イグザレルト（リバーロキサバン）の作用機序：抗凝固薬
血の塊である血栓が生成され、この血栓が脳の血管を詰まらせると脳卒中を引き起こします。そのため、血栓の生成を防止することはとても重要になります。
これを行うために、いわゆる血液をサラサラにする薬が使用されます。血液が固まる過程を阻害することによって、血栓の生成を予防するのです。
このような種類の薬として抗凝固薬と呼ばれる医薬品があり、この抗凝固薬の1つとしてリバーロキサバン（商品名：イグザレルト）があります。抗凝固薬の中でも、リバーロキサバンは第Ⅹa因子阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。
抗凝固薬と心房細動の関係
抗凝固薬として長年使われてきた薬としてワルファリン（商品名：ワーファリン）があります。しかし、ワルファリンが発売されて以来、長年抗凝固薬として新しい薬が発売されてきませんでした。
ただ、2011年にワルファリン以来50年振りに発売された抗凝固薬としてダビガトラン（商品名：プラザキサ）があります。いずれも血液が固まる過程を阻害することで血栓の生成を抑制し、脳卒中を予防することができます。
その中でも、脳卒中の予防に使用できる経口薬として国内3番目に登場した薬がリバーロキサバン（商品名：イグザレルト）です。1日に1錠を1回だけ服用することで血栓の生成を予防できる抗凝固薬です。抗凝固薬は「心房細動による血栓の生成」を予防します。
心房細動は不整脈の一種であり、心臓が小刻みに震えている状態となります。つまり、心臓の拍動が上手くいかずに、血流が滞ってしまいます。このように血液の流れが悪くなっていると、大きな血栓が生成されやすくなってしまいます。
不整脈の中でも、心房細動自体は致死的な病気ではありません。ただし、心房細動によって生成される血栓が脳の血管を詰まらせると、脳卒中として致命傷となります。そこで、心房細動による血栓の生成を予防するために抗凝固薬が使用されます。
第Ⅹa因子阻害薬の作用機序
血液が固まる過程において、フィブリンと呼ばれる物質が重要になります。このフィブリンが血液の凝固に関わっているからです。そのため、このフィブリンの働きを抑えることができれば、血液が固まる過程も抑制できることが分かります。
フィブリンが固まるまでには凝固因子と呼ばれる物質が複雑に関与しています。この凝固因子はローマ数字を取って第Ⅳ因子や第Ⅹ因子などと表現されます。
とても複雑そうな図ですが、これら凝固因子の関わりを理解する必要はありません。重要なのは、これらローマ数字で表された凝固因子の中でも「最終的には全て第Ⅹ因子に行き着く」という事が分かれば問題ありません。
つまり、第Ⅹ因子の働きを抑えることができれば、それより下の反応も抑えることができます。その結果、フィブリンの生成が抑えられて血液が固まりにくくなります。
具体的には、第Ⅹ因子が活性化した形である第Ⅹa因子を阻害します。これによって、血液を固まりにくくします。
このように、第Ⅹa因子を阻害することによってフィブリンの生成を抑制し、結果として血栓の生成を予防する薬がリバーロキサバン（商品名：イグザレルト）です。
なお、1つの第Ⅹa因子から1000分子ものトロンビンが作られるといわれています。
リバーロキサバン（商品名：イグザレルト）の特徴
同じ抗凝固薬としてダビガトラン（商品名：プラザキサ）がありますが、ダビガトランは第Ⅹa因子よりも下流に存在するトロンビンの作用を阻害します。そのため、第Ⅹa因子を阻害する薬はトロンビン阻害薬よりも強力かつ効率的に血液凝固反応を抑制できると考えられています。
また、ダビガトラン（商品名：プラザキサ）は湿気に弱いために一包化や粉砕（脱カプセル）ができない医薬品です。一方でリバーロキサバン（商品名：イグザレルト）であれば、一包化が可能です。粉砕については、血中濃度が急激に上がるので推奨されていません。
血液凝固を阻害する薬であるため、重篤な副作用としては出血が知られています。頭蓋内出血、脳出血、出血性卒中など命に関わることもあります。
主な副作用も出血であり、鼻出血、皮下出血、歯肉出血、血尿、結膜出血などが知られています。
なお、一般的な医薬品は外国人のデータを活用しながら臨床試験を実施しますが、リバーロキサバン（商品名：イグザレルト）は日本人独自で行うことによって、日本人に適した用法用量で承認を取っているという特徴があります。
このような性質により、他の抗凝固薬とは異なる働きを示し、日本人だけで臨床試験を行うことでより副作用を軽減しながら効果的な作用を発揮するように調節した薬がリバーロキサバン（商品名：イグザレルト）です。
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