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役に立つ薬の情報~専門薬学

抗真菌薬の基礎

 

細菌よりも形が大きく、より高等な生物として真菌(しんきん)があります。真菌を分かりやすく呼ぶと「カビ」のことです。

 

キノコはカビの一種として有名ですが、これらキノコも真菌の一種です。また、パンを作る時や酒を醗酵させるときに酵母と呼ばれる菌を使用しますが、この酵母も真菌です。

 

 真菌の種類(カビ、キノコ、酵母)

 

このように、私達はカビである真菌をあらゆる場面で利用しています。

 

しかし、真菌としてのキノコの中でも毒キノコがあるのと同じように、私達の体に悪さをする真菌も存在します。このように、真菌による感染症を真菌症と呼びます。真菌症として有名なものに水虫があります。

 

この時、真菌症の中でも「真菌による感染が皮膚表面や角質で留まる場合」を表在性真菌症と呼びます。表在性真菌症は皮膚表面に感染している真菌を取り除けば良いため、外用薬として塗り薬を使用すれば良いです。

 

しかし、中には皮下組織や爪などに及ぶ場合があります。この時の真菌症を深在性皮膚真菌症(深部皮膚真菌症)と呼びます。さらに、内臓など体内の臓器にまで及ぶ真菌症は深在性真菌症(内臓真菌症)と呼ばれます。

 

真菌症の種類

特徴

表在性真菌症

・真菌による感染が皮膚表面や角質で留まる
・外用薬として塗り薬を使用

深在性皮膚真菌症

(深部皮膚真菌症)

・真菌による感染が皮下組織や爪などに及ぶ
・外用薬で治療困難な場合、内服薬(飲み薬)を使用

深在性真菌症

(内臓真菌症)

内臓など体内の臓器にまで及ぶ真菌症
・抗がん剤や免疫抑制剤の投与している患者で起こりやすい

 

真菌とはカビのことなので、健康状態の人ではたとえ真菌が体内に入ったとしても害になることはほとんどありません。しかし、体の免疫機能が低下している状態であると、真菌が体内で増殖することで健康を害することもあります。

 

例えば、手術後の患者さんや抗がん剤、免疫抑制剤などを投与されている患者さんであると、どうしても免疫力が低下しています。そのため、このような状態では体の臓器にまで及ぶ真菌症である深在性真菌症を引き起こす可能性も高くなります。

 

深在性真菌症を発症した場合、内服薬(飲み薬)や点滴によって薬が使用されます。

 

 真菌の構造
抗真菌薬として真菌への選択毒性を考えるためには、真菌の構造を理解する必要があります。これら細胞の構造の違いを認識すれば、どのような薬が抗真菌薬となるかを理解しやすくなります。

 

以下に細菌、真菌、ヒトの細胞の違いにおける重要な点を記しています。

 

 細菌、真菌、ヒトの細胞構造の違い

 

 ・細菌と真菌の違い
細菌と真菌の最も大きな違いとしては、「遺伝子(DNAなど)を包み込むがあるかどうか」があります。

 

細胞分裂を行うためには、「どのような材料を使わなければいけないか」などの設計図をもとに行う必要があります。この設計図がDNAなどの遺伝子になります。

 

細菌の場合、この遺伝子が細胞の中に何の仕切りもなく入れられています。それに対して、真菌では核と呼ばれる「DNAなどの遺伝情報を包み込む膜」が存在します。

 

この時、細菌のように核がないために細胞の中に遺伝子がそのまま入れられている生物を原核生物と呼びます。それに対して、真菌のように遺伝子が核で包まれている生物を真核生物と呼びます。

 

ヒトの細胞にも核があり、真菌の細胞はよりヒトに近い構造となっています。

 

 ・真菌とヒトの細胞の違い
真菌とヒトの細胞を比べた時、最も違う点は細胞膜を構成する成分です。細胞膜は細胞の内と外とを分けるために必要な膜ですが、この細胞膜の主な構成成分が異なります。

 

ヒトの細胞の場合、細胞膜は主にコレステロールによって構成されています。コレステロールは脂質異常症などによって悪いイメージがありますが、実は細胞が生きていくために必要不可欠な物質です。

 

それに対して、真菌の細胞膜は主にエルゴステロールと呼ばれる物質によって構成されています。このように、真菌とヒトでは構成されている細胞膜の主成分が異なっています。

 

そのため、抗真菌薬の創出を行う際はこの細胞膜の違いを利用することが多いです。ヒトの細胞膜はエルゴステロールで構成されていないため、エルゴステロールを阻害する薬は真菌に対して選択毒性を示すようになります。

 

また、「真菌は細胞壁をもっている」という事もヒトの細胞との違いになります。ヒトの細胞には細胞壁がないため、真菌の細胞壁を阻害する薬も同じように選択毒性を示すことができます。

 

 抗真菌薬
 ・ポリエン系抗真菌薬
真菌の細胞膜はエルゴステロールで主に構成されているため、このエルゴステロールを破壊すれば細胞膜に穴があきます。

 

すると、穴から細胞内になければいけない成分が細胞外へと漏出してしまいます。この結果、真菌が死滅します。

 

 ポリエン系抗真菌薬

 

このように、エルゴステロールに結合することで真菌の細胞膜を破壊する薬としてアムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)があります。

 

 ・アゾール系抗真菌薬
真菌の細胞膜にはエルゴステロールが必要です。そのため、このエルゴステロール合成を阻害することができれば、真菌は増殖することができません。

 

 アゾール系抗真菌薬

 

このように、エルゴステロール合成を抑制することによって真菌の増殖を抑える薬としてミコナゾール(商品名:フロリード)、ケトコナゾール(商品名:ニゾラール)、ビホナゾール(商品名:マイコスポール)、イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)などがあります。

 

 ・キャンディン系抗真菌薬
ヒトの細胞と真菌細胞の違いとして細胞膜の構成成分がありますが、「細胞壁の有無」という違いもあります。ヒトの細胞には細胞壁がありませんが、真菌の細胞には細胞壁が存在します。そのため、真菌の細胞壁合成を阻害する薬は抗真菌薬となります。

 

真菌の細胞壁の主成分として、グルカンと呼ばれる糖がたくさん連なった構造があります。そのため、このグルカンの構造を構築するための酵素を阻害すれば細胞壁合成が抑制されます。

 

グルカン合成に関わる酵素を阻害する薬がキャンディン系抗真菌薬であり、この作用によって細胞壁合成を抑えることができます。

 

 キャンディン系抗真菌薬

 

このように、真菌の細胞壁合成を抑制するキャンディン系抗真菌薬としてミカファンギン(商品名:ファンガード)などがあります。

 

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