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ザルティア(タダラフィル)の作用機序:前立腺肥大症治療薬

 

前立腺肥大症は男性で問題となる疾患です。生殖器官として重要な前立腺の細胞数が増えていき、肥大化してしまう病気が前立腺肥大症です。

 

そこで、前立腺肥大症を治療するために用いられる薬としてタダラフィル(商品名:ザルティア)があります。タダラフィルはホスホジエステラーゼ-5(PDE5)阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 タダラフィル(商品名:ザルティア)の作用機序
前立腺は男性にのみ存在する臓器であり、尿道の周りを取り囲むように存在しています。前立腺は年齢と共に大きくなり、前立腺の肥大化に伴って尿道が圧迫されてしまいます。これによって「尿のキレが悪い」「残尿感がある」などの症状が表れます。

 

これを治療するためには、前立腺の筋肉の緊張をほぐすという方法が行われます。筋肉を弛緩させることにより、尿の通りを改善させるのです。

 

私たちの体内には、筋肉を弛緩させるための機構が存在します。これには一酸化窒素(NO)が関与しています。一酸化窒素は気体ですが、生体内では「筋肉の弛緩」という役割を担っているのです。

 

一酸化窒素(NO)が作用すると、「筋肉を弛緩させる物質」が作られるようになります。「筋肉を弛緩させる物質」を専門用語でcGMPと呼びます。この「筋肉を弛緩させる物質(cGMP)」は酵素によって代謝され、その作用を失っていきます。この酵素をホスホジエステラーゼ-5(PDE5)と呼びます。

 

そこで、ホスホジエステラーゼ-5(PDE5)を阻害すれば、「筋肉を弛緩させる物質(cGMP)」が代謝・不活性化されなくなります。その結果、筋肉を弛緩させる作用が強くなります。尿道に存在するホスホジエステラーゼ-5(PDE5)を阻害することによって、尿道の筋肉を緩めるのです。

 

 ザルティア(タダラフィル)の作用機序:ホスホジエステラーゼ-5(PDE5)阻害薬

 

このような考えにより、前立腺の筋肉を弛緩させることによって尿道の通りを改善させ、前立腺肥大症に伴う排尿障害を治療する薬がタダラフィル(商品名:ザルティア)です。

 

 

 タダラフィル(商品名:ザルティア)の特徴
もともとはEDの治療薬として利用されていた成分を、前立腺肥大症の治療薬として応用した薬がタダラフィル(商品名:ザルティア)です。有効成分は同じですが、使い方によっては異なる病気の治療薬になります。

 

血管の筋肉(血管平滑筋)を弛緩させると、陰茎の血流を改善させることでED治療薬になります。一方、尿道の筋肉を弛緩させると前立腺肥大症の治療薬になるということです。

 

1日1回の投与によって、タダラフィル(商品名:ザルティア)は前立腺肥大による排尿障害や蓄尿障害などの症状を改善させたことが分かっています。1年という長期投与によっても、タダラフィルは排尿障害の症状を有意に改善しています。

 

このような特徴により、ED治療薬として使用されていた薬を前立腺肥大症の治療薬として応用した薬がタダラフィル(商品名:ザルティア)です。

 

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