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メマリー(メマンチン)の作用機序:アルツハイマー型認知症治療薬

 

アルツハイマー型認知症の治療薬を考えるに当たり、「グルタミン酸仮説」という仮説に基づいた医薬品が使用されています。

 

このグルタミン酸仮説に基づいて作られた医薬品として、メマンチン(商品名:メマリー)があります。

 

メマンチンの作用機序としては、「NMDA受容体」という単語が瀕用されます。しかし、このような難しい単語は一切必要なく、一見するともの凄く難しそうな医薬品であっても誰でもその作用機序を理解することが出来ます。

 

 

 グルタミン酸仮説とは
グルタミン酸は脳内における興奮性のシグナル伝達物質であり、脳での記憶や学習に関わっています。

 

アルツハイマー型認知症の患者さんはどのような状態になっているかと言うと、脳に異常なタンパク質が生成されています。そして、この異常なタンパク質によってグルタミン酸が常に放出されている状態となっています。これによって、記憶が難しくなります。

 

また、グルタミン酸が過剰な状態であるとグルタミン酸放出に関わる細胞が死んでいきます。これによってアルツハイマー型認知症を発症すると考えられています。この仮説がグルタミン酸仮説です。

 

ただし、これだけの情報であれば疑問が残ります。グルタミン酸が記憶に関わっているのであれば、「グルタミン酸の放出が多くなることで、記憶が改善されるのではないか」と考えることができます。

 

しかし実際にはそうではなく、常にグルタミン酸が放出されていることに問題があります。常に放出されることで、記憶形成に必要なシグナルもマスクされてしまうのです。

 

 グルタミン酸によるシグナルノイズ

 

グルタミン酸が放出され続けることでシグナルのノイズが起こり、記憶や学習機能が障害されてしまいます。

 

そこで、グルタミン酸仮説によるアルツハイマー型認知症の治療薬としては、グルタミン酸受容体(NMDA型グルタミン酸受容体)を阻害する薬が使用されます。このような薬としてメマンチン(商品名:メマリー)があります。

 

 

 メマンチン(商品名:メマリー)の作用機序
メマンチンはグルタミン酸受容体を遮断することで、グルタミン酸の異常な入流を防ぎます。この結果、グルタミン酸濃度が常に高い状態を改善することで「シグナルであるCa2+の過剰流入による神経障害」や「シグナルノイズによる記憶・学習機能の障害」が改善されます。

 

なお、メマンチンはグルタミン酸受容体に対して弱い阻害作用を示します。これにより、グルタミン酸受容体の異常な活性化のみを防ぎ、記憶形成に必要な正常なシグナルのみを伝えることができるようになります。

 

 メマリー(メマンチン)の作用機序

 

より詳しく説明すれば、メマンチンは異常な受容体の活性化に対してのみ、その働きを抑制します。それに対し、正常なシグナル伝達のような強い条件下では、メマンチンは素早く受容体から解離します。なぜなら、前述の通りメマンチンはグルタミン酸受容体に対して弱い阻害作用を示すからです。

 

弱い受容体阻害作用のため、正常なシグナル伝達のような強い条件下では、薬は受容体から素早く解離してしまいます。グルタミン酸受容体を強く阻害すると、正常なシグナル伝達まで遮断してしまいます。

 

このように、弱いグルタミン酸受容体阻害作用を示すメマンチンでは、正常なシグナルまで影響を与えにくい点が特徴です。

 

これが、メマンチン(商品名:メマリー)がアルツハイマー型認知症の治療薬となる理由です。

 

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