シンフロリックス(肺炎球菌ワクチン)
小児は抵抗力が弱いため、感染症に罹りやすいという特徴があります。その中でも、肺炎球菌による感染症が問題になることがあります。肺炎球菌によって髄膜炎を発症し、後遺症を残したり死に至ったりするケースがあるのです。
髄膜とは、脳や脊髄を保護するための膜です。髄液に細菌が侵入して増殖すると、髄膜炎が引き起こされます。こうして、発熱や項部硬直、意識障害などが引き起こされます。そこで、肺炎球菌を予防するために用いられるワクチンとしてシンフロリックスがあります。シンフロリックスは小児用のワクチンです。
細菌性髄膜炎とは
「細菌感染によって髄膜に炎症を生じた疾患」を総称して細菌性髄膜炎といいます。致死率が高い病気であり、後遺症を残す可能性も高いです。一般的に30~40%で後遺症が残り、7~10%の確率で死亡すると考えられています。
細菌性髄膜炎を発症する多くは小児です。そのため小児では、細菌性髄膜炎を引き起こす菌に対して免疫力を付けさせておき、病気の発症を予防することが重要です。特に2歳以下の小児では重症化しやすいため、ワクチンが重要な意味をもちます。
細菌性髄膜炎を引き起こす細菌としては、Hib(ヒブ)と肺炎球菌の2種類が多いです。ワクチンが普及する前であれば、細菌性髄膜炎の原因菌はHibで約6割、肺炎球菌で約2割でした。
※ワクチン普及前
そこで、Hibと肺炎球菌に対してワクチン接種を行えば、小児の細菌性髄膜炎を大幅に予防できることが分かります。そこで、肺炎球菌に対するワクチンとして開発された製剤がシンフロリックスです。
現在はたくさんの抗菌薬が開発されているものの、細菌性髄膜炎の治療は困難を極めます。また、抗菌薬が効かない耐性菌の出現もあり、肺炎球菌の治療が難しくなっています。そういう意味では、ワクチン接種によって最初から感染症を発症しないようにすることが重要です。
シンフロリックスの特徴
肺炎球菌には、さまざまな種類が存在します。同じ細菌ではあっても、異なる血清型(亜種)があるのです。その中でも、シンフロリックスは10価の肺炎球菌ワクチンであり、これは10種類の亜種に対応していることを意味します。
より詳しく言えば、肺炎球菌の中でも「血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、23F」を含んだワクチンがシンフロリックです。
同じように小児へ使用される肺炎球菌ワクチンとしては、プレベナー13が知られています。プレベナー13は13価の肺炎球菌ワクチンであり、13種類の肺炎球菌へ対応できます。
「肺炎球菌による小児の細菌性髄膜炎」を防ぐ場合、シンフロリックスやプレベナー13などを活用すれば、感染症の大幅な抑制が可能です。これらを有効に活用することで、感染症による死亡や後遺症を防ぐことができます。
なお、「高齢者の肺炎を予防するために投与される肺炎球菌ワクチン」と「小児の髄膜炎予防を目的に使用される肺炎球菌ワクチン」は別物です。成人用肺炎球菌ワクチンとしてニューモバックスが知られていますが、小児用肺炎球菌ワクチンのシンフロリックスとは用途が異なります。
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