触媒の働きと作用
活性化エネルギーと触媒
酵素の役割は触媒として働くことである。つまり、生体での化学反応を速やかに行うことを可能にする。
原料が反応して生成物を得るとき、必ずエネルギーが必要となる。このとき、活性化エネルギーを下げてくれるのが触媒である。
それでは、どのようにして活性化エネルギーを減少させるのだろうか。
パラジウム-炭素触媒(Pd/C)の場合
例えば、水素分子とアルケン分子が反応する場合、水素分子のH-H結合が強いため反応しにくい。そこで、Pd/Cによって水素分子のH-H結合を弱めてやる。
Pd/Cが存在すると、水素分子のH-H結合が切断され、水素原子は触媒表面に結合するのです。
この状態であれば、アルケン分子は比較的容易に水素分子と反応できるようになる。なぜなら、水素分子同士のH-H結合が弱くなっているからである。
触媒はこのようにして活性化エネルギーを下げ、反応をスムーズに進行させるのである。
酵素の場合
酵素は体内で触媒としての働きを示す。そして、酵素は反応させたい物質を特定の部位に固定することで反応を促進する。
反応物質は酵素と結合しているので、その分だけ反応物質の高エネルギー結合が消失しているはずである。そのため、反応物質同士は互いに作用しやすくなる。
酵素阻害薬について
このように酵素は特定の物質の反応を触媒することで反応を進める。逆に言えば、酵素が正常に働かなければその反応は進まなくなってしまうのである。
つまり、ある物質の作用が強いことで病気になっている場合、この物質の合成に関わる酵素を阻害する薬を設計すれば、薬として効果を表す。このとき、酵素阻害の作用機序として競合阻害や非競合阻害などがある。
競合阻害では薬が酵素の活性部位と結合することで効果を表し、非競合阻害では活性部位以外の部位と結合することで効果を表す。
誘導適合
「鍵と鍵穴の関係」は有名な話であるが、いくつかの酵素でこの関係だけでは説明がつかないことがある。そこで考え出されたのが誘導適合である。
誘導適合の場合、基質が酵素に近づくことによって、基質が酵素にぴったりはまるように形を変えるのである。
これによって、なぜ一つの酵素が様々な基質を触媒するかを理解することができる。誘導適合により、このような酵素はそれぞれの基質によって形を変えているのである。
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