役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

受容体とタンパク質の構造変化

 

 メッセンジャーと受容体
神経伝達物質やホルモンなどの物質は受容体に結合することで、機能を発揮する。

 

神経伝達物質によって情報が脳に伝えられ、脳からの情報が筋肉まで伝わる。また、ホルモンによって必要なタンパク質を合成するように命令する。

 

つまり、これらの物質は細胞から細胞へと情報を伝える「化学的なメッセンジャー」としての働きをするのである。(メッセンジャー=情報を伝える物質)

 

 メッセンジャーとシグナル応答

 

そして、これらメッセンジャーが受容体に結合することで生理作用を示すのである。しかし、これらのメッセンジャーが過剰に存在していたり、あまり存在していなかったりすれば生体にとって好ましくないことが起こる。

 

必要もないのに多くのメッセンジャーが存在していると、標的となる細胞は過剰に応答してしまい「オーバーヒート」の状態となってしまう。

 

例えば、細胞を増殖させるように働くメッセンジャーが過剰に存在するようになったとする。この状態では、細胞増殖がどんどん進行してしまうのである。「がん」の患者では、まさにこのような状態となっている。

 

また、メッセンジャーの量が少ないと、細胞は応答しなくなる。これでは細胞同士の情報が伝わらない。

 

 メッセンジャーと病気
「メッセンジャーが過剰に存在している状態」「メッセンジャーがあまり存在していない状態」、これらは二つとも病気の状態である。

 

ほとんどの病気はこれにあてはまることができ、多くの薬は病気の状態と逆の作用を起こすことで病気を治す。

 

つまり、「メッセンジャーが過剰に存在している状態」ならメッセンジャーの働きを弱め、メッセンジャーがあまり存在していない状態」ならメッセンジャーの働きを強めるのである。薬は生体の作用を強めるだけではなく、生体の機能を阻害することで効果を発揮する場合もある。

 

例としてパーキンソン病と統合失調症の場合を見てみまよう。

 

ドパミン」という物質がキーワードになるのであるが、パーキンソン病の場合、脳内のドパミン量が減少している。また、統合失調症の場合では、脳内のドパミン量が過剰に存在している。

 

つまり、ドパミンという神経伝達物質(メッセンジャー)が過剰 or過少に存在しているため病気となったのです。

 

 パーキンソン病と統合失調症

 

薬を投与する場合、パーキンソン病ではドパミンの作用を強める薬を投与します。また、統合失調症の場合ではドパミンの作用を抑制する薬を投与する。これらの作用によって薬として働くのである。

 

なお、抗生物質の場合は例外である。抗生物質は外からの細菌を殺すことで作用するため、必ずしもメッセンジャーに対して働くとは限らない。

 

 タンパク質の構造変化
タンパク質はアミノ酸の寄せ集めである。つまり、タンパク質は鉄の塊のように硬くて動かないものではなく、やわらかく少しの力で形の変化を起こすことができるのである。

 

「薬は受容体と結合する」と述べたが、ただ結合するだけではない。結合することによってタンパク質の形を変えるのである。

 

 タンパク質の構造変化

 

上の図は薬が受容体に結合し、イオン結合によってタンパク質の構造が変化した様子をしてしている。それでは、具体的にどのようにタンパク質が構造変化すれば効果を発揮するかを見てみようと思う。

 

 イオンチャネルの例
私たちの細胞は水や電解質などの体液によって満たされている。そして、細胞外と細胞内では存在するイオンの濃度が異なっています。例えば、Naの濃度は細胞外が高く、細胞内の濃度は低い。また、Kの濃度は細胞内で高くなっており、細胞外では低くなっている。

 

これらイオンを細胞内外へ通すトンネルを「イオンチャネル」と言うが、普段このトンネルは閉じられている。これは、勝手にイオンが通り抜けてもらっては困るからである。

 

ただし、情報伝達など必要な時にはイオンチャネルが開かれる。つまり、薬によって無理やりイオンチャネルを開いてしまえば、このイオンチャネルによる生体機能が表れるのである。

 

 イオンチャネル開口

 

薬が受容体に結合することでイオンチャネルが開き、イオンが細胞内に流入する。これにより、イオンチャネルの働きを活性化させる。

 

なお、逆の作用を示す薬もある。薬が受容体に結合して何も作用を起こさない場合、当然であるがイオンチャネルは開かない。そして、重要なのは薬が受容体に結合していることによって、他の情報伝達物質もイオンチャネルを開く受容体に結合できなくなるのである。

 

これによって、イオンチャネルの働きを抑えるのである。

 

 膜結合型酵素の例
今度は、細胞膜に酵素が結合している場合を想定する。

 

普段、細胞膜に結合している酵素は働かないように制御されている。そして、必要なときには外からのシグナルによって活性化され、酵素として機能を発揮するのである。

 

それでは、酵素を活性化させるシグナルと同じ働きをする薬が作用すれば、酵素は活性化するはずである。

 

 膜結合型酵素の活性化

 

上の図のように薬が結合することでタンパク質の構造が変化し、膜に結合している酵素が活性化するのである。

 

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