アミノ酸の特殊生成物、ポルフィリン
アミノ酸の特殊生成物
アミノ酸はそれぞれ下のような特殊生成物に変換することができる。
・グリシン
各種抱合体、クレアチン、プリン、ヘム
・βアラニン
CoA、カルノシン、パントテン酸
・メチオニン
ポリアミン、尿中硫酸、クレアチン、S-アデノシルメチオニン(SAM)
・システイン
CoA、タウリン
・ヒスチジン
ヒスタミン、カルノシン、エルゴチオネイン
・アルギニン
NO(一酸化窒素)、クレアチン、ポリアミン
・オルニチン
ポリアミン
・トリプトファン
セロトニン、メラトニン、ニコチン酸、インドール誘導体
・チロシン
ドーパ、ドーパミン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、エピネフリン(アドレナリン)
メラニン、メラトニン
・グルタミン酸
GABA(γ-アミノ酸)
・アルパラギン酸
ピリミジン
特殊生成物の概要
・抱合体(グリシン)
抱合体はある物質を無毒化、可溶化して排出するためのものでありグルクロン酸、タウリン、硫酸、グルタチオンなどは抱合体として排出される。
・ヒスタミン(ヒスチジン)
芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼが触媒することで、ヒスチジンが脱炭素してヒスタミンを生成する。
・NO(アルギニン)
アルギニンがNOシンターゼによって触媒されることでNO(一酸化窒素)に変化する。NOには周囲の平滑筋の弛緩、神経伝達物質、血管拡張などの作用がある。(血管が拡張すると血圧が下がる)
・メラニン(チロシン)
チロシンからメラニンを生成する一番初めの反応は、チロシナーゼによって触媒されてドーパに変化することから始まる。(チロシナーゼは銅依存性である)
もし、チロシナーゼに異常があると白子症を引き起こす。メラニンは体の色の成分であり、白子症とは低メラニン症なので白子症患者の髪や皮膚には色素が少ない。
・ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン(チロシン)
神経細胞などのメラノサイト(色素細胞)以外ではドーパ→ドーパミン→ノルエピネフリン→エピネフリンへと変化する。
・GABA(グルタミン酸)
GABA(γ-アミノ酸)はグルタミン酸をL-グルタミン酸デカルボキシラーゼによって触媒させることで生成する。GABAは主に脳組織で生成され、抑制性神経伝達物質として働く。
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ポルフィリン
胆汁色素にはポルフィリンが関与しており、下のようにピロールが4つ結合(架橋)して環状になったものである。
ポルフィリンは金属イオンと環の中心で結合する。つまり、窒素原子と結合する性質がある。この金属が鉄(Fe,)ならヘムであり、マグネシウム(Mg)ならクロロフィルである。(ヘムが4つ集まるとヘモグロビンとして機能する)
ポルフィリンは上の図で示した1~8位の水素原子がメチル、酢酸プロピオン酸基などの置換されること有色で強い蛍光をもつようになる。
ヘムの合成
ヘムはスクシニル-CoAとグリシンからアミノレブリン酸(ALA)を経由して合成される。このヘム合成は主に骨髄の赤芽球系の細胞と肝細胞で行われる。
スクシニル-CoA グリシン
↓ ALAシンターゼ (律速酵素)
アミノレブリン酸
↓ (ミトコンドリア)
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↓ (細胞質)
アミノレブリン酸
↓ ALAデヒドラターゼ (鉛で阻害)
ポルホビリノーゲン
↓ ウロポルフィリノーゲンⅠシンターゼ
ヒドロキシメチルビラン
↓ ウロポルフィリノーゲンⅢシンターゼ
ウロポルフィリノーゲンⅢ
↓
コプロポルフィリノーゲンⅢ
↓ (細胞質)
……………………………………………………
↓ (ミトコンドリア)
コプロポルフィリノーゲンⅢ
↓
プロトポルフィリノーゲンⅢ
↓
ポロトポルフィリンⅢ
↓ ヘムシンターゼ(フィロケラターゼ)
ヘム(Feを含む)
ALAシンターゼはヘム合成の律速酵素であり、ヘムによるフィードバック阻害を受ける。つまりALAシンターゼがヘム合成の速度を決定し、生合成を調節する。また、ALAデヒドラターゼは鉛によって阻害される。
なお、ポルフィリン症はヘム合成の異常によって起こる。
ヘムの分解
ヘムを分解すると胆汁色素を生成する。下にヘムの代謝過程を示す。
ヘム → → ヘミン → ビリルビン
ビリルビンは水にほとんど溶けない。そのため、ビリルビンは血漿アルブミンに結合して肝臓へ運搬される。
-肝臓-
ビリルビン (疎水性)
↓ UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ
ビリルビンジグルクロニド (親水性)
↓
胆汁中へ排泄(総胆管、十二指腸、回腸、大腸)
↓ 大腸菌グルクロニダーゼ
ウロビリノーゲン
↓ 酸化
ウロビリン
ビリルビンは疎水性なので親水性にするためにUDPグルクロノシルトランスフェラーゼによってビリルビンジグルクロニドにする。その後胆管中に排泄され、腸内細菌によってウロビリノーゲンとなる。ウロビリノーゲンの多くは酸化しウロビリンとなって糞便中に排泄される。
ただし、ウロビリノーゲンの一部は回腸や大腸で再吸収され、肝細胞を経て再び排出される。この過程を腸管ウロビリノーゲン回路という。
ウロビリノーゲン → 再吸収(回腸、大腸) → 肝臓 → 再び排泄
高ビリルビン血症
高ビリルビン血症は血液中のビリルビン量が多いために起こる。血中のビリルビン濃度が高いと黄疸を引き起こす。
「ビリルビン産出量>肝臓での排出量」という関係になれば高ビリルビン血症になる。ただし、高ビリルビン血症は血中ビリルビン産出量が上昇するために起こる貯留性高ビリルビン血症と肝臓での排出量が低下するために起こる逆流性高ビリルビン血症に分けることができる。
貯留性と逆流性の違いはビリルビンが抱合化されているかいないかである。抱合化されたビリルビン(ビリルビンジグルクロニド)の排泄に異常があれば逆流性であり、非抱合型のビリルビン代謝に異常がある場合は貯留型である。
・非抱合化ビリルビン血症(間接ビリルビン) → 貯留型高ビリルビン血症
溶血性貧血
→溶血することで代謝すべきヘムの量が上昇し、血中ビリルビン量が上昇する。ただし、肝臓でのビリルビンの処理能力は高いので症状は軽い。
新生児生理的黄疸
→新生児はビリルビンの代謝がまだまだ未熟なために起こる。なお、これは一過性な黄疸である。
Crigler-Najjar症候群
→遺伝子の欠損によるまれな病気であり、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼの欠損または活性が低下しているために起こる。
・抱合化ビリルビン血症(直接ビリルビン) → 逆流型高ビリルビン血症
逆流型高ビリルビン血症の主な原因は胆管系(肝胆管、総胆管)の閉塞である。胆管系が閉塞してしまうとビリルビンが逆流し、血中な尿中に現れる。
ウロビリノーゲンとビリルビンは臨床診断に役立てることもできる。腸内で生成されたウロビリノーゲンは再吸収されるため、わずかであるが尿中にウロビリノーゲンが存在する。
しかし、胆管系が完全に閉塞するとビリルビンが腸内に入らず、ウロビリノーゲンを生成することができない。すると、尿中にビリルビンは存在するがウロビリノーゲンは全く存在しないということになる。
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