光学活性物質と三点受容体説
光学活性物質による作用の違い
薬に光学活性があるのはよくあることである。そして、多くの場合R体とS体で薬としての効果が違う。R体はS体に比べて数十倍作用が強いということは珍しくない。R体は薬としての作用をもっているが、S体は薬としての作用をもっていないということもある。
ラセミ体のまま使用しても良いが、光学異性体のうち片方が抜群に作用が強い場合、当然であるが分けれた方が良い。ただし、光学異性体の分離は難しいため、実際は経費などを考慮に入れる必要がある。
三点受容体説
「薬と受容体との結合には少なくとも3点以上の結合基がないといけない」と考えるのが三点受容体説である。物質の位置を固定するためには、必ず三点を特定する必要がある。
「x軸、y軸、z軸」での空間において三点を決めると物質はその場所に固定され、それ以上他の場所に移動できないということは容易に想像つくことができる。
「3点以上で結合しないといけない」ということを考慮すれば、なぜ光学異性体で「片方だけ効果が表れ、もう片方は効果が表れない」という現象が起こるのかを簡単に理解することができる。
上の左図では、二つの光学異性体による受容体への結合の様子を描いている。
このとき、左側の場合では3点の結合基がぴったり合うため、受容体と結合することができる。しかし、右側の場合では3点で結合することができない。そのため光学異性体をもつ場合、片方は効果を表わさない(効果が弱い)のである。
サリドマイドから学ぶ光学活性体
サリドマイドは光学活性物質でありR体に睡眠作用、S体に催奇形性がある物質である。
それでは、「サリドマイドのラセミ体から睡眠作用をもつR体だけを単離すれば良い」と考えるはずである。しかし、そう単純ではなく、R体のサリドマイドだけを投与しても体内でR体とS体のラセミ体へと変換されてしまうのである。
つまり、苦労してR体だけを単離したとしても催奇形性を避けることができないため、あまり意味がないのである。
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