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役に立つ薬の情報~専門薬学

物質輸送

 

 膜の会合
細胞膜は細胞自体に物質を取り込んだり、放出したりする作用がある。膜小胞が形質膜に融合して、中身を外に放出する働きをエキソサイトーシスという。また、形質膜が内側へ陥没して膜小胞を形成し、細胞外の物質を細胞内に取り込む働きをエンドサイトーシスという。

 

エキソサイトーシスで膜小胞が融合するとき、膜小胞の内側が形質膜の外側に来る。逆にエンドサイトーシスでは形質膜の外側が膜小胞の内側にくる。

 

 エキソサイトーシスとエンドサイトーシス

 

なお、白血球などが細菌やウイルスを食べる食作用はファゴサイトーシスといわれている。このファゴサイトーシスはエンドサイトーシスの一種である。

 

 ファゴサイトーシス

 

 シグナル仮説
合成されたタンパク質は必ず目的の場所に届けられないといけない(ミトコンドリア、核、細胞外など)。そのため、多くのタンパク質には特定の細胞小器官に届けるためにシグナル(荷札)をもっている。このシグナルは通常、特異的なアミノ酸配列でありこの配列を認識することでタンパク質を届ける。

 

下に特定の細胞小器官に届けるのに必要な配列または化合物を示す。(ERとは小胞体のことである)

 

 シグナル仮説

 

タンパク質がミトコンドリア内に入るためには、外膜と内膜の二つの膜を通らないといけない。このように2枚の膜を通ることを移行という。

 

ミトコンドリアの膜を通過するとき、タンパク質はほどけた状態になる。その後、ミトコンドリア内に入ったタンパク質は折りたたまれる。このとき、タンパク質の折りたたみを助けるタンパク質がシャペロンである。

 

シャペロンはタンパク質が正常に折りたたまれるように制御している。多くのシャペロンがATPase活性をもち、ATPのエネルギーを利用することで働く。

 

また、タンパク質を核に輸送するにはNLS(Nuclear Localization Signal:核局在シグナル)という「核にタンパク質を導くシグナル」が必要である。NLSシグナルをもつタンパク質が核に来ると、核に存在するNPCがNLSを認識してタンパク質が移行する。

 

このように、「細胞から分泌されたタンパク質は、それ自身を特定の細胞小器官の膜へ導き、膜を通るための固有のシグナルをもつ」という考えをシグナル仮説という。

 

つまり、シグナル仮説とは「タンパク質は特定の細胞小器官に認識され、その中に取り込まれるためのパスワードをもっている」ということである。タンパク質のアミノ酸配列の一部が宛先となっている。

 

 小胞体輸送
シグナル仮説としては、小胞体に宛先が書かれている小胞体輸送が有名である。タンパク質に小胞体に輸送されるようなアミノ酸の配列(シグナル配列)が書かれているのである。この小胞体輸送はタンパク質を細胞外や細胞質表面に輸送するときに使われる。

 

それでは、なぜ小胞体に輸送されなければならないのだろうか。それはミトコンドリアや核への輸送と違い、タンパク質が細胞膜を通過するのはとても難しいからである。

 

タンパク質は細胞膜を通るには大きすぎるのである。タンパク質よりも小さいイオンでさえ、細胞膜を通るにはそれなりの条件がいる。細胞膜にタンパク質が通れるくらいの穴が開いてしまうと、勝手にイオンが移動をはじめるため大変なことになる。

 

この問題を解決するために小胞体が利用される。

 

まずタンパク質を合成するリボソームは小胞体宛のシグナルを認識すると、小胞体の中にアミノ酸を注入してしまう。その後は小胞体の内部でタンパク質が合成される。

 

なお小胞体は泡みたいな器官であり、タンパク質が合成されるとその部分が切り離されて移動可能な状態になる。内部にタンパク質を含んだ小胞はゴルジ体に移動して融合する。つまり、小胞体から切り離された小胞はゴルジ体の中に取り込まれる。

 

ゴルジ体で最終的な修復を受けたタンパク質は再び切り離されて細胞膜へと向かう。「生体膜」で説明したように細胞膜などの脂質は流動性がある。これによって、エンドサイトーシス(細胞膜からの分裂)やエキソサイトーシス(細胞膜への融合)が可能となる。ここではエキソサイトーシスによってタンパク質が細胞外に放出されたり、膜にくっついたりする。

 

 小胞体輸送

 

次に「リボソームが小胞体宛のシグナルを認識し、小胞体の中にアミノ酸を注入する過程」をさらに詳しく説明する。

 

リボソームでタンパク質が合成され成長すると、リボソームからタンパク質が出てきてシグナル配列の部分が露出する。すると、そこにシグナル認識顆粒(SRP)が結合する。SRPがシグナル配列部分に結合することでタンパク質は小胞体にくっつくことができる。また、SRPが結合するとタンパク質の合成はSRPが小胞体にくっつくまで阻害される。

 

SRPはリボソームと合成途中のタンパク質を引き連れてくる。SRPが小胞体のSRP受容タンパク質にくっつくと共にリボソームも小胞体に結合し、タンパク質の合成が再開される。このとき、シグナル配列部分を小胞体のシグナル配列受容体に渡す。

 

ペプチドの成長によって小胞体の膜にタンパク質を通す穴(チャンネル)が開かれ、そこを通って小胞体の中にタンパク質が移行する。シグナル配列部分は小胞体内のシグナルペプチダーゼによって切断される。

 

その後もリボソームはペプチドを合成し、小胞体の中に入っていく。リボソームによるペプチドの合成が完了すると、リボソームは小胞体から離れていく。

 

 シグナル認識

 

 膜輸送
多くの荷電していない小さな分子は脂質二重膜を自由に通過できる。しかし、膜の内側は疎水性なのでアミノ酸などの荷電している分子は通れない。しかし、これらの分子は細胞にとって必要なため、どうにかして膜を通らなければならない。

 

まず膜輸送には物質の輸送にエネルギーを必要としない受動輸送と物質の輸送にエネルギーを必要とする能動輸送がある。さらに受動輸送は単純輸送促進拡散に分けることができる。

 

 受動輸送、能動輸送

 

単純輸送には脂質二重膜を通ることや、イオンチャンネルイオノホアの利用などがある。

 

膜にはNa、K、Ca2+、Clなどのイオンを通す穴があり、この穴をイオンチャンネルという。チャンネルは選択性がありナトリウムチャンネルはNaだけを通すなど、たいていは1種類のイオンを通過させる。

 

チャンネルにはゲート(門)の構造がありゲートが開くとイオンが流れ、閉じるとイオンの流れが止まる。ゲートの開閉は「特定の分子が受容体に結合してゲートを開ける」リガンド作動性チャンネルと「膜内外の膜電位によって制御している」電位作動性チャンネルがある。

 

イオノホアは周りが疎水性で中心が親水性という両親媒性の分子である。イオノホアは特定の分子(イオン)と結合して膜を通過させる。

 

促進輸送と能動輸送はトランスポーター(キャリアー)によって運ばれる。チャンネルは膜に穴が開いていたが、キャリアーは膜構造の変化によって物質を輸送する。それは下の図のように表現することができる。

 

なお、促進輸送は能動勾配に逆らうことはない。

 

   膜輸送の種類

 

単純拡散や促進輸送などの受動輸送は濃度勾配に従って輸送するためエネルギーは必要ないが、能動輸送は濃度勾配に逆らって輸送するのでエネルギーを必要とする。

 

濃度勾配とは「膜の内外でイオンの濃度差がある状態」である。例えばNaは膜の外の方が濃度が高く、Kは膜の内側の方が濃度が低い。

 

促進拡散や能動輸送などの輸送系には種類があり、一種類の物質を輸送する単輸送と二つ以上の物質を輸送する共役輸送がある。共役輸送の中でも物質同士が同じ方向に輸送される共輸送と逆方向に輸送される対抗輸送がある。

 

   膜輸送の種類

 

能動輸送の例を挙げるとナトリウムの輸送やグルコースの輸送がある。

 

能動輸送ではエネルギーを用いて3つのNaを細胞外に出し、2つのKを細胞内に取り込む。すると、膜の内外に濃度勾配が生まれる。

 

腸管細胞粘膜をグルコースが通過するとき、このNa 勾配を使用して粘膜を通過する。Naが単純拡散で濃度勾配に沿って細胞内に入るときにグルコースも一緒に粘膜を通過するのである。

 

   グルコースの輸送

 

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