猪苓湯の効能:排尿障害、膀胱炎、尿道炎、腎石症(結石)
腎臓など、泌尿器系の機能が衰えてくると排尿困難や頻尿などの症状が表れるようになります。また、尿量が少なくなったり、排尿時に痛みを伴ったりすることもあります。そこで、これら尿トラブルを改善するために投与される漢方薬として猪苓湯(ちょれいとう)があります。
猪苓湯には、尿路に作用することで熱や腫れを抑え、尿の流れをスムーズにする作用があります。そのため、排尿困難や頻尿、残尿感、排尿痛、血尿などに使用されます。炎症を鎮めるため、膀胱炎や尿道炎、腎臓炎、腎石症(結石)にも活用されます。
猪苓湯(ちょれいとう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。猪苓湯であれば、次のような人が有効です。
・排尿異常(排尿困難、頻用など)がある
・ときに口が渇く
・下腹部に熱がある
人によって虚弱体質(虚証)や体力旺盛(実証)など、体格が異なります。漢方薬では、このような体質を見極めて投与することが多いです。ただ、猪苓湯の場合は、投与対象の体力に関係なく使用できるという特徴があります。
いずれにしても、泌尿器系のトラブルに異常を生じる人に猪苓湯が適応されます。膀胱炎など、下腹部に熱をもっている場合は猪苓湯が有効です。
なお、漢方の古典である「傷寒論(しょうかんろん)」や「金匱要略(きんきようりゃく)」に猪苓湯が記載されています。2つはどちらも漢方の原点ともいえる古典です。
猪苓湯の作用
尿トラブルに対して使用される猪苓湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の4種類が配合されています。
・猪苓(ちょれい)
・沢瀉(たくしゃ)
・茯苓(ぶくりょう)
・阿膠(あきょう)
・滑石(かっせき)
猪苓(ちょれい)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)には、水分代謝を改善する作用があります。利尿作用(尿をたくさん出させる作用)により、泌尿器系に働きかけます。
また、阿膠(あきょう)には止血作用があり、これが血尿を改善します。さらに、滑石(かっせき)には、熱や炎症を鎮めて下腹部に生じている熱や腫れを取り除く働きがあります。これらの生薬が複合的に作用することで、症状を改善させます。
薬の作用を調べる試験でも、利尿作用や結石の形成抑制作用、腎炎の抑制作用などが動物実験で確認されています。なお、5つの生薬のうち、猪苓(ちょれい)を主薬としているので猪苓湯と呼ばれています。
猪苓湯の使用方法
猪苓湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
これら猪苓湯としては、
・排尿困難、頻尿、残尿感
・膀胱炎、尿道炎、腎臓炎、腎石症(結石)
・排尿痛、血尿
・腰以下の浮腫(むくみ)
などの症状に有効です。通常、腎疾患や尿路疾患に伴う上記のような症状に対して猪苓湯が使用されます。
このような特徴により、投与対象の体力に関わらず用いることができ、排尿困難や頻尿、血尿、排尿痛、残尿感だけでなく、膀胱炎、尿道炎、腎臓炎、腎石症(結石)にも活用される漢方薬が猪苓湯です。
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