アゴニストとアンタゴニスト
メッセンジャーと同様または似た働きをする薬の場合、結果としてそのメッセンジャーの働きを強めることになる。このように、生体の作用を強めることによって作用する薬を「アゴニスト(作動薬)」という。
また、メッセンジャーの働きを阻害する場合、生体の作用を弱めることになる。この作用によって作用を発揮する薬を「アンタゴニスト(拮抗薬)」という。
つまり、アゴニスト(作動薬)は活性化させる物質の総称であり、アンタゴニスト(拮抗薬)は不活性化させる物質の総称である。
アゴニスト
それでは、生体機能を増強するアゴニストであるが、多くのアゴニストは生体分子と比較的似た構造をしている。ここでは例として、「エストラジオール」と「DES」を挙げる。
サリドマイドをはじめ、今までに多くの薬害が発生したが、その中の一つに「DES」による薬害がある。DESは女性ホルモンとしての作用があり、この薬を妊婦が飲むことにより、生まれてくる子供に異常が発生たのである。
女性ホルモンは私たちの体で活躍する生体物質であり、この女性ホルモンの一つとしてエストラジオールがある。以下にエストラジオールとDESの構造を示す。
この二つの構造を見て何か感じるものがないだろうか。そして、その答えは二つを重ね合わせ一目瞭然である。下に二つの構造を重ね合わせた様子を示す。
このように、二つはとてもよく似た構造をしていることが分かる。これならDESが女性ホルモンとしての作用をもつ理由を理解してもらえると思う。
このように、生体機能を増強する薬には「もともとの生体分子と似た構造を有する物質」が多いのである。
ただし、生体の作用を強めることによって作用する薬(アゴニスト)の全てが、このように生体分子と似た構造をもっているとは限らない。
アンタゴニスト
アンタゴニストの阻害機構には、「競合阻害」と「非競合阻害」の二種類がある。以下にその機構を述べる。
・競合阻害
メッセンジャーは受容体と結合することによって、その効果を発揮する。それでは、メッセンジャーが結合するべき場所に、効果を表わさない薬が結合すればどうなるであろうか。
薬自体は受容体と結合するが、結合するだけで全く効果を表わさない。すると、メッセンジャーが受容体に結合するのを防いでしまう。これによってメッセンジャーが受容体に結合できず、情報を細胞に伝えることができなくなる。これによって、働きを阻害するのである。
つまり、競合阻害による阻害薬は「受容体に結合するが、何も効果を表わさない薬」となる。
・非競合阻害
非競合阻害では、受容体とは別の場所に作用することでメッセンジャーの働きを阻害する。
○拮抗機構その1
相反する作用をする薬を併用した場合、薬の作用は減少してしまう。
例えば、「心臓の機能を弱める薬と心機能を強める薬を併用した場合」や「脳の作用を活性する薬と脳を抑制する薬を併用した場合」では、いずれも薬の作用は弱まってしまう。
「+の作用をもつ薬」と「-の作用をもつ薬」を併用すると、その作用は減少してしまうのである。
○拮抗機構その2
受容体に薬物が結合すると、タンパク質の構造が変化する。タンパク質の構造が変化するということは、受容体の形が変化するということである。
受容体の形が変化すれば、当然ながらメッセンジャーは受容体に結合しにくくなる。これによって、働きを阻害するのである。
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