ロペミン(ロペラミド)の作用機序:止瀉薬
通常、食物を排泄するときの便は固形状です。しかし、中には体調の悪化などによって水様性の便になることがあります。この状態を下痢といいます。
そこで、下痢を改善するために使用する薬としてロペラミド(商品名:ロペミン)があります。ロペラミドはオピオイド受容体刺激薬と呼ばれる種類の薬になります。
ロペラミド(商品名:ロペミン)の作用機序
食べ物は腸の中を通って肛門へと移動し、最終的には排泄されます。このとき、大腸では水分の吸収を行っています。食物に含まれる水分を体内へと取り込むのです。水分が体内へ取り込まれると、水分が抜けた分だけ便は固くなります。
下痢であると、大腸などでほとんど水分が吸収されないまま排泄されます。腸から便が積極的に排泄されると、水様便になるのです。
食物が素早く外に出されるために下痢になるため、これを改善するためには、腸への滞留時間を長くすれば良いことが分かります。食物が腸に留まっていると、大腸などで水分が吸収されていくため、便は固形化します。
私たちの腸には「腸管運動を抑制するためのスイッチ」が存在します。このスイッチを専門用語でオピオイド受容体といいます。そこで、薬によってオピオイド受容体を刺激すれば、腸の運動(蠕動運動)を抑制できます。これにより、水様便が解消されます。
このような考えにより、腸管運動の抑制に関わるスイッチを起動させることで腸内の滞留時間を延ばし、下痢症状を改善させる薬がロペラミド(商品名:ロペミン)です。
ロペラミド(商品名:ロペミン)の特徴
もともと、オピオイド受容体はモルヒネなどの麻薬が作用するための受容体(スイッチ)です。脳内に存在するオピオイド受容体を刺激することにより、モルヒネなどは鎮痛効果などを表します。
ただ、モルヒネの有名な副作用として便秘が知られています。これは、モルヒネが腸に存在するオピオイド受容体まで刺激するためです。オピオイド受容体の刺激によって腸の運動が抑えられた結果、食物は腸内に長くとどまるようになります。
モルヒネを服用すると食物がなかなか外に排泄されないため、便秘に陥ります。また、腸管に長くとどまることで食物の水分が抜けていき、便が固く小さくなります。便が小さくなると、便が動くことによる腸管への刺激が少なくなります。これがさらに便秘を悪化させます。
この作用を逆手に取り、下痢症状のときにオピオイド受容体を刺激することで腸の運動を止め、下痢を解消させようとするのです。
モルヒネなどとは違い、ロペラミド(商品名:ロペミン)は脳に作用しないと考えられています。これは、「私たちの体を巡る血液」と「脳内を巡る血液」の間には関所が設けられており、完全に分けられていることが関係しています。
脳はすべてをつかさどる司令塔の役割をしているため、厳重に守られています。血液でいうと、「脳を流れる血液」に入るためには関所を通る必要があるのです。
モルヒネはこの関所を通過できるが、ロペラミド(商品名:ロペミン)は関所をほとんど通過しません。言い換えれば、ロペラミドは脳内を巡る血液に入ることができません。モルヒネと同じ受容体を刺激するにもかかわらず、麻薬性の作用を示さないのはこのような理由があります。
※専門用語では、「ロペラミド(商品名:ロペミン)は血液脳関門をほとんど通過しない」と表現します。
ロペラミド(商品名:ロペミン)の性質
ロペラミド(商品名:ロペミン)の止瀉作用(下痢止めの作用)はモルヒネよりも強力であり、投与量を増やすことに伴って下痢を改善させる作用も強くなります。
ただし、あくまでも腸の運動を止めることで下痢を改善させる作用であるため、下痢を引き起こしている根本的な原因を治療するわけではありません。下痢の原因は食べすぎ・飲みすぎ、食中毒、過敏性腸症候群など多岐にわたります。これらの原因を取り除くことの方が本来は重要です。
なお、下痢の原因が食中毒(細菌性の下痢)である場合、ロペラミド(商品名:ロペミン)を使用してはいけません。病原菌を排泄するために下痢を起こしているため、下痢を止めてしまうと病原菌が体内に留まることで症状が悪化しやすくなるからです。
下痢といっても、薬を頼って良い場合とそうでない場合があります。下手に下痢止めを使用すると症状の悪化を招くこともあるため、病気の原因を見極めながら薬を使用しなければいけません。
このような特徴により、腸に対して作用することで強力な止瀉作用を示すものの、下痢を起こしている原因を確認しながら使用しなければいけない薬がロペラミド(商品名:ロペミン)です。
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