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役に立つ薬の情報~専門薬学

桂枝加芍薬湯の効能:腹痛、便通異常(下痢、便秘)、しぶり腹

 

排便異常では、下痢や便秘などが起こるようになります。このときはお腹が張って腹部膨満感を訴え、同時に腹痛を有することがあります。そこで、このような状態を改善する漢方薬として桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)が知られています。

 

桂枝加芍薬湯には、体を温めることで筋肉の緊張を取り去り、痛みを和らげる作用があります。これにより、腹痛などの症状を緩和します。

 

 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。桂枝加芍薬湯であれば、次のような人が有効です。

 

 ・腹部膨満感がある
 ・比較的体力が低下している

 

お腹に張りがあり、腹痛を有していたり便通異常(下痢や便秘)があったりする人に桂枝加芍薬湯が使用されます。見た目にも体力のない人が適応であり、特に腹直筋の緊張がある場合に活用されます。

 

なお、漢方の古典である「傷寒論(しょうかんろん)」に桂枝加芍薬湯が記載されています。傷寒論は漢方の原点ともいえる古典です。

 

 桂枝加芍薬湯の作用
腹痛や便通異常を改善させる桂枝加芍薬湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の5種類が配合されています。

 

 ・桂皮(けいひ)
 ・芍薬(しゃくやく)
 ・生姜(しょうきょう)
 ・大棗(たいそう)
 ・甘草(かんぞう)

 

生薬にはそれぞれ異なる作用があり、桂皮には発汗・発散効果があります。また、芍薬には痛みを和らげる働きがあります。生姜は体を温め、甘草は炎症や痛みを鎮めます。このような働きをする物質をいくつか混合させて服用するのです。

 

まったく同じ構成の漢方処方として、桂枝湯(けいしとう)が知られています。桂枝湯に比べて、芍薬を増量したものが桂枝加芍薬湯です。芍薬を加えたものであるため、桂枝湯に「加芍薬」を追加して桂枝加芍薬湯と呼ばれます。

 

 桂枝加芍薬湯の使用方法
桂枝加芍薬湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。

 

これら桂枝加芍薬湯としては、

 

 ・しぶり腹
 ・腹痛
 ・便通異常(下痢、便秘)

 

などの症状に有効です。しぶり腹とは、残便感があって「腹痛を伴いつつ便意を催すもの」を指します。下痢であっても便秘であっても、便通異常の改善であれば桂枝加芍薬湯が有効です。

 

薬の効果を調べる試験では、桂枝加芍薬湯の投与によって止瀉作用(下痢を改善する作用)が確認されています。また、腸管輸送や腸管平滑筋(腸の筋肉)への働きも示されています。

 

このような特徴により、お腹が張っていて体力の弱っている方に投与され、腹痛や下痢・便秘などの症状を緩和する漢方薬が桂枝加芍薬湯です。

 

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