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役に立つ薬の情報~専門薬学

ミグシス(ロメリジン)の作用機序:片頭痛予防薬

 

血液の拍動に伴ってズキンズキンと激しい頭痛が起こる症状を片頭痛といいます。激しい頭痛を生じるため、片頭痛によって吐き気や目のチカチカが起こり、さらには耳鳴り、しびれ、不眠を訴える人もいます。頭を動かすと頭痛が悪化するのが片頭痛の特徴です。

 

そこで、片頭痛の発作が起こらないように予防する薬としてミグシス(一般名:ロメリジン)があります。ミグシスはCa拮抗薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)の作用機序

 

片頭痛が起こる機序は不明ですが、いくつかの説があります。例えば、脳内でセロトニン(脳血管を収縮させる物質)が放出され、その後にセロトニンが分解されることで再び血管が拡張する「血管説」があります。

 

他にも、三叉神経と呼ばれる神経の末端から血管を拡張させる物質が放出され、これによって炎症が引き起こされる「三叉神経血管説」が知られています。

 

いずれにしても、片頭痛では急激な血管拡張によって脳内に炎症が起こり、頭痛を生じます。そこで、あらかじめ脳血管を拡張させておくことで、「脳血管の収縮」や「神経での炎症」などを抑えるようにすれば、片頭痛を予防できることが分かります。

 

血管が収縮するためには、カルシウム(Ca)の働きが重要です。血管壁からカルシウムが流入すると、これが合図となって血管が収縮するのです。そこで、血管にカルシウムが流入する過程を阻害することができれば、血管は拡張します。このような作用をする薬をカルシウム拮抗薬といいます。

 

拮抗には、「遮断する」などの意味があります。つまり、カルシウム拮抗薬は「カルシウムの働きを遮断する」ことを意味します。カルシウムを阻害することにより、血管拡張作用を得るのです。

 

頭痛でいえば、カルシウム拮抗薬を投与することで頭痛の前兆期に起こる血管の収縮を抑えることができます。また、神経に起こる炎症を和らげることもできます。

 

ミグシス(ロメリジン)の作用機序:片頭痛予防薬

 

このような考えにより、血管拡張作用によって片頭痛を予防する薬がミグシス(一般名:ロメリジン)です。

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)の特徴

 

片頭痛の発生を予防する薬であり、発作が起こったときに服用しても効果を得るのは難しいです。片頭痛の中でも、「頭痛の頻度が多い」「トリプタン製剤(片頭痛を強力に抑える薬)の効果が弱い」など、かなりの重症例に対してミグシス(一般名:ロメリジン)が使用されます。

 

片頭痛患者に対しては、ミグシスを使用することで「発作回数や頭痛の程度の軽減」「発作治療薬の減量」「片頭痛による前駆症状の改善」などの効果が示されています。

 

通常、カルシウム拮抗薬は高血圧の治療薬として用いられます。これは、全身の血管を拡張させることで、血圧を下げることができるからです。ただ、ミグシス(一般名:ロメリジン)は脳血管に対して選択的に作用して頭痛を予防するため、血圧を下げる働きは弱いです。

 

副作用の少ない薬ですが、主な副作用としては眠気、めまい、悪心などが知られています。

 

このような特徴により、頭痛の発作が起こる過程を抑えることで片頭痛を予防し、日々の生活をスムーズに送れるように支援する薬がミグシス(一般名:ロメリジン)です。

 

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)の効能効果・用法用量

 

実際にミグシス(一般名:ロメリジン)を使用するとき、ミグシス5mgを1日2回、朝食後と夕食後(または就寝前)に服用します。

 

このときは年齢や体重、症状などに応じて減量したり増量したりすることがあります。ただ、1日の合計投与量が20mgを超えないようにする必要があります。

 

食後での服用がどうしても難しい場合、食前や空腹時(食間)に飲んでも問題ありません。食事の影響をあまり受けにくい薬だからです。

 

