ラジカット(エダラボン)の作用機序:脳保護薬
細胞に障害をもたらす存在として、フリーラジカルが知られています。特に脳梗塞を発症して虚血(血液が足りない状態)に陥ったときや血流が再開したとき、フリーラジカルが増加することが分かっています。
このときのフリーラジカルが脳細胞に障害をもたらすため、これを消去しなければいけません。そのために使用される薬として、エダラボン(商品名:ラジカット)があります。エダラボンは脳保護薬(フリーラジカルスカベンジャー)と呼ばれます。
エダラボン(商品名:ラジカット)の作用機序
脳細胞は一度死んでしまうと、元通りに戻ることができません。皮膚や肝臓など、他の細胞のように「傷ついたときに細胞分裂して修復される」ことはないのです。
そのため、脳の血管が詰まることで血流が途絶えるのは命に関わります。ただ、血液が滞って数時間以内であれば、血流を再開させることで脳へのダメージを最小限に抑えることができます。しかし、血流が少なくなると、脳細胞へダメージを与えるフリーラジカルが大量に作られます。
フリーラジカルとは、簡単に考えると「酸化剤」と認識してください。酸化剤は、自身に触れた相手を酸化させる性質があります。つまり、脳細胞や神経細胞を酸化させて大きなストレスを与えるのです。
そこで、抗酸化剤をあらかじめ投与しておきます。抗酸化剤とは、言い換えれば「酸化されやすい物質」のことを指します。栄養でいえば、ビタミンCなどは抗酸化剤として多用されます。
抗酸化剤があると、フリーラジカルは真っ先に抗酸化剤を酸化させようとします。そのため、抗酸化剤を先に体内に取り込んでおけば、たとえフリーラジカルが大量にあったとしても、細胞が傷害されずに抗酸化剤が身代わりとなってくれます。
そこで開発された薬がエダラボン(商品名:ラジカット)です。エダラボンは抗酸化剤であり、フリーラジカルを強力に捕捉する作用があります。
これにより、虚血状態に陥ることでダメージを負った脳血管や脳細胞から発せられるフリーラジカルの影響を最小限に食い止めます。その結果、脳梗塞による症状の増悪を防ぐことができます。
このような考えにより、脳への血流が減ることによって作られるフリーラジカルを消去し、結果として脳細胞を