PCR法の原理
ヒトゲノムの場合、約30億塩基対もの長さとなるDNAで構成されていると言われている。この中から自分のほしい塩基配列だけを取り出して、増幅させたいとする。このとき必要な操作がPCR法である。
PCR(Polymerase Chain Reaction)法ではDNAのある一部分だけを選択的に増幅させることができる。これには、DNAポリメラーゼによる酵素反応を利用する。なお、実際にPCRを行う場合、試薬を混ぜて機械にセットしてスイッチを押すだけであるため、誰にでも可能である。
DNAの増幅
①DNAを増幅させるため、まず最初にしないといけないのはDNAの二本鎖を一本鎖にすることである。DNAを入れた反応液を約94℃にし、熱変性させる。これにより、二本鎖DNAが一本鎖DNAに変性する。
②一本鎖DNAにDNAポリメラーゼを作用させるためには、予めプライマーをDNAに結合させる必要がある。このように、プライマーがDNAと結合することをアニーリングという。アニーリングは約55~60℃で行うが、プライマーによって温度が異なってくる。
③最後にDNAポリメラーゼを反応させ、DNAを伸長させる。耐熱性DNAポリメラーゼ(Taq polymerase)で行う場合、約72℃で行う。
④、①~③を繰り返してDNAを増幅させる。
・Tm(melting temperature)
プライマーの設計にはTm値の計算が不可欠である。Tm値とは二本鎖DNAの50%が一本鎖DNAに分かれるときの温度である。
そして、このTm値をもとにしてアニーリングするときの温度を決めるのである。
PCR産物の生成
PCR法では1サイクル目で2分子、2サイクル目で4分子、3サイクル目で8分子のDNA断片ができる。
このとき、3サイクル目で初めて目的の長さのPCR産物を生成することができる。後は、PCRの工程を続ければ続けるほど目的のPCR産物を得ることができる。
耐熱性DNAポリメラーゼ(Taq ポリメラーゼ)
耐熱性DNAポリメラーゼの発見により、PCR法はとても簡単になった。
多くの場合、タンパク質は熱に弱い。高温でタンパク質の変性が起こってしまうため、DNAを「二本鎖→一本鎖」にする過程(約94℃)でDNAポリメラーゼが失活してしまうのである。そのため、耐熱性DNAポリメラーゼが発見される前はサイクル毎にDNAポリメラーゼを補充しなければならなかった。
耐熱性DNAポリメラーゼ(Taq ポリメラーゼ)は約94℃の高温でも活性を失わないため、DNAポリメラーゼを一回入れるだけで済むようになった。
この耐熱性DNAポリメラーゼであるが、海底火山に生息する好熱菌から発見されたものである。「熱い場所に生息している微生物なら、高温条件下でも活性を失わないDNAポリメラーゼをもつはずである」と、どこかの偉い人が考えたのである。
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