ただ、飲み忘れなど次の服用時間が短い場合は1回分を飛ばします。飲み忘れのとき、次の服用まで何時間もあいている場合は気づいた時点で服用すれば問題ありません。

 

ミグシスを使用するとき、月に2回以上の片頭痛発作を引き起こしている人に用いられます。片頭痛の発作によって日常生活に支障が表れている人に有効です。

 

ただ、あくまでも予防薬であるため、ミグシス(一般名:ロメリジン)を服用することで片頭痛による痛みや吐き気などの症状を軽減できるわけではありません。片頭痛の発作が生じたとき、発作改善薬を活用することで痛みを軽減させるようにします。

 

長期服用しても問題ない薬ではありますが、頭痛発作の回数が少なくなったり消失したりした場合、薬の使用を中止するなど経過観察していきます。離脱症状のない薬なので、いきなり中止しても問題ありません。

 

なお、患者さんによっては一包化や半錠、粉砕などを行うことがあります。ミグシスは一包化や粉砕をして投与しても問題ない薬であり、簡易懸濁法による投与も大丈夫です。

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)の副作用

 

次に、副作用についてより詳しく確認していきます。ミグシス(一般名:ロメリジン)の主な副作用には肝機能異常(ALT上昇、AST上昇など)、眠気、めまい、悪心・嘔吐(吐き気)などが知られています。

 

その他、めまい、ふらつき、頭痛・頭重、動悸、悪寒(寒気)、浮腫(むくみ)、胸痛(胃痛)・腹痛、発熱、発汗、排尿障害、頻尿などがあります。消化器症状としては下痢・軟便、食欲不振、便秘、胃腸障害、口内炎などの副作用が存在します。

 

副作用に眠気があることから、自動車運転を含め危険作業を伴う場合は様子をみながら薬を使用していきます。

 

また、重大な副作用に抑うつがあります。うつ病のような症状が表れ、気分が優れなかったり倦怠感を覚えたりするようになります。こうした異常が表れた場合、投与を中止します。

 

うつ病を発症したことのある人については、ミグシス(一般名:ロメリジン)は慎重投与です。うつ病の症状が悪化、または再発する恐れがあるからです。

 

なお、ミグシスではないですが、同じようにカルシウム拮抗薬であり、頭痛に活用されていたフルナール(一般名:フルナリジン)という薬があります。この薬の副作用にはパーキンソン病のような症状を起こす作用(薬剤性パーキンソニズム)が知られています。

 

ミグシスの類似薬に重大な副作用としてパーキンソン病様症状があることから、ミグシスでも症状が表れないか十分な観察を行うようにされています。なお、フルナールについては、現在は販売中止になっています。

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)での禁忌や飲み合わせ(相互作用)

 

ミグシスには投与禁忌の患者さんがいます。まず、頭蓋内出血をしている人やその恐れがある人です。

 

脳内の血管を拡張させる作用があるため、ミグシスを服用すると脳の血流量が増加します。その結果、頭蓋内出血を悪化させる恐れがあります。

 

また、脳梗塞急性期の患者さんにも投与禁忌です。病巣部(脳梗塞が起こった場所)では血流量の低下を起こしていますが、脳血管が拡張されると「病巣部以外の場所」の血流が良くなります。その結果、相対的に病巣部の血流が悪くなるリスクがあります。

 

飲み合わせについては、高血圧治療薬と併用することで作用増強を起こすことがあります。

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)はカルシウム拮抗薬(血管拡張薬)であり、カルシウム拮抗薬は高血圧や狭心症の治療で活用されます。ミグシスにも血圧低下の作用が確認されているため、降圧剤の併用によって血圧低下作用による低血圧や脈拍の変化を生じることがあります。

 

ただ、その他の薬とは併用しても問題なく、風邪薬や抗生物質、ピル、睡眠薬などの薬との飲み合わせは問題ありません。

 

また、カルシウム拮抗薬ではグレープフルーツとの飲み合わせが問題になりやすいですが、ミグシスではグレープフルーツジュースを飲んでも大丈夫です。

 

