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役に立つ薬の情報~専門薬学

キネダック(エパルレスタット)の作用機序:糖尿病治療薬

 

糖は重要な栄養素の1つですが、量が多過ぎると毒性を示すようになります。

 

このような血糖値(血液中の糖分)が高くなってしまう病気として糖尿病があり、神経障害を引き起こすことでしびれや疼痛、心拍数の変動などを引き起こしてしまいます。

 

これら糖尿病による合併症を防ぐために使用される薬としてエパルレスタット(商品名:キネダック)があります。エパルレスタットはアルドース還元酵素阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 エパルレスタット(商品名:キネダック)の作用機序
糖尿病では血糖値が高くなっていますが、糖濃度が高いことが死に繋がるのではありません。糖尿病によって腎臓の機能が悪くなって透析が必要になったり、目が見えなくなって失明したりすることが恐ろしいのです。

 

つまり、糖尿病によって引き起こされる合併症が問題となります。この合併症として、腎機能悪化や失明以外にも「神経障害」があります。

 

神経は痛みなどの感覚を伝える器官であるため、神経が障害されることでしびれや疼痛を引き起こすようになります。また、発汗や血圧、心拍数の調節なども神経が行っているため、神経障害によって心拍変動の異常が見られることもあります。

 

そして、このような糖尿病性神経障害の原因として、ソルビトールと呼ばれる物質が大きく関わっています。神経細胞にソルビトールが蓄積すると、神経細胞の機能低下や血流低下などによって細胞機能が障害されてしまいます。

 

そのため、糖尿病による神経障害を治療するためには、神経細胞へのソルビトール蓄積を抑えれば良いことが分かります。

 

この時、糖尿病で重要となる糖は別名でグルコースとも呼ばれており、1956年にグルコースがソルビトールへと変換される経路が発見されています。この変換に関わる酵素としてアルドース還元酵素が知られています。

 

ただし、このソルビトールが生成される経路は通常の状態ではあまり活動していません。しかし、糖尿病を発症して血糖値が高くなると、アルドース還元酵素が活発にすることで「グルコース→ソルビトール」への変換が促進されます。その結果、神経障害が引き起こされます。

 

つまり、アルドース還元酵素を阻害すれば、ソルビトールの生成が抑制されるために神経障害を抑えられることが分かります。

 

 アルドース還元酵素阻害薬:キネダック(エパルレスタット)

 

このような作用機序によって糖尿病性神経障害を抑制する薬がエパルレスタット(商品名:キネダック)です。

 

 

 エパルレスタット(商品名:キネダック)の特徴
糖尿病性神経障害による自覚症状(しびれ感、疼痛)、振動覚異常、心拍変動異常などを改善する薬がエパルレスタット(商品名:キネダック)です。

 

エパルレスタットは合併症を予防する薬であり、血糖値を低下させる薬ではありません。そのため、食事内容の改善や運動の実施、そして他の糖尿病治療薬によって血糖値を下げ、糖尿病による合併症の進行を防止する対策を別に行う必要があります。

 

なお、エパルレスタット(商品名:キネダック)を投与することにより、尿が黄褐色や赤色になることがあります。ただし、この時の尿着色は血尿ではないために問題ありません。

 

このような特徴により、糖尿病による神経障害の症状を改善・抑制する薬がエパルレスタット(商品名:キネダック)です。

 

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