役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

代表的な漢方薬

 

病気の治療としては西洋薬が主軸となります。しかし、中には漢方薬が治療の第一選択薬として使用されることもあります。

 

あるアンケートでは治療の第一選択薬に漢方薬を使用する疾患として以下のようなものが挙がっています。

 

疾患

第一選択とする割合

こむら返り

43.2%

不定愁訴・更年期障害・自律神経失調症

32.4%

急性上気道炎(かぜなど)

23.6%

便秘

21.1%

 

こむら返りをより分かりやすい言葉に直すと「ふくらはぎの痙攣」となります。つまり、一般的に「足がつる」と呼ばれる症状です。このような症状であると、約半数で漢方薬をまず初めに使用することが分かります。

 

このように、疾患によっては漢方薬が第一選択薬として使用される事もあります。

 

  かぜの漢方薬
かぜは難しい言葉で急性上気道炎と呼ばれます。このかぜに使用する漢方薬として葛根湯や小青竜湯、麦門冬湯、補中益気湯など多くの種類が存在します。

 

このとき、同じかぜでも適応となる症状としては以下のようなものがあります。

 

疾患名

商品名

適応となる症状

かぜ

(急性上気道炎)

葛根湯
(かっこんとう)

発熱、発汗なし、頭痛、悪寒

小青竜湯
(しょうせいりゅうとう)

くしゃみ、さらさらの鼻水

麦門冬湯
(ばくもんどうとう)

痰の切れにくい咳

補中益気湯
(ほちゅうえっきとう)

全身倦怠感、食欲不振

インフルエンザ

麻黄湯
(まおうとう)

インフルエンザの初期

 

漢方薬の使用を考える場合、インフルエンザに対しても有効です。麻黄湯はインフルエンザの初期の体力旺盛な人に対して使用されます。つまり、虚実で考えれば実証に大きく傾いている人に対して有効な漢方薬です。

 

このように、漢方薬はただのかぜだけではなくインフルエンザに対しても使用されます。

 

 消化器領域の漢方薬
胃や腸は消化器として位置づけられています。このような消化器領域の疾患に対しても漢方薬が使用されます。

 

医薬品を使用する上で重要となる指標としてEBM(Evidence-Based Medicine)があります。つまり、経験則ではなくて医学的な根拠に基づいた医療のことです。漢方薬による治療はこれまでの経験則であることが多いため、科学的根拠が必要な領域でもあります。

 

これら消化器領域の漢方薬として頻繁に使用されるものに、大建中湯や六君子湯があります。その中でも大建中湯は科学的な根拠(エビデンス)が豊富な漢方薬です。これら消化器領域で使用される漢方薬の特徴としては以下のようなものがあります。

 

疾患名

商品名

適応となる症状

消化器科領域

大建中湯
(だいけんちゅうとう)

イレウス(腸閉塞)、
過敏性腸症候群

六君子湯
(りっくんしとう)

食欲不振、
胃食道逆流症

 

大建中湯で用いられる主な疾患・症状としてイレウス(腸閉塞)過敏性腸症候群があります。この二つの疾患は以下のような特徴があります。

 

 ・イレウス(腸閉塞)
イレウス(腸閉塞)はその名の通り、腸が閉塞している状態を指します。私達が食事として食物を摂ると食道や胃、小腸などを介して最終的には排泄されます。

 

このとき、イレウス(腸閉塞)では腸が閉塞してしまって食物が肛門側へ移動できなくなっています。この結果、腸の内容物が溜まって腸液やガスが充満してしまいます。

 

腸の内容物が腸自身を内側から圧迫するので、血液の巡りが悪くなってしまいます。症状が進行してさらに圧力が加わるようになると、腸の細胞が死んでしまう壊死や腸に穴が開く穿孔を引き起こしてしまいます。

 

 ・過敏性腸症候群
過敏性腸症候群を簡単に言ってしまえば便通異常(下痢や便秘)の病気となります。大腸に炎症が起こると便の状態に異常が表れます。例えば、大腸に炎症が起こっている潰瘍性大腸炎では、激しい下痢と血便が確認されるようになります。

