油脂の変敗
油脂の変敗
油脂は光、熱、金属等の作用によって空気中の酸素と反応し、酸化される。油脂の酸化によって色調変化、不快臭の発生、有害物質の生成などが起こる。不飽和度が高い油脂ほど変敗を受けやすい。
油脂は光や熱などによって酸素と反応し、ペルオキシラジカル(フリーラジカル)を生じる。このペルオキシラジカルは反応性が高く、さらに反応してヒドロペルオキシドを与え、重合体や低級脂肪酸などを生成する。
なお、油脂の変敗は酸敗とも言われる。以下に油脂の変敗の様子を示す。
①
不飽和脂肪酸は光や熱によって脂肪酸ラジカルとなり、ペルオキシラジカルを与える。
なお、不飽和度の指標にヨウ素価がある。つまり、不飽和度が高い油脂ほどヨウ素価が高い。そのため、油脂の変敗が起こるとヨウ素価は低下していく。
②
ペルオキシラジカルからヒドロペルオキシドが生成する過程で不飽和脂肪酸が脂肪酸ラジカルへと変化する。脂肪酸ラジカルは酸素と反応し、ペルオキシラジカルを生成する。再生されたペルオキシラジカルは再びヒドロペルオキシドへと変化する。
このように、油脂の変敗には連鎖反応が起こっている。なお、「ペルオキシラジカル → ヒドロペルオキシド」の過程はビタミンEなどの抗酸化剤によって防ぐことができる。
③
ペルオキシラジカルからヒドロペルオキシドが生成するが、ヒドロペルオキシドのような過酸化物の量を示す指標として過酸化物価がある。
不飽和脂肪酸の酸化により、最初のうちは過酸化物価は上昇する。しかし、金属によって分解されるので時間が経つと過酸化物価の値は減少に転じる。
④
ヒドロペルオキシドは金属によって分解される。このときペルオキシラジカルが生成し、このペルオキシラジカルは再び不飽和脂肪酸と反応する。
なお、この反応は金属封鎖剤を使用することにより遅らせることができる。
⑤
ヒドロペルオキシドが分解されるとマロンジアルデヒドやカルボニル化合物を与える。チオバルビツール酸試験値はマロンジアルデヒド量を示しており、変敗が起こるにつれて値が上昇する。それに対し、カルボニル価はカルボニル化合物量を示している。カルボニル価も変敗が進むにつれて値が上昇する。
⑥
油脂は変敗すると最終的に重合体、エポキシド、低級脂肪酸などへと変化する。このとき、遊離脂肪酸の量を示す値として酸価がある。酸価の値は油脂の変敗が進むと上昇する。
ヨウ素価、過酸化物価、チオバルビツール酸試験、カルボニル価、酸価の値を時間とのグラフに表すと下のようになる。
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