アルコール(お酒)と一緒に服用することについては、推奨はされません。ただ、飲酒と共にミグシスを服用しても問題ないと一般的に考えられています。

 

高齢者への使用

 

高齢者にミグシスを使用することについては問題ありません。副作用の発現率についても、プラセボ(偽薬)を投与した群に比べて差がないことから、高齢者への使用であっても安全性の高い薬であることが分かっています。

 

ただ、高齢者では肝臓の機能低下を起こしている方がいます。ミグシス(一般名:ロメリジン)は肝臓での代謝を受けることで不活性化される薬であるため、肝機能が低下している人では薬の濃度が高まり、副作用を生じやすくなる恐れがあります。

 

小児(子供)への使用

 

小学生や中学生など、小児の片頭痛を予防するときに主に活用されるのはペリアクチン(一般名:シプロヘプタジン)トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)です。

 

もともと、ペリアクチンは抗ヒスタミン薬と呼ばれ、花粉症などアレルギーを抑える作用があります。ただ、ペリアクチンには抗ヒスタミン作用以外にも、抗セロトニン作用など脳内のさまざまな物質に働きかけることで頭痛を防止することができます。

 

また、トリプタノールは抗うつ薬として活用されますが、鎮痛剤としても作用があります。痛みは脳で感じますが、トリプタノールは「痛みを感じにくくさせる神経(下行性疼痛抑制系)」の働きを強めます。これにより、痛みを感じにくくなります。

 

しかし、ペリアクチン(一般名:シプロヘプタジン)やトリプタノール(一般名:アミトリプチリン)を服用しても小児の片頭痛を改善できないことがあります。そうしたとき、子どもに対してミグシスを用いることがあります。

 

小児の片頭痛にミグシスを最初に投与するのは一般的ではありません。ただ、他の病院で既に治療しているにも関わらず、頭痛をコントロールできない慢性頭痛と判断された場合、最初からミグシスが処方されることがあります。

 

妊婦・授乳婦への使用

 

妊娠中の方がミグシス(一般名:ロメリジン)を使用することについては、避けなければいけません。妊婦に対してミグシスは禁忌です。

 

ラットでの動物実験では、ミグシスを使用することによる催奇形性(骨格・外形異常)が確認されています。ヒトでは分かりませんが、これから妊娠する可能性のある人を含め、妊娠中の方はミグシスの服用を避けなければいけません。

 

一方で授乳中の方についてはどうなのでしょうか。授乳婦では「授乳を避けさせること」とされています。ただ、実際は授乳中にミグシスを服用しても問題ないことが分かっています。

 

片頭痛治療薬では「授乳を避けさせること」と添付文書に記載があるものの、授乳中でも問題ない薬がいくつもあります。そのうちの一つがミグシスであるため、赤ちゃんに対して母乳育児をしても問題ありません(参考文献:妊娠と授乳)。

 

 

ミグシス(一般名:ロメリジン)の効果発現時間

 

ミグシスを服用したとき、どれくらいの作用時間や効果発現時間なのでしょうか。ミグシス(一般名:ロメリジン)を服用した後、血中濃度(血液中の薬物濃度)が最高値に達するまで4.8時間かかります。また、半減期(薬の濃度が半分になる時間)は3.4時間です。

 

薬が定常状態(薬の作用が安定するまで)には10日ほどかかります。そのため、薬の投与を開始して10日ほど経過すれば、片頭痛の予防効果を安定して得られるようになります。ミグシスは予防薬であるため、即効性を期待するよりも1ヵ月など時間を置いて効果を確認すべき薬です。

 

前述の通り、ミグシスは頭痛発作の症状を軽減する薬ではなく、あくまでも予防薬なので頭痛のときに服用しても無効であることを認識しなければいけません。

 

頭痛の種類

 

片頭痛以外にも、頭痛には種類があります。そのため、どのような頭痛を治療したいのかによって使い分けなければいけません。

 

