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イナビル(ラニナミビル)の作用機序:抗インフルエンザ薬

 

毎年、冬になると流行を繰り返す感染症にインフルエンザがあります。ウイルスによって引き起こされる病気であり、インフルエンザウイルスが原因ウイルスです。

 

そこで、インフルエンザを治療するために用いられる薬としてラニナミビル(商品名:イナビル)があります。ラニナミビルはノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 ラニナミビル(商品名:イナビル)の作用機序
インフルエンザでは何日も高熱が続きます。さらに頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの症状が表れて鼻水、咳、のどの痛みも生じるようになります。

 

これらはインフルエンザウイルスによって引き起こされるため、病気を治療するためには体内に存在するウイルスを退治すれば良いことが分かります。そこで、薬を用います。

 

薬の作用機序を理解するため、ここではインフルエンザウイルスの増殖過程から話をしていきます。

 

ウイルスは他の細胞に寄生しなければ増殖できません。インフルエンザウイルスが体内に入った後、最初に細胞内へ吸着・侵入を行います。次に、インフルエンザウイルスはRNAと呼ばれる遺伝情報をもっており、これを細胞内へ放出します。この過程を脱殻(だっかく)と呼びます。

 

その後、インフルエンザウイルス由来の遺伝情報が細胞内に組み込まれ、ウイルスの遺伝子やタンパク質を合成するようにプログラムが変えられます。新たなウイルスが作成され、最後に細胞からウイルスが遊離することですべての工程が完了します。

 

 イナビル(ラニナミビル)の作用機序:抗インフルエンザ薬

 

この時、インフルエンザウイルスが細胞から遊離する過程を阻害すれば、ウイルスを細胞内に閉じ込めることができます。たとえウイルスが増殖していたとしても、これが外に出なければ新たな感染は起こりません。

 

インフルエンザウイルスの遊離にはノイラミニダーゼと呼ばれる酵素が重要になります。ノイラミニダーゼが作用することで、ウイルスが細胞外へ放出されるのです。そこでノイラミニダーゼを阻害すれば、インフルエンザウイルスの遊離が阻害されます。

 

このような考えにより、インフルエンザウイルスの放出に関わる酵素を阻害することによってインフルエンザを治療する薬がラニナミビル(商品名:イナビル)です。

 

 

 ラニナミビル(商品名:イナビル)の特徴
経口薬(口から服用する薬)ではなく、吸入薬として口から吸いこむことでインフルエンザによる感染症を治療する薬がラニナミビル(商品名:イナビル)です。インフルエンザウイルスは肺や気管支に感染しているため、パウダー状の薬を吸い込むことで、ウイルスが存在する肺・気管支に直接作用させるのです。

 

インフルエンザにはA型、B型、C型の3つの型があります。この中でも、ラニナミビル(商品名:イナビル)はA型とB型のインフルエンザに対して有効です。

 

ラニナミビル(商品名:イナビル)は、1回吸入するだけでインフルエンザの治療が完結します。これは、薬の成分が患部に長くとどまるという性質を有しているためです。薬の投与により、5日間程度は作用が続きます。

 

インフルエンザ発症後、48時間以内にラニナミビル(商品名:イナビル)を使用する必要があります。「ウイルスを閉じ込める」という作用であるため、体内でウイルスが増殖した後に薬を服用しても効果が薄いのです。そのため、48時間が経過した後に服用したときの有効性は確認されていません。

 

なお、1回吸入するだけの薬なので治療は簡単ですが、吸入に失敗すると後戻りできないというデメリットも備えています。そのため、吸入が難しい「認知症患者、小児、重症者」に対しては不向きの薬です。

 

このような特徴により、インフルエンザを発症してすぐに薬を吸入することでウイルス感染症を治療する薬がラニナミビル(商品名:イナビル)です。

 

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