐のある人」「著しく体力の衰えている人」などがいます。乙字湯の使用により、体質が合わない場合は症状の悪化を招く恐れがあるからです。

 

これら乙字湯としては、

 

 ・裂肛(切れ痔)
 ・痔核(いぼ痔)

 

などの痔疾患に有効です。痔は大きく3つの種類に分けられ、肛門部が切れることで激しい痛みを伴う「裂肛(切れ痔)」、直腸や肛門がうっ血してイボのようになった「痔核(いぼ痔)」、化膿によっておしりにトンネルのような穴ができる「痔瘻(あな痔)」があります。

 

この中でも、乙字湯は裂肛(切れ痔)や痔核(いぼ痔)などへ使用されるのです。このような特徴により、痔疾患に対して用いられる漢方薬が乙字湯です。

 

 

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