生薬入門
生薬とは?
天然由来の薬物を指す。様々な生薬を混ぜて処方したものが漢方薬である。
生薬は動物、植物の薬用部位を乾燥し加工したものであり、生薬を切断、粉砕したものも生薬である。
和名、科名
生薬にはそれぞれ和名、科名が存在する。たとえば、アヘンというのは和名でアヘンはケシ科に属している。
生薬名と原料となる起源植物は名前が違う場合がある。アヘンの起源植物はケシである。つまり、ケシからアヘンという生薬がとれる。
和名、科名のほかにもラテン名などいろいろある。
保健機能食品
これには、栄養機能食品と特定保健食品と区別できる。
栄養機能食品には規格基準型の規制があり成分の含有と機能を表示できる。特定保健食品は厚生労働省の許可が必要で、食品や関与成分が科学的に明らかにされていることと、適切な摂取量が設定できることが要求される。
ケモタキソノミー
薬用植物は様々な有機化合物を生合成している。
多種多様の有機化合物の生合成を可能にするために
1.酢酸マロン酸経路 2.シキミ酸経路 3.イソプレノイド経路 4.アミノ酸経路
の4つの経路と複合経路がある。
今は、こういうものがあると思うだけで良い。
植物は進化に伴って生体内の代謝や合成経路も変わっていくと考えられる。しかし、類似した植物は似た代謝過程をもつとも考えられている。
植物の合成する化合物の種類や類縁関係、有機化合物合成の進行程度から論じることをケモタキソノミーという。
植物成分をもとに医薬品を開発するとき、近縁植物をしらべることでどの成分が多く存在するかなどを予測できる。これにより、何も知らない場合と比べてはるかに医薬品開発の効率を上げることができる。
各経路から合成される成分
酢酸マロン酸経路 … 脂肪酸、芳香族化合物
シキミ酸経路 … フェニルプロパン誘導体、リグナン、リグニン、加水分解性タンニン
イソプレノイド経路 … テルペノイド、ステロイド、カロテノイド
アミノ酸経路 … アルカロイド
芳香族アミノ酸 → イソキノリンアルカロイド、インドールアルカロイド
脂肪族アミノ酸 → トロパンアルカロイド
バイオテクノロジー
動物細胞と違い植物細胞はたった1個の細胞から分裂さえできれば元通りの全植物体を形成する。
この能力を分化全能性という。つまり、植物は分裂する細胞を使用するとクローンを大量に作ることが可能である。
プロトプラスト
植物は細胞壁で守られており、細胞同士はペクチン質でつなぎとめられている。
ペクチン質をペクチナーゼで分解して細胞をばらばらにした後、細胞壁を分解するセルラーゼを使用する。すると、細胞壁のなくなった細胞であるプロトプラストを得ることができる。これを培養すると細胞壁を再生し全植物体になりクローンが作れる。
また、このとき化学処理や電気刺激などにより2個以上のプロトプラストを融合させることができる。これを、細胞融合という。
特定の遺伝子を導入することで遺伝子組換えにも利用でき、そのとき土壌細菌が使用される。
日本薬局方総則
1. 医薬品各条の生薬は動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物又は鉱物などであり、生薬総則及び生薬試験法を適用する生薬は次のとおりである。 (省略)
2. 生薬は通例、全形生薬、切断生薬又は粉末生薬に分けて取り扱う。
全形生薬は、その薬用とする部分などを乾燥し、又は簡単な加工をしたもので医薬品各条に規定する。
粉末生薬は、全形生薬を小片もしくは小塊に切断もしくは粉砕したもの、又は粗切、中切もしくは細切したものであり別に規定するもののほか、これを製するに用いた全形生薬の規定を準用する。
粉末生薬は、全形又は切断生薬を粗末、中末、細末又は微末としたものであり、通例、細末としたものについて医薬品各条に規定する。
3. 生薬は、別に規定するもののほか乾燥品を用いる。乾燥は、通例60℃以下で行う。
4. 生薬はカビ、昆虫又は他の動物による汚染物又は混在物及びその他の異物をできるだけ除いたものであり、清潔かつ衛生的に取り扱う。
5. 生薬の基原として「その他同属植物」、「その他同属動物」、「その他近縁植物」又は「その他近縁動物」などと記載するものは、通例、同様の成分薬効を有する生薬として用いられる原植物または原動物をいう。
6. 生薬の性状の項はその生薬の代表的な原植物又は原動物に基づく生薬について、通例、その判定基準となる特徴的な要素を記載したものである。ただし、その項の数値は、鏡検時のものを除き、およその基準をしめしたものである。
7.粉末生薬はこれを製するに用い全形生薬又は切断生薬中に含まれていない組織の破片、細胞、細胞内容物又はその他の異物を含まない。
8. 粉末生薬のうち別に規定するものについては賦型剤を加え、含量又は力価を調節することが゙できる。
9. 生薬は、別に規定するもののほか、湿気及び虫害などを避けて保存する。虫害を防ぐため、適当なくん蒸剤を加えて保存することができる。ただし、このくん蒸剤は常温で揮発しやすく、その生薬の投与量において無害でなければならない。また、その生薬の治療効果を障害し、又は試験に支障をきたすものであってはならない。
10. 生薬に用いる容器は、別に規定するもののほか、密閉容器とする。
今回は、「日本薬局方総則にこんなものがある」と思うくらいで良い。
精油含量
生薬の品質を試験するものの中に精油含量を試験するものがある。精油はまた後で説明する。
精油を含んでいるが精油定量法の対象となっていない生薬に生姜(ショウガ科)がある。
アリストロキア酸
細辛(ウマノスズクサ科)の地上部に含まれており、などウマノスズクサ科の生薬に広く分布している発ガン性があると言われる物質である。
本来、ウマノスズクサ科植物由来の生薬ではないがウマノスズクサ科植物由来の生薬が使用されていることがある生薬 → 防己(ボウイ)、木通、木香
生薬から新薬開発へ
生薬から化合物を単離し化学構造を明らかにし人工的に合成することで新薬を開発してきた。
しかし、新しく合成された薬が予期せぬ問題を引き起こたこともある。例えば、麻薬がある。婦人科領域で子宮収縮、止血剤として使用されるエルゴタミン、エルゴメトリン(両方ともバッカクキン科の麦角から精製される)をもとにLSD25が偶然に生み出された。
同じようにアヘン(ケシ科)のモルヒネ、麻黄(マオウ科)のエフェドリンから合成された麻薬もある。これらの生薬は麻薬及び向精神薬取締法により規制されている。
スポンサードリンク
カテゴリー
スポンサードリンク