漢方薬の考え方:虚実、気血水
検査結果や数値を重視する西洋薬に対し、漢方薬では患者さんの体質を重視します。人によってはやせ細っていて抵抗力の弱そうな人がいれば、がっちりしていて抵抗力の強そうな人もいます。
他にも、いつも暖かそうにしていて暖に支配されている人がいれば、冷え性などによって寒に支配されている人もいます。これが体質の違いです。
このように患者さんごとの体質の違いを見極めて漢方薬が使用されます。そして、このような体質の違いを証(しょう)と呼びます。
虚実(きょじつ)
証を考える上で分かりやすいものとして虚実があります。この虚実を簡単に考えれば「患者さんの見た目」になります。
ぱっと見た感じでいいので「やせ細っていて抵抗力のなさそうな人」は虚証の人となります。それに対して、「体格ががっちりして抵抗力のありそう人」では実証の人となります。漢方薬には虚証向きの薬があれば、実証の人に合う漢方薬もあります。
ただし、実際には患者さんを見ても、その患者さんが虚証か実証かを見極めることが難しいこともあります。その場合、効果がマイルドで副作用の心配も少ない虚証向けの漢方薬を使用します。
虚証 |
実証 |
疲れやすい |
疲れにくい |
食欲が少ない |
食欲がある |
胃腸の状態がよくない |
消化吸収の能力が高い |
下痢をしやすい |
便秘になりやすい |
このように、「見た目などによっても患者さんの体質に合わせて漢方薬を使い分ける」という事が理解できれば問題ありません。
気血水(きけつすい)
漢方薬の使用を考える上で重要となる事柄として、患者さん自身の体質があります。この体質の中でも、最も頻繁に使われる概念として気血水があります。
「気」とは体内を流れる目に見えない生命エネルギーの事を指します。元“気”であったり、やる“気”であったりする意味で「気」が使われます。
また、「血」とは体内を流れる血液のことです。血液は体を巡ることで酸素や栄養を与える潤滑油としての働きがあります。
そして三つ目に「水」があります。簡単に考えれば水分のことであり、リンパ液や消化液、唾液など血液以外の体液がこれに該当します。
漢方の概念では、これら気・血・水がバランスよく循環している状態で健康となります。それに対して「気・血・水のうちどれか一つでも不足していたり流れが悪かったりすると体の不調が表れる」と考えます。
例えば、「気」の流れが不足している状態を気虚(ききょ)と呼びます。この状態では「なんとなく気がだるい」、「やる気が起こらない」などの症状が表れます。
そこで、気が不足しているので漢方によって気を補う必要があります。このような気を補う生薬としては人参(にんじん)や黄蓍(おうぎ)と呼ばれるものがあります。これらの生薬を服用することによって、不足している気を補うことができます。
他にも、「気」の流れが悪く滞っている状態もあります。このような状態を気滞(きたい)と呼びます。気の流れが悪くなると「イライラ」や「落ち込み」などの症状が表れます。
そこで、これらの症状を改善するためには気の流れをスムーズにする必要があります。この働きをする生薬として厚朴(こうぼく)や柴胡(さいこ)があります。
このように、気・血・水の状態がどうなっているかによって使用する漢方薬を考えます。
今回の例として出したように、「気」が不足しているのであれば漢方薬によって「気」を補う必要があります。その逆に、「気」が多すぎていることによって流れが悪く滞っているのであれば、「気」を減らして正常な状態にする生薬を使用します。
このようにして、漢方薬では気血水の概念を利用します。
・「気」の状態
状態 |
名称 |
使用される生薬 |
「気」が不足している |
気虚(ききょ) |
「気」を補う: |
「気」が過剰で滞っている |
気滞(きたい) |
「気」を減らす: |
気虚:なんとなく気がだるい、やる気が起こらない など
気滞:イライラ、落ち込み など
・「血」の状態
状態 |
名称 |
使用される生薬 |
「血」が不足している |
血虚(けっきょ) |
「血」を補う: |
「血」が過剰で滞っている |
お血(おけつ) |
「血」を減らす: |
血虚:冷え性、不眠、集中力低下、立ちくらみ など
お血:イライラ、不安、月経痛 など
・「水」の状態
状態 |
名称 |
使用される生薬 |
「水」が不足している |
津虚(しんきょ) |
「水」を補う: |
「水」が過剰で滞っている |
水毒(すいどく) |
「水」を減らす: |
津虚:睡眠不足、胃腸虚弱、皮膚に潤いがない など
水毒:むくみ、めまい、吐気 など
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