エフィエント(プラスグレル)の作用機序:抗血小板薬
出血したとき、血液が固まることはとても重要です。血が固まることで、ようやく傷の修復などを行うことができるようになります。
しかし、血の塊が血管内で作られてしまうと、この塊が血管を詰まらせてしまうことがあります。血管内に作られる血の塊を血栓と呼び、血栓の生成が脳の血管を詰まらせると脳梗塞などを引き起こすようになります。
そこで、これら血栓による病気の発症を防ぐために使用される薬としてプラスグレル(商品名:エフィエント)があります。プラスグレルはADP受容体阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。
抗血小板薬の意義
出血時に血液が固まるとき、血小板が大きな役割を果たします。ただ、血液の中で血小板が固まってしまうと、前述のとおり血栓が作られてしまいます。これを血小板血栓と呼びます。血栓による病気を防ぐためには、血小板が固まる過程を防ぐことで、血小板血栓の生成を抑えなければいけません。
特に、動脈が固くなってしまう「動脈硬化」を発症すると、血小板血栓が作られやすくなります。動脈硬化では、脂質が血管壁に沈着してしまいます。これをプラークと呼びます。
プラークが形成されると、その部分が傷つきやすくなるために出血しやすくなります。これが、血栓の生成に繋がってしまいます。
なお、動脈硬化という言葉から分かる通り、これらの症状は主に動脈で起こります。血小板血栓は血液の流れが速い動脈で生成されやすい血栓であり、動脈硬化を発症している人は特に注意が必要です。
動脈硬化は脂質異常症(高脂血症)の方で起こりやすいです。脂質異常症の方は抗血小板薬を併用することがありますが、これには「血小板血栓の生成を防止する」という意味があるのです。
このような考えにより、動脈硬化などによって起こる血小板血栓の生成を防止し、脳梗塞などの血栓症を予防する薬がプラスグレル(商品名:エフィエント)です。
プラスグレル(商品名:エフィエント)の作用機序
抗血小板薬であるプラスグレル(商品名:エフィエント)の作用メカニズムはとても難しいです。そこで、今回はかなり単純化させて説明を行います。
私たちの体内には、「血小板の凝集抑制」に関わる物質が存在します。これをcAMPと呼びます。血小板凝集(血液が固まる過程)を抑制するので、言い換えれば血液を固まりにくくするということです。世間での言葉では、血液をサラサラにする作用です。
つまり、cAMPの量を増やせば、血液サラサラ作用を得ることができるようになります。cAMPは酵素によって新たに作られますが、この酵素をアデニル酸シクラーゼ(AC)と呼びます。アデニル酸シクラーゼが活発に働けば、その分だけcAMPが作られ、血液が固まりにくくなります。
ただ、私たちの体内にはアデニル酸シクラーゼの働きを抑制する受容体が存在します。これをADP受容体と呼びます。プラスグレル(商品名:エフィエント)はADP受容体を阻害する作用があり、これによってcAMPの生成に関わる酵素の働きが強くなり、結果として血液サラサラ作用を得るようになります。
このような考えによって、抗血小板凝集作用(血液を固まりにくくする作用:血液サラサラ作用)を示す薬がプラスグレル(商品名:エフィエント)です。
プラスグレル(商品名:エフィエント)の特徴
抗血小板薬の中でも、プラスグレル(商品名:エフィエント)の一番の特徴としては、個人間でのバラつきが少ないという点が挙げられます。
同じ作用機序を有する抗血小板薬にクロピドグレル(商品名:プラビックス)が知られています。ただ、クロピドグレルは代謝酵素(専門用語ではCYP2C19による遺伝子多型)の関係で個体差を生じることが問題になっています。
一方、プラスグレル(商品名:エフィエント)はクロピドグレル(商品名:プラビックス)で問題となっていた、代謝酵素によるバラつきが少ない薬であると考えられています。同じ作用機序を示すクロピドグレルなどの薬に比べ、早期から効果を示すことも知られています。
このような特徴により、血液を固まりにくくする物質(cAMP)の量を増やすことで血液をサラサラにし、血栓の生成を防止する薬がプラスグレル(商品名:エフィエント)です。
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