例えば、頭がギューっと締め付けられるように痛みものとして緊張型頭痛があります。肩こりや首こりが緊張型頭痛の原因となります。

 

緊張型頭痛の場合、脳血管を拡張させるミグシスを服用してもあまり効果がありません。そこで、肩こりに活用される筋弛緩剤のテルネリン(一般名:チザニジン)やミオナール(一般名:エペリゾン)が活用されます。

 

また、抗不安薬(精神安定剤)にも筋肉の緊張を取り去る働きがあり、デパス(一般名:エチゾラム)が用いられます。風邪薬として多用される葛根湯も肩こりに活用されるため、緊張型頭痛に利用することがあります。

 

他には、目の奥がえぐられるように痛くなる群発頭痛があります。群発頭痛の予防をするとき、ワソラン(一般名:ベラパミル)が活用されます。ワソランは狭心症や心臓病の薬であり、心臓に働きかけることで効果を発揮しますが、群発頭痛予防にも活用されます。

 

群発頭痛については、ステロイド剤であるプレドニン(一般名:プレドニゾロン)を活用して治療するとよく効くことが知られています。

 

片頭痛の予防薬

 

上記のような緊張型頭痛や群発頭痛ではなく、あくまでも片頭痛にミグシス(一般名:ロメリジン)が利用されます。このとき、片頭痛の予防薬はミグシス以外にも存在します。

 

過去では、他の片頭痛予防薬(ミグシス以外の薬)では適応外処方として片頭痛予防に用いられることがあったものの、現在では適応を取得している薬があります。

 

片頭痛予防薬としては、ミグシス以外に抗てんかん薬であるセレニカR・デパケン(一般名:バルプロ酸ナトリウム)が多用されます。脳の神経興奮を抑えることにより、片頭痛による発作を抑えます。

 

また、小児の項目で説明した通り、抗うつ薬であるトリプタノール(一般名:アミトリプチリン)も片頭痛予防に利用します。

 

他には、心拍数を抑えるインデラル(一般名:プロプラノロール)、血管が収縮する過程を抑えるミグリステン(一般名:ジメトチアジン)も頭痛予防に効果的です。

 

頭痛による痛みを緩和する薬

 

予防薬ではなく、頭痛の痛み自体を抑える薬も重要です。一般的な鎮痛剤としてはロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)、バファリン配合錠、カロナール(一般名:アセトアミノフェン)などがあります。

 

生理不順・生理痛などから生じる頭痛であれば、これらの鎮痛剤が効果的です。ただ、片頭痛の発作が起こった後にこれらの薬を使用してもあまり効果はありません。一般的な頭痛と片頭痛は別物です。

 

そこで、片頭痛にはトリプタン製剤と呼ばれる種類の薬が活用されます。トリプタン製剤であれば、発作が起こった後に服用しても片頭痛の症状を和らげることができます。

 

トリプタン製剤としてはイミグラン(一般名:スマトリプタン)、ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)、レルパックス(一般名:エレトリプタン)、マクサルト(一般名:リザトリプタン)、アマージ(一般名:ナラトリプタン)などがあります。

 

また、片頭痛発作を抑える薬としてはエルゴタミン製剤もあり、こうした薬にはクリアミンAがあります。クリアミンAには「エルゴタミン、カフェイン、イソプロピルアンチピリン」が含まれています。

 

トリプタン製剤やエルゴタミン製剤は発作時に頓服で使用するため、必然的にミグシスとは併用する形になります。

 

このように、ミグシス(一般名:ロメリジン)は片頭痛予防薬として多用されます。以前はミグシスという名称だけでなく、有効成分ロメリジンを含む薬として「テラナス」がありました。ただ、現在はテラナスが販売中止になり、ロメリジンを含む薬はミグシスだけになっています。

 

ミグシスにはジェネリック医薬品(後発医薬品)がないものの、片頭痛発作を予防するため、妊娠中の方以外であれば子供から高齢者まで使用できる薬です。

 

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