クエン酸経路
代謝とは「糖、脂肪、アミノ酸などがどのように体内で変化するか」である。
キーワード:アセチルCoA
ATP合成の流れ
アセチルCoAは主にグルコース、脂肪酸、グリセロール、アミノ酸から変換される。
脂肪酸は食物中の脂質または糖からのアセチルCoAによって合成される。つまり、脂肪酸からアセチルCoAが生成できる。
ATP合成は次の過程で合成される。
1.糖、脂肪酸、アミノ酸からアセチルCoAを生成。
2.アセチルCoAがクエン酸経路に入る。
3.アセチルCoAはクエン酸経路で酸化されH2O、CO2になり、NADH、FADH2、GTP(ATP)を生成する。
4.NADH、FADH2、GTP(ATP)は電子伝達系に入りATPを合成する。
糖or脂肪酸orグリセロールorアミノ酸 → アセチルCoA → クエン酸回路(TCA回路) → NADH、FADH2、GTP(ATP)→ 電子伝達系→ ATP合成 となり、この流れでATPが合成される。
生体内のエネルギー配給
|
乾燥状態 |
湿潤状態 |
脂肪 |
9kcal/g |
9kcal/g |
タンパク質 |
4kcal/g |
1~1.5kcal/g |
糖 |
4kcal/g |
1~1.5kcal/g |
これはそれぞれ1gの脂肪、タンパク質、糖を燃焼したときに発生するエネルギーである。しかし、乾燥状態と湿潤状態では発生するエネルギーが異なる。上の表を見て分かるように脂肪が一番発生エネルギーが高い。
また、私たちの体は湿潤状態である。そして脂肪は水をはじく。これらの理由で脂肪を蓄えるのが一番エネルギー配給の点で効率がよい。
ATP合成
エネルギー産出の多くはミトコンドリアである。また、ミトコンドリアはグリセロリン脂質の二重膜から構成されている。
電子伝達系は「内膜とマトリックスの行き来」によってATPを合成する。内膜のクリステはダムのようなものである(電気化学的ポテンシャル)。このエネルギー差によりATPが合成される。
ATP(エネルギー)を効率よく産出するためには単純に面積を広くすればよい。そのため、ひだ状のクリステを形成する。このクリステと同じような構造は腸で見ることができる。
またアセチルCoAはミトコンドリア内に生成され、外へ遊離しない仕組みになっている。
各経路
ミトコンドリア内… クエン酸回路、脂肪酸の分解、電子伝達系
細胞質… 解糖系、脂肪酸の合成
両方にまたがる経路 … 糖新生、尿素回路
クエン酸経路(TCAサイクル)
この経路は触媒作用をするサイクルである。出発物質はアセチルCoAとオキサロ酢酸であり、これらの物質がクエン酸になる反応から開始される。
このサイクルの速度調節はクエン酸シンターゼとイソクエン酸デヒドロゲナーゼによって行われる。クエン酸シンターゼはクエン酸、ATP、長鎖脂肪酸によって、イソクエン酸デヒドロゲナーゼはADPによってアロステリック調節を受けている。
オキサロコハク酸→α-ケトグルタル酸→スクシニルCoAと変化するときに酸化的脱炭素反応により2つのCO2が離れる。このとき、脱離する炭素原子は両方ともアセチルCoA由来でなく、オキサロ酢酸由来の炭素原子である。これにより新しい原子に変わる。
α-ケトグルタル酸+NAD++CoA → スクシニル-CoA+CO2+NADH+H+
この反応はα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体によって触媒される。この反応はピルビン酸デヒドロゲナーゼと同じ補因子によって起こる。つまり、TDP(チアミン二リン酸)、リポ酸、NAD+、FAD、CoAが存在するときにスクシニルCoAを形成する。
ATPの合成には電子伝達系と基質レベルのリン酸化によって作られる。基質レベルのリン酸化とは基質そのものの高いエネルギーを使用する。スクシニルCoAは基質のエネルギーが高いためATPを作りエネルギーを下げる。
クエン酸回路ではNADHの生成は3ヶ所、FADH2の生成は1ヶ所、基質レベルのリン酸化は1ヶ所で起こる。NADHからは3分子のATPを、FADH2からは2分子のATPを合成できる。つまり、クエン酸回路が1回転すると12分子のATPが生成される。
クエン酸回路の両義的性質
・エネルギーの生産
一つは言うまでもなくATP、NADH、FADH2などを生成してエネルギーを得ることである。
・生体成分の原料の提供
例えば、グルタミン酸やアスパラギン酸が必要になるとする。グルタミン酸はα-ケトグルタル酸からアミノ基転移反応によって生成される。アスパラギン酸はオキサロ酢酸からアミノ基転移反応によって生成される。
つまり、クエン酸経路から引き抜くことにより生体成分の原料を提供している。
電子伝達系、酸化的リン酸化
クエン酸経路によって産生されたNADHやFADH2のもつ電子(水素)は電子伝達系によって酸化される。このとき、酸化的リン酸化が起こる。酸化的リン酸化とは、ADPをリン酸化してATPを産生させることである。
1分子のグルコースが分解された時のATPの総生産量
・解糖系
ATP 2 NADH 2個細胞質に残る
・ミトコンドリア内
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体
NADH 2
クエン酸回路
(ATP 1 NADH 3 FADH2 1)×2
1分子のNADHからは3分子のATPを、1分子のFADH2からは2分子のATPを合成できるので、これを計算すると38ATPが生産されることになる。ただし、細胞質に残った2NADHを使って膜内のNAD をNADHに変えるときに、グリセロリン酸シャトルを使用するかリンゴ酸シャトルを使用するかで総ATP量が違ってくる。
グリセロリン酸シャトルでは1NADHから2ATPを生成し、リンゴ酸シャトルは1NADHから3ATPを生成する。よって、グリセロリン酸シャトルを使用するとATPの総生産量は36になる。
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