イスコチン(イソニアジド)の作用機序:抗結核薬
かつて国民病とまで呼ばれ、日本で多くの死者を出した感染症として結核が知られています。結核菌によって結核が起こり、せきや痰などの症状が表れます。症状が進行すると、呼吸困難によって死に至ります。
そこで、これら結核を治療するために使用される薬としてイソニアジド(商品名:イスコチン)があります。イソニアジドは抗結核薬と呼ばれる種類の薬になります。
イソニアジド(商品名:イスコチン)の作用機序
感染症は病原微生物によって起こります。結核も同様であり、結核菌が原因であることは既に述べました。そのため、結核を治療するためには、結核菌を殺せば良いことが分かります。そこで、抗菌薬が使用されます。
結核に対抗するための抗菌薬を抗結核薬といいます。抗結核薬の特徴としては、「結核菌を殺すものの、ヒトの細胞には大きな毒性を与えない」ことが挙げられます。これは、ヒトと結核菌を比べたときに大きな違いがあるからです。
ヒトの細胞は細胞膜で取り囲まれています。細胞膜があるからこそ、内と外を分けることができます。ただ、細菌の場合はさらに細胞壁と呼ばれる壁が存在します。細胞壁があることにより、細菌はその形を保つことができます。さらに、結核菌では他の細菌と異なり、特殊な細胞壁になっています。
結核菌の細胞壁には、ミコール酸と呼ばれる特有の脂質がたくさん含まれています。このミコール酸が含まれていることで、結核菌は消毒薬や乾燥に強いとされています。
そこで、ミコール酸を合成する過程を阻害することができれば、結核菌は正常な細胞壁を構築できなくなります。こうして、結核菌の増殖を抑制します。
このような考えにより、結核菌に存在するミコール酸という特殊な物質の働きを抑えることで、結核菌の働きを抑える薬がイソニアジド(商品名:イスコチン)です。ヒトには細胞壁が存在しないため、イソニアジドを投与しても細菌に作用するときのような細胞毒性は表れません。
イソニアジド(商品名:イスコチン)の特徴
古くから使用されており、結核菌の働きを強力に抑える薬がイソニアジド(商品名:イスコチン)です。ただ、この薬を単独で使用することはありません。
結核では、抗菌薬が効かない「耐性菌」の出現が大きな問題となっています。イソニアジド(商品名:イスコチン)も同様であり、この薬を単独で投与すると、イソニアジドに対して耐性をもつ結核菌がすぐに出現してしまいます。そこで、必ず他の抗結核薬と併用して治療します。
結核の場合、3剤の抗結核薬を一緒に服用します。こうして、耐性菌の出現を抑えながら病気の治療をしていきます。
結核の治療を行うときの最大のポイントは「抗結核薬を毎日服用してもらう」ことです。これが、治療効果を最大化させ、耐性菌の抑制に繋がります。
ただ、結核の治療では、薬の服用に対してルーズになりがちです。これは、結核の治療が最低でも6ヶ月かかるなど、長期に渡るからです。結核菌は増殖速度が遅いため、これだけ長く治療しなければいけません。
そこで、現在では外来などで抗結核薬を渡すのではなく、医療従事者が見ている前で薬を服用するDOTSと呼ばれる方法が広く採用されています。確実に薬を服用している姿を見届けることにより、結核の治療を確実に行えるようにするのです。
他の感染症とは異なり、結核の治療では上記のような注意点があります。抗結核薬の種類は多いとはいえないため、これらの注意点を守りながら最適な治療を行う必要があります。
このような特徴により、いくつかの抗結核薬を組み合わせることで結核を治療するが、その中の1つとして重要な薬がイソニアジド(商品名:イスコチン)です。
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