アミノ酸の生合成
アミノ酸には栄養学的必須アミノ酸と栄養学的非必須アミノ酸の2種類がある。ただし非必須アミノ酸といっても生物学的には必要であり、生きていくためにはこれらのアミノ酸が必要不可欠である。
それでは何を基準に「必須」や「非必須」かというと、「体内で合成することができるアミノ酸かどうか」ということである。体内で合成できるアミノ酸であるなら、食物から摂取しなくてもいいので栄養学的非必須アミノ酸となる。逆に食物からでしか摂取できないアミノ酸は栄養学的必須アミノ酸である。
下の表に栄養学的必須アミノ酸と栄養学的非必須アミノ酸を示す。
必須アミノ酸を体内で生合成しようとすると、多くの酵素が必要であり生合成経路が長くなってしまう。このような合成に手間がかかるアミノ酸は自ら合成するよりも、栄養として他から摂取して利用する方が効率が良い。
生体が必須アミノ酸を体内で生合成しないのはこのためである。
ただし、システインはメチオニンから合成され、チロシンはフェニルアラニンから合成される。つまり、システインやチロシンは非必須アミノ酸であるが、必須アミノ酸であるメチオニンやフェニルアラニンがなければ合成できないのである。
非必須アミノ酸の生合成
以下に非必須アミノ酸の生合成を簡単に述べる。
・グルタミン酸
グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって、α-ケトグルタル酸を還元的にアミノ化させる。
・グルタミン
グルタミンシンテターゼによって、グルタミン酸とアンモニアから合成される。なお、組織で発生した過剰のアンモニアは、グルタミンの形で肝臓に運ばれて代謝される。
・アラニンとアスパラギン酸
トランスアミナーゼによって、ピルビン酸のアミノ基転移反応でアラニンが生成し、オキサロ酢酸のアミノ基転移反応でアスパラギン酸が生成する。
この反応でのアミノ供与体はグルタミン酸でもアスパラギン酸でもどちらでもよい。そのため、反応後はα-ケトグルタル酸かオキサロ酢酸を生成する。また、ピルビン酸ではなくオキサロ酢酸が用いられると、アラニンではなくアスパラギン酸が生成する。
・アルパラギン
アスパラギンシンテターゼによって、アスパラギン酸とグルタミンから合成される。
・セリン
ホスホグリセリン酸から合成される。
・グリシン
グリシントランスアミラーゼによって、グリオキシル酸とグルタミン酸から合成される。また、グリシンは他にもセリンやコリンからも合成される。
・プロリン
グルタミン酸から生成する。
・システイン
メチオニンとセリンから生成する。
・チロシン
フェニルアラニンヒドロキシラーゼによって、フェニルアラニンから生成する。また、この酵素の欠陥はフェニルケトン尿症を引き起こす。
・セレノシステイン
システインのSがSeに置換されたもの。終止コドン(UCA)を使うことで取り込まれる。
・バリン、ロイシン、イソロイシン
これらは必須アミノ酸であるが、対応するα-ケト酸からトランスアミナーゼによって合成することができる。
それではなぜ体内で生成されるのに必須アミノ酸なのだろうか。これは、体内で生成されるバリン、ロイシン、イソロイシンは生成後すぐに分解されてしまうからである。そのため、結局食事から摂取しないといけないのである。
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