大黄甘草湯の効能:便秘症、頭重、のぼせ、湿疹・皮膚炎、痔
なかなか排便が起こらず、便が固くなってしまう病気として便秘が知られています。また、便秘によって頭重やのぼせ、腹部膨満感、腸内の異常醗酵、湿疹・皮膚炎、痔などを生じることがあります。そこで、これらの症状を緩和する漢方薬として大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)が知られています。
大黄甘草湯には、腸の運動を活発にさせて排便を促す作用があります。これにより、便秘を解消させます。便秘の中でも、慢性的な腸の機能低下によって起こる常習性便秘に大黄甘草湯が有効です。
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。
ただ、大黄甘草湯は例外的にあまり体質を重視しません。どちらかというと体のガッシリとした人(実証の人)に向く薬ですが、あらゆる体力の方に対して利用されます。
代表的な漢方薬の一つであり、便秘に対して頻繁に活用されます。なお、漢方の古典である「金匱要略(きんきようりゃく)」に大黄甘草湯が記されてあります。金匱要略は漢方の原点ともいえる古典です。
大黄甘草湯の作用
便秘症を治療する大黄甘草湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の2種類が配合されています。
・大黄(だいおう)
・甘草(かんぞう)
生薬にはそれぞれ作用があり、大黄は大腸を刺激することで腸運動を活発にする働きがあります。さらに、大黄にはアントラキノンと呼ばれる有効成分が含まれており、これが下剤としての役割を果たしています。
また、甘草には炎症や痛みを鎮める効果があります。便秘では腹痛や排便時の痛みを生じることがあるため、これを和らげるのです。なお、大黄と甘草という2つの生薬から構成されたものが大黄甘草湯であり、この生薬名をそのまま処方名としています。
大黄甘草湯の使用方法
大黄甘草湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
慎重に投与すべき対象としては、「下痢、軟便のある人」「胃腸の虚弱な人」「体力の衰えている人」などがいます。漢方薬は体質や症状に合わない人に投与すると症状の悪化を招く恐れがあります。
これら大黄甘草湯としては、
・便秘症
・頭重
・のぼせ
・湿疹、皮膚炎、ふきでもの(にきび)
・食欲不振
・腹部膨満感
・腸内の異常醗酵
・痔
などの症状に有効です。便秘によって頭重やのぼせ、湿疹などを生じることがあるため、便秘症に伴って起こる諸症状の改善にも大黄甘草湯が活用されます。
大黄の作用は強力であるため、過剰摂取すると下痢になります。そのため、適度な量を見極めて服用しなければいけません。また、大黄には子宮収縮作用があるため、妊婦や妊娠の可能性がある人への投与は避けるべきです。流産や早産の危険性が高まるからです。
このような特徴により、投与対象の体力に関わらず使用することができ、便秘を緩和することで「便秘症によって起こるさまざまな症状」まで改善する漢方薬が大黄甘草湯です。
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