 

しかし、これら腸に異常が認められなくても下痢や便秘が繰り返されることもあります。このような状態が過敏性腸症候群です。

 

過敏性腸症候群は主にストレスを感じることによって下痢や便秘、腹痛を繰り返します。このように、ストレスなどによって腸が過敏状態になっている疾患が過敏性腸症候群です。

 

 婦人科領域の漢方薬
漢方薬は性差を含めたホルモンバランスを整えるため、女性に適している薬です。月経不順や更年期障害などは検査値で表すことが難しく、体質に作用することで症状を改善する漢方薬が得意とする分野となります。

 

このような婦人科領域で使用される主な漢方薬としては以下のようなものがあります。

 

疾患名

商品名

適応となる症状

婦人科領域

(更年期障害など)

当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん)

貧血、めまい、むくみ

加味逍遙散
(かみしょうようさん)

不眠、イライラ、
精神神経症状

桂枝茯苓丸
(けいしぶくりょうがん)

のぼせ、下腹部圧痛

 

患者さんの見た目によって漢方薬を使い分ける方法に「虚実」があります。婦人科領域の薬も同様に体質によって使い分けられます。

 

例えば、当帰芍薬散や加味逍遙散は体力が比較的低下している虚証な人に有効であり、桂枝茯苓丸は体力中等度の人に対して使用されます。

 

 泌尿器科領域の漢方薬
尿に関する領域を泌尿器系と言いますが、この泌尿器系に関する疾患としては「トイレが近くなる頻尿」や「尿の通り道が細くなることによって尿が出にくくなる前立腺肥大」などがあります。

 

これらの漢方薬は頻尿や足腰など「主に下半身の疾患に対して使用する」と考えれば分かりやすいです。このような泌尿器科領域で使用される主な漢方薬としては以下のようなものがあります。

 

疾患名

商品名

適応となる症状

泌尿器科領域

牛車腎気丸
(ごしゃじんきがん)

貧血、めまい、むくみ

八味地黄丸
(はちみじおうがん)

不眠、イライラ、
精神神経症状

 

 痙攣(けいれん)に使用する漢方薬
痙攣の中でも「ふくらはぎの痙攣」に使用される漢方薬として芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)があります。

ふくらはぎの痙攣は一般的な言葉で「足がつる」と表現されます。そして、この足がつることを専門的な言葉でこむらがえりと表現します。

 

芍薬甘草湯は筋肉の緊張を和らげることによって痙攣を抑えます。特に「足がつる」などの急激な痙攣を和らげることができます。

 

ただし、足だけでなく手の筋肉や消化管(胃や腸)、尿路など内臓の筋肉に対する痙攣も抑えることができます。このように、筋肉の緊張をゆるめることで痛みを抑制します。

 

疾患名

商品名

適応となる症状

痙攣

芍薬甘草湯
(しゃくやくかんぞうとう)

急激に起こる筋肉の痙攣
(こむらがえり など)

 

 認知症に使用する漢方薬
漢方薬が認知症の治療に使用される事もあります。ただし、この時の治療としては認知症の周辺症状(BPSD)の改善になります。

 

認知症には物忘れなど絶対に避けることのできない症状があります。これを中核症状と呼びます。それに対して、幻覚や抑うつ、徘徊行動など人によって出たり出なかったりする症状があります。この症状を周辺症状(BPSD)と呼びます。

 

   中核症状と周辺症状(BPSD)

 

西洋薬は物忘れなど中核症状の進行まで抑えることができます。漢方薬では中核症状までを抑制できませんが、抑うつ状態や攻撃的行動などの周辺症状を改善させることができます。

 

このように、認知症の周辺症状に対して使用される漢方薬としては以下のようなものがあります。

 

疾患名

商品名

適応となる症状

認知症

抑肝散
(よくかんさん)

認知症の周辺症状

 

 主な周辺症状
・抑うつ状態   ・依存   ・不安   ・攻撃的行動
・幻覚   ・妄想   ・睡眠障害   ・徘徊 など

 

スポンサードリンク



スポンサードリンク