薬物の相互作用
医薬品の相互作用
私達の体に含まれているもので最も多い成分は「水」である。そして、次に多いのがタンパク質であり、私たちの体の約20%を占めている。
髪や皮膚はタンパク質で出来ている。肝臓や肺などの臓器も多くはタンパク質で構成されている。つまり、水を除く骨や体液、脂肪など以外はほとんどタンパク質なのである。生体の多くはタンパク質で構成されているため、多くの薬がタンパク質に作用する理由も分かるはずである。
このとき、薬はタンパク質とさまざまな相互作用をするが、相互作用には次のようなものがある。
・共有結合
・イオン結合
・水素結合
・イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用
・ファンデルワールス力
・疎水性相互作用
・共有結合
原子と原子がお互いに電子を出し合って結合しているのが共有結合である。共有結合は最も強い強い結合である。ただし、アミノ酸の中で共有結合できるものはシステインだけである。
共有結合は強い結合力をもつが、薬における相互作用にはあまり関与しないため、それほど重要な相互作用ではない。
イオン結合
+の電荷をもつ物質と-の電荷をもつ物質はお互いを引き付ける力をもっている。この力による結合がイオン結合である。
イオン結合は比較的強い結合であるが、20種のタンパクがある中でイオン結合に関与するのはアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニンの4種類だけである。そのため、イオン結合は共有結合同様に重要な相互作用であるとは言えない。
水素結合
水素結合はDNA二重らせん、タンパク質におけるα-へリックスやβ-シート構造に関与している重要な結合である。水素結合は酸素原子のような電気陰性度の高い分子と「窒素原子や酸素原子」など電気陰性度の高い原子に結合した結合したプロトンとの間に形成される。
水素結合は多くのアミノ酸と相互作用するため、重要な相互作用であるということができる。
イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用
電気陰性度が異なる原子同士が結合していると、わずかであるが電荷に偏りを生じる。
例えば、H-O結合では酸素原子の方が電気陰性度が高いため、酸素原子が少しマイナスの電荷を帯び、水素原子が少しプラスの電荷を帯びることになる。
電気陰性度が強いということは電子を引き付ける力が強いということである。電子はマイナスの電荷を帯びているので、電気陰性度が強い酸素原子の方がマイナスの電荷を帯びるということが理解できる。このような状態の分子を双極子という。
双極子では分子内でそれぞれ+、-の電荷を帯びているのでイオン結合の場合と同じように+-同士で引き合いう。これによる結合を双極子-双極子相互作用という。
ファンデルワールス力
全ての物質には引力が働いている。この力がファンデルワールス力であり、電気的に中性な分子間で働く弱い力である。
無極性の分子は双極子としてほとんど働かない。しかし電子は絶え間なく動いており、ある瞬間をとらえた時、電荷の偏りが生じるため瞬間的な双極子が誘起され分極していると見ることができる。つまり、無極性の分子であっても瞬間的には分極しているのである。
この分極した分子が他の分子に近づくと、また双極子が誘起される。これら双極子の作用によってお互いに相互作用するのである。
ファンデルワールス力は弱い結合(0.5~1kcal/mol)であるが、芳香環におけるπ-π相互作用は比較的強く作用する。なお、π-π相互作用は芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンにおいて形成される。
疎水性相互作用
疎水性をもつもの同士が集まろうとすることによって生じる結合である。これは水の凝集力によって疎水性をもつ物質が水中から排除されることによって起こる。
薬による結合の様子
薬が受容体に結合するとき、ある部分では水素結合が働いており、他方ではファンデルワールス力が働いているなど、さまざま相互作用によって結合している。
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