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放射性医薬品(放射薬品化学)

 

 放射性医薬品とは
医薬品の中には放射性同位元素(放射性核種)を含むものがある。このような医薬品を放射性医薬品と呼び、治療や診断に使用される。

 

「放射線を出すものを体の中に入れるのは危険」と思うかもしれないが、必ずしも危険なわけではない。

 

例えば診断用の医薬品であると半減期の短いものが使用される。診断で使用される放射性同位元素の11Cは半減期が20分であり、少し時間がたてば完全に消失してしまう。

 

放射性医薬品には主に病気そのものを治療する治療用医薬品と画像診断など病気発見のために用いる診断用医薬品の二種類がある。

 

・治療用医薬品
治療用医薬品として利用される放射線としてはα線とβ線がある。古くから使われている医薬品としては、131I が甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺がんの治療として利用されてきた。

 

ヨウ素は甲状腺に集積する特徴を持つため、放射性同位元素の131I が甲状腺に集まり、周りの甲状腺細胞にβ線を与えるようになる。これによって、甲状腺細胞のアポトーシスを促し、バセドウ病や甲状腺がんを治療する。

 

モノクローナル抗体に放射性同位元素を標識したものもある。イットリウム(90Y)やインジウム(111In)などでモノクローナル抗体を標識し、がん細胞周辺に集積させ、α線やβ線によるがん治療を行う。

 

また、ストロンチウム(Sr)が骨に集まる性質を利用し、骨の中に出来たがん細胞を攻撃することで「がんの疼痛緩和」に利用する89Sr などもある。

 

・診断用医薬品
検査を行う放射性医薬品の中にも、直接ヒトの体内に入れて調べる診断用医薬品と体内投与を行わない体外診断用医薬品がある。

 

体外診断用医薬品は、例えば血液などを取ってきて、血液の中のホルモンやビタミンの量を測定する。体の外で診断する医薬品なので、体外診断用医薬品という名前なのである。

 

診断用医薬品は画像診断として用いる。放射線を感知することにより、体の何処に病気が潜んでいるかを可視化するのである。

 

このような診断用医薬品で使用される放射性核種としてはγ線を出す核種が使用される。これは、α線やβ線よりもγ線の透過性が良く、感度も高いためである。

 

種類

使用される放射性同位元素(放射性核種)

治療用医薬品

131I、(125I、89Sr、186Re、153Sm、90Y)

診断用医薬品

123I、18F、99mTc、201Tl、67Ga、111In、133Xe

体外診断用医薬品

125I、3H

 

・PET(ポジトロン断層法)
画像診断法として有名な技術にPET(ポジトロン断層法)がある。PETでは放射性同位元素でラベルした薬物を投与し、各臓器への集積具合などを追跡することが出来る。

 

PETで使用される放射性同位元素としては、次のようなものがある。

 

放射性同位元素

半減期

11C

20分

13N

10分

15O

2分

18F

110分

 

臨床で使用されている方法としては、がん細胞を発見するための薬剤として18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)がある。

 

18F-FDGはグルコース(ブドウ糖)に似た化合物であり、一つのOH基が18Fに変換されている。ブドウ糖と似ているため、私達の体は18F-FDGをブドウ糖と勘違いして取り込んでしまうのである。

 

 18F-FDG(デオキシグルコール)

 

この18F-FDGは主にブドウ糖の消費が大きい部位に集積する。

 

18F-FDGがたくさん集まる部位としては脳や心臓、排出ルートである腎臓の他にがん細胞がある。がん患者の場合、正常な人では集まらない場所(がん細胞のある場所)に18F-FDGが集積するため、がん細胞がどこに出来ているかを画像診断によってピンポイントで知ることが出来る。

 

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