ひずみ:結合角ひずみ、二面角ひずみ、立体ひずみ
環状の飽和炭化水素であるシクロアルカンにはひずみが生じている。ひずみには3種類あり「結合角ひずみ、二面角ひずみ、立体ひずみ」がある。ひずみは化合物の安定性の上で影響を及ぼしている。
結合角ひずみ
隣り合う3つの炭素原子の角(結合角)の理想値は109.5°であり、この値からずれるほど環の内部にひずみを生じる。そのため、シクロヘキサンは折れ曲がり形をとっている。
二面角ひずみ
上の図で言うと、Aの物質を→の方から見るとBのようになり、ついにはCのように見える。このときのaとbのなす角を二面角という。
二面角の理想は60°であり、この値からずれることでひずみが生じる。
立体障害
置換基同士の立体的な反発です。ひずみの大きさはこのような複数のひずみによって生じるエネルギーの和である。
ニューマン投影式 (newman projection)
ニューマン投影式は立体配座を考えるときに有利である。ニューマン投影式は炭素の軸に沿って眺める。
上の左図のように炭素軸に沿って見て、その様子をニューマン投影式で描くとこのようになる。ニューマン投影式では結合間の重なりを容易に理解できる(二面角ひずみの大きさを容易に理解できる)。DやFのように二面角がそれぞれ60°の形を形成する方がエネルギー的に有利である。
Eの状態では二面角ひずみが大きい。ただし、Eの図の状態ではメチル基同士が重なっているが軸が回転し水素とメチル基が重なる時もある。その状態と比べるとメチル基同士が重なる方がエネルギーが高い。これは、立体障害によるものである。
同じ立体障害の理由でDとFではエネルギーに差がある。炭素同士が離れているFの方がエネルギーが小さく、有利である。
Fはそれぞれの原子の二面角が60°を保ち、かつメチル基同士が離れている。この状態をアンチ形(anti form)という。
Dでは60°を保っているがメチル基同士が60°の位置にある。この状態をゴーシュ形(gauche form)という。ゴーシュ形はアンチ形よりもエネルギーが高く、不安定である。
・エクリプスド・スタッガード
なお、メチル基の位置によりそれぞれ次のように使い分けられる。
立体配座(シクロヘキサン)
シクロヘキサンの平面型は炭素同士の結合角が120°となり結合角ひずみが生じる。そのため、シクロヘキサンは形を折り曲げてひずみをなくす。
平面型を赤い矢印のように折り曲げれば船形配座となり、青い矢印のように折り曲げればいす形配座となる。この折り曲げた2つの形は両方とも結合角は109.5°となり、結合角ひずみがない。
また、いす形配座は二面角ひずみもなく最も安定しているが舟形配座は大きな二面角ひずみを生じている。
いす形配座と船形配座を矢印の方向から見てニューマン投影式で描くと、上の様に書くことができる。この図を見ると舟形配座では二面角ひずみがあることは明らかである。
また、舟形配座では赤丸で囲んだ水素同士の距離が近くなっているため立体反発があり立体ひずみが生じる。
アキシアルとエクアトリアル
シクロヘキサンのいす形配座の垂直方向の結合をアキシアル結合 (axial bond)、平行方向の結合をエクアトリアル結合 (equatorial bond)という。
また、シクロヘキサンは折れ曲がりによりいす形になるが折れ曲がりの方向によって2種類のいす形配座ができる。
幾何異性体 2
今度は異なる置換基での立体障害の例としてシス-1-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキサンを紹介する。
tert-ブチル基とメチル基ではtert-ブチル基の方が大きい。そのため、tert-ブチル基がエクアトリアルにくる方が立体障害が少なく最も安定ないす形配座となる。
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