漢方薬と副作用
漢方薬といえば「副作用がない」と思っている人がいます。しかし、実際にはそうではなく漢方薬であっても副作用が存在します。
ただし、西洋薬に比べれば漢方薬は副作用が少ないです。漢方薬による副作用の多くは「体質に合っていない漢方薬の服用」によるものです。
漢方薬は患者さんの体質を判断した上で投与されます。そのため、当然ながら患者さんの体質と漢方薬が合っていなければ、副作用が発生する確率も高くなります。
例えば、漢方薬による注意すべき副作用として以下のようなものがあります。
むくみや胃腸障害は理解できると思いますが「間質性肺炎」、「偽アルドステロン症」、「ミオパシー(低カリウム血症)」は一般的でない言葉であるため以下に説明します。
・間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
肺は呼吸をするために重要な器官です。肺は空気を取り入れるためにスポンジのようになっており、息を吸うと肺が膨らみ、息を吐き出すと肺が縮むようになっています。
肺には酸素と二酸化炭素を交換するための肺胞が存在します。この肺胞と細かい血管が絡み合うことによって酸素や二酸化炭素などのガス交換が可能となります。この時、これら肺胞や細かい血管を取り囲んでいる組織として間質があります。
そして、この間質に炎症が起こっている状態が間質性肺炎となります。
前述の通り、肺はスポンジ状になっています。しかし、間質性肺炎によって肺に炎症が起こると肺が硬く縮んでいきます。これを、「肺の繊維化」と表現されます。
これによって、膨らんだり縮んだりする肺の運動が困難になります。その結果、間質性肺炎の症状が進行すると呼吸困難や呼吸不全となって死に至ります。なお、間質性肺炎は肺の繊維化が進むことから肺繊維症とも呼ばれています。
間質性肺炎は死亡率が高い疾患です。
・偽アルドステロン症
生体内のホルモンとしてアルドステロンと呼ばれる物質があり、この物質は血圧上昇や血液中のナトリウム濃度の上昇に関与しています。ナトリウムは高血圧と関係しており、ナトリウムを体内に溜める作用をするアルドステロンは血圧上昇に関わっています。
また、アルドステロンはナトリウムを体内に留める作用とは逆に、カリウムに対してはどんどん体外へ排泄する働きがあります。これによって、低カリウム血症に陥ります。
このように、体内に存在するアルドステロンと呼ばれる物質の量が多くなってしまう病気をアルドステロン症と呼びます。
ただし、中にはこのアルドステロンの分泌量が多くなっていないにも関わらず、アルドステロン症のような症状に陥ってしまうことがあります。このとき、偽りのアルドステロン症として偽アルドステロン症と呼ばれます。
つまり、偽アルドステロン症ではアルドステロンに関係なく「体内のナトリウム濃度の上昇」や「カリウム濃度の減少」が起きています。
この偽アルドステロン症の原因ですが、グリチルリチンと呼ばれる成分によるものであるとされています。このグリチルリチンは甘草(かんぞう)という生薬に多く含まれています。甘草は葛根湯や芍薬甘草湯など多くの漢方薬に使用されています。
甘草が含まれている漢方薬を複数服用した場合、グリチルリチンが蓄積して偽アルドステロン症を引き起こしてしまう場合もあります。
・ミオパシー(低カリウム血症)
ミオパシーとは、手足のけいれんや脱力感など「筋肉の萎縮によって力が入らない症状」を有する病気のことです。この原因としては、低カリウム血症があります。つまり、血液中のカリウム濃度が低くなることによって、筋肉に力が入らないミオパシーの症状を表すようになります。
前述の通り、偽アルドステロン症では血液中のカリウム濃度が減っていきます。その結果として、低カリウム血症が引き起こされます。そのため、偽アルドステロン症によってミオパシーなどの重大な障害を引き起こす可能性があるのです。
・生薬と副作用
漢方薬はいくつもの生薬を一定の割合で混ぜ合わせたものであるため、副作用が表れるとしてもそれは生薬に含まれる成分が原因であると考えられます。
生薬によっては気を付けるべき副作用をもつものもあります。例として、以下に気を付けるべき生薬と副作用、症状を記します。
生薬 |
副作用 |
症状 |
甘草(かんぞう) |
偽アルドステロン症、 低カリウム血症 |
むくみ、血圧上昇、 筋肉のけいれん |
麻黄(まおう) |
動悸、頻脈 |
胸のドキドキ、胸痛 |
附子(ぶし) |
心悸亢進、悪心 |
のぼせ、舌のしびれ |
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