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役に立つ薬の情報~専門薬学

薬物代謝(抱合反応)

 

 抱合反応:第二相反応
抱合反応とはシトクロムP450などの第一相反応によって生成した官能基に、硫酸やアミノ酸などの水溶性物質が結合する反応である。これによって水溶性が上昇する。

 

抱合反応には次のようなものがある。

 

 ・グルクロン酸抱合
 ・硫酸抱合
 ・グルタチオン抱合
 ・アセチル抱合(アセチル化)
 ・アミノ酸抱合(アミド化)

 

 グルクロン酸抱合
グルクロン酸抱合は小胞体(ミクロゾーム)で行われる。補酵素をUDP-GA(UDP-α-グルクロン酸)とし、グルクロン酸転移酵素(UGT)によってグルクロン酸が転移される。

 

これによってグルクロン酸抱合体が生成する。「-OH,-SH,-NH2,-COOH」などの官能基にグルクロン酸が転移される。なお、UDP-グルクロン酸自体はα結合を有しているが、抱合体はβ結合となっている。

 

・腸肝循環
モルヒネは体内での半減期が長い。これには腸肝循環が関わっている。

 

グルクロン酸抱合などを受けた薬物は胆汁によって腸管に排泄される。しかし、腸内細菌によって加水分解を受けてグルクロン酸抱合がはずれるのである。

 

そして、モルヒネは再び腸管から吸収されて全身循環に入る。これにより、なかなかモルヒネは代謝されず長時間の効果が表れるのである。

 

 腸肝循環

 

・灰白児症候群
成人では適切にグルクロン酸抱合が行われる。しかし、生後1~2週間の小児ではグルクロン酸抱合能がきわめて低い。

 

クロラムフェニコール(抗生物質)は主にグルクロン酸抱合によって代謝されるため、小児ではクロラムフェニコールが適切に代謝されないのである。そのため、クロラムフェニコールの血中濃度が高く維持されてしまう。

 

これによって循環器・呼吸器不全に陥り、チアノーゼを起こす。その結果として全体が灰白色となる。これが、灰白児症候群である。

 

 硫酸抱合
スルホトランスフェラーゼによって、PAPS(活性硫酸)を補酵素として抱合を行う。

 

 R-OH → R-OSO3-    R-NH2 → R-NHSO3-

 

 アセチル抱合

 

アセチル抱合における主な基質はアミノ基やヒドロキシ基となる。アセチル抱合には遺伝多型があり、その例の一つとしてN-アセチル転移酵素(NAT)におけるイソニアジドの代謝がある。

 

 

・イソニアジド(抗結核薬)の副作用発現機序
イソニアジドの副作用発現には個体差があり、人種によってどの副作用が出やすいかが異なっている。イソニアジドの代謝にはNAT(N-アセチル転移酵素)が重要となるが、NAT-2の発現にはには個体差があり遺伝子多型を示す。

 

 イソニアジド(抗結核薬)の副作用発現機序

 

NAT-2の活性が正常な場合、イソニアジドは速やかに代謝される。しかし、その代謝物による肝障害が起こるのである。これは日本人に起こりやすい。

 

それに対してNAT-2の活性が低い場合、イソニアジド自体による多発性神経炎の副作用が起こる。これは、欧米白人に起こりやすい。

 

 グルタチオン抱合(メルカプツール酸抱合)
グルタチオンはグリシン、システイン、グルタミン酸からなるトリペプチドである。体内の有機物質がグルタチオンと結合してグルタチオン抱合を受ける。

 

グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル抱合は「-OH、-NH2、-COOH」などの基質と反応する抱合反応である。それに対し、グルタチオンはエポキシド・ハロゲンなどの抱合に関与する。

 

 抱合反応

 

グルタチオン抱合では、まずグルタチオンのシステインが基質と反応する。反応後のグルタチオン抱合体からはグルタミン酸とグリシンが抜け、システイン抱合体となる。

 

 グルタチオン抱合

 

システイン抱合体はアセチル化を受けてメルカプツール酸となる。このメルカプツール酸が尿中に排泄される。

 

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