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役に立つ薬の情報~専門薬学

生体膜

 

 生体膜の役割
生体膜は細胞内外を区別する役割があり、選択的透過性をもつ。細胞内にはKイオン、リン酸、タンパク質が、細胞外にはNaイオン、Caイオン、Clイオンが高濃度で存在する。

 

また、生体膜は特定の区域を形成する。これは、ミトコンドリアやリソソームなどの細胞小器官の機能の維持に不可欠である。この生体膜の働きによって特定の細胞小器官に特定の酵素を留まらせることができ、勝手に他へ移動することのないようにする。

 

このように特定の物質が特定の場所だけに存在することを「局在している」という。なお、局在はとても重要な要素である。

 

例としてリソソームを挙げる。リソソームは「細胞内外の生体高分子を加水分解酵素により消化する器官」である。

 

リソソームの内部のpHは5以下であるが、これはリソソーム内部の加水分解酵素が最もよく働く最適pHが酸性側にあるためである。Hがリソソーム内に局在していなければ、加水分解酵素がうまく働かないのである。

 

また、生体膜が存在してないためリソソーム内の加水分解酵素が局在していなければ、加水分解酵素が好き勝手に分解し始め、体が溶けていくことになってしまう。

 

このように生体膜はヒトにとって重要な役割をする。

 

 生体膜の構成
生体膜は脂質、タンパク質、糖質から構成される。そのうち、脂質成分のうちで主要なものはリン脂質、スフィンゴ糖脂質(グリコスフィンゴ脂質)、コレステロールである。

 

具体的には、グリセロリン脂質(リン脂質)にはホスフィチジルコリン、ホスフィチジルセリン、ホスフィチジルエタノールアミン、ホスフィチジル酸、ホスフィチジルイノシトールなどがある。

 

スフィンゴリン脂質(リン脂質)にはスフィンゴミエリン、スフィンゴ糖脂質にはガラクトシルセラミドがある。

 

なお、脂質には油に溶けやすい疎水性部分と水に溶けやすい親水性の両方の性質を持つ。これを両親媒性という。この性質のためにミセルや脂質二重膜を形成する。

 

 膜タンパク質
脂質二重膜にはタンパク質が存在し、このタンパク質を膜タンパク質という。膜タンパク質はリン脂質分子の海に浮かんでいる氷山のようなものである。タンパク質は埋め込まれたり、表面に結合したりしている。

 

リン脂質分子を海と表したように脂質二重膜はお互いに動くことができ、高い流動性をもつ。また、氷山と表現したタンパク質もリン脂質分子の中を自由に動くことができる。この膜構造を流動モザイクモデルといい、広く受け入れられている。

 

 流動モザイクモデル

 

また、脂質は横方向などの動きだけでなく垂直方向の動きもある。つまり、脂質二重膜の外側と内側で脂質が入れ替わるのである。この現象をフリップ・フロップという。

 

脂質は流動性をもつが、その中でも流動性の高い部分と低い部分がある。リン脂質の疎水性の部分にシス型の二重結合などがあると、周りの脂質との間隔が開いてしまうため流動性が高くなる。

 

この流動性の高さは温度にも作用される。脂質二重膜の疎水性部分は秩序正しく並んでいるが、温度が高くなると規則正しい配列から不規則な配列へと変化し、高い流動性を示すようになる。この流動性を示し始める温度を転移温度という。

 

つまり「転移温度より温度が低ければ流動性は低く、転移温度より高ければ流動性は高い」ということである。

 

 流動性の違いと転移温度

 

流動性はコレステロールによっても調節されている。転移温度よりも低い場合は、コレステロールは流動性を高める働きをする。反対に転移温度よりも高い場合は流動性を抑制する働きをする。

 

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