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役に立つ薬の情報~専門薬学

Gタンパク質

 

 Gタンパク質の作用
Gタンパク質は細胞増殖・分化の制御や細胞アクチン骨格の形成、細胞内物質輸送など、さまざまなものに関与している。

 

特に細胞増殖・分化に関係していることから、がんと関係している。Gタンパク質の制御ができなくなれば細胞増殖のシグナルを出し続けることになるからである。

 

 Gタンパク質の性質
Gタンパク質は通常、GDPが結合した状態で存在している。この状態のGタンパク質は不活性型であり、作用を表わさない。

 

これがシグナルなどの活性化因子の作用を受けると、GDPが遊離してGTPが結合する。GTPが結合するのは、細胞内のGDPの量よりもGTPの量の方が多いからである。

 

GTPが結合するとGタンパク質は活性型となり、作用を表すようになる。この後、自らのGTPaseによって結合しているGTPがGDPに変化して不活性化する。

 

 Gタンパク質

 

・Gタンパク異常によるがん
Gタンパク質が活性化したままの状態であると、細胞増殖がどんどん進行していってしまう。これは細胞のがん化原因の一つである。

 

活性化したGタンパク質を不活性化させる酵素にGTPaseがある。この酵素の活性が低下すれば「GTP→GDP」への変換が起こらず、Gタンパク質は活性化した状態のままとなる。

 

また、GTPaseの活性を促進させる因子としてGAPがあり、この因子の機能が喪失してしまってもGTPase活性が低下し、Gタンパク質が活性化したままの状態となる。

 

 三量体Gタンパク質
三量体Gタンパク質の受容体は7回膜貫通型受容体である。細胞膜を7回貫通しているので、7回膜貫通型である。

 

 7回膜貫通型受容体

 

Gタンパク質はそれぞれ三量体Gタンパク質、低分子量Gタンパク質、翻訳系の伸長・開始因子の三つに分類することができる。

 

このうち、三量体Gタンパク質はα,β,γの三つのサブユニットから構成されている。GβとGγのサブユニットは常に結合しており、解離することはない。また、Gα(αサブユニット)にはGTP,GDPが結合することができ、GTPが結合することでGαとGβγが解離する。

 

三量体Gタンパク質の作用機序

 

 

 Gタンパク質のクラス
Gタンパク質のクラスにはGs,Gi,Gq,Gtなどのクラスがあり、それぞれ役割が異なっている。なお、Gsのsは「stimulate:刺激」を意味しており、Giのiは「inhibit:抑制」を意味している。

 

Gs,Giはアデニル酸シクラーゼの活性に関わっており、Gsのαサブユニット(Gsα)が関与するとアデニル酸シクラーゼ活性は促進される。逆にGiのαサブユニット(Giα)が関与するとアデニル酸シクラーゼ活性は抑制される。

 

また、Gqのαサブユニット(Gqα)はホスホリパーゼC-βの活性化に関わっている。なお、GβγもホスホリパーゼC-βの活性化に関わっている。

 

クラス

作用物質

Gsα

アデニル酸シクラーゼ(活性化)

Giα

アデニル酸シクラーゼ(抑制)

Gqα

ホスホリパーゼC-β(活性化)

Gβγ

ホスホリパーゼC-β(活性化)

 

・Giによるアデニル酸シクラーゼ(AC)の調節
Giはアデニル酸シクラーゼを抑制するが、この抑制にはさまざまな機構が存在する。

 

GTPと結合したGiはαサブユニットとβ,γサブユニットに分かれる。分かれたβ,γサブユニットはGsのαサブユニットとも結合することができ、この作用によってアデニル酸シクラーゼを活性化するGsα量を減らし、ACの活性を抑制する。

 

 Giによるアデニル酸シクラーゼ(AC)の調節

 

また、β,γサブユニットはアデニル酸シクラーゼの別の部分と結合することができる。これによって、アデニル酸シクラーゼの構造を変え、Gsαが結合するのを防ぐ。

 

 Giによるアデニル酸シクラーゼ(AC)の調節

 

この他にも、GiαはGsαと結合部位を競合することによって活性を阻害する。

 

 Giによるアデニル酸シクラーゼ(AC)の調節

 

 Gタンパク質と細菌毒素
細菌が産生する毒素の中にはGタンパク質を標的とするものがある。このような毒素にはコレラ毒素や百日咳毒素がある。

 

コレラ毒素
コレラ毒素は細胞内に入ると、NADの助けを受けて活性化しているGsタンパク質にADPリボシル基を転移させる。つまりGsαにADPリボースを結合させるのである。

 

通常、活性化したGタンパク質はGTPaseによって不活性化されるはずである。しかし、リボシル化されるとGTPaseによって不活性化されなくなる。Gsが不活性型に戻らないので、アデニル酸シクラーゼの活性が促進され続けるのである。

 

これによりcAMPの濃度が上昇し、さまざまな作用が起こるのである。

 

・百日咳毒素
Gsに作用するコレラ毒素に対し、百日咳毒素はGiに作用する。なお、「NADの助けを受けること」「ADPリボシル化を行うこと」はコレラ毒素と同じである。

 

百日咳毒素はGDPと結合している不活性型のGiをリボシル化し、活性型になれないようにする。アデニル酸シクラーゼ(AC)の抑制ができないため、アデニル酸シクラーゼが活性化し続けてcAMPの濃度が上昇する。これによって、さまざまな病気を引き起こすのである。

 

※コレラ毒素はGTPと結合しているGsαをリボシル化する

 

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