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ペグイントロン(ペグインターフェロン α-2b)の作用機序:慢性肝炎治療薬

 

肝臓に炎症がずっと起こっている状態が慢性肝炎です。炎症が続くことにより、肝硬変を発症して肝機能が落ちてしまい、さらに炎症が続くと肝がんにまで陥ってしまいます。

 

そこで、これら慢性肝炎を治療する薬としてペグインターフェロン α-2b(商品名:ペグイントロン)があります。ペグインターフェロン α-2bはインターフェロン製剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 ペグインターフェロン α-2b(商品名:ペグイントロン)の作用機序
慢性肝炎として有名な疾患にB型肝炎やC型肝炎があります。B型肝炎とC型肝炎の原因はウイルスであり、肝炎を引き起こすウイルスをそれぞれB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)と呼びます。

 

つまり、ウイルスによって起こるB型肝炎やC型肝炎を治療するには、原因となるウイルスを排除すれば良いことが分かります。そこで使用される薬がインターフェロンです。

 

ウイルスなどの病原微生物に感染した時、私たちの免疫はこれに対抗するために体温を上昇させたり、抗体を作ったりして対抗しようとします。この一連の反応の中で分泌されるタンパク質の1つがインターフェロンです。

 

インターフェロンはウイルスや細胞増殖を抑制し、免疫や炎症の働きを調節する作用が知られています。これを、医薬品として利用します。

 

インターフェロンは、細胞上に存在するインターフェロン受容体に結合します。これにより、細胞内でウイルスの増殖に必要な遺伝子を分解したり、ウイルス由来のタンパク質の合成を抑制したりします。

 

また、ウイルスに感染した細胞は細胞傷害性T細胞(キラーT細胞:CTL)によって破壊されます。正常細胞かウイルス感染細胞かについては、細胞上に存在する目印(専門用語でMHCクラスⅠと呼びます)を判断することで、ウイルスに感染している細胞であることを見極めます。

 

インターフェロンは「この細胞はウイルスに感染している」という目印を作る働きがあり、これによって、細胞傷害性T細胞によるウイルス感染細胞の破壊が進みます。これが、インターフェロンが抗ウイルス作用を示すメカニズムであると考えられています。

 

このインターフェロンを薬として利用したものに、ペグインターフェロン α-2b(商品名:ペグイントロン)があります。

 

 

 ペグインターフェロン α-2b(商品名:ペグイントロン)の特徴
インターフェロンはタンパク質の1つであり、すぐに壊されてしまいます。そのため、効果を表すためには注射によって、毎日または週3回投与しなければいけません。

 

そこで、インターフェロンにポリエチレングリコール(PEG)と呼ばれる高分子化合物を結合させ、インターフェロンの分解を抑えた薬がペグインターフェロンです。

 

 ペグインターフェロンの構造

 

インターフェロンは、主にα、β、γ型の3種類が知られています。この中でもα、β型が強い抗ウイルス作用を有しており、B型肝炎やC型肝炎の治療に用いられます。γ型は免疫を強める作用が強力である一方、抗ウイルス作用は弱いです。

 

そして、「インターフェロン α-2b」と呼ばれる物質に対して、ポリエチレングリコール(PEG)を結合させた薬がペグインターフェロン α-2b(商品名:ペグイントロン)です。これにより、体内でのインターフェロンの分解を遅らせることに成功し、週一回の投与を可能にしました。

 

なお、C型肝炎ウイルス(HCV)の排除にペグインターフェロンを使用するとき、リバビリン(商品名:レベトール、コペガス)と併用して用いられます。

 

つまり、「ペグインターフェロン+リバビリン」によって治療を開始します。2剤を併用することによる陰性化率(ウイルスが検査で陰性と判定される率)は47.6%であることが分かっています。

 

なお、インターフェロンは感染症を引き起こした時に分泌される物質であることから、副作用としては発熱や全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などが知られています。風邪の時の症状を思い浮かべれば分かりやすいです。

 

このような特徴により、ウイルス感染による慢性肝炎を治療する薬がペグインターフェロン α-2b(商品名:ペグイントロン)です。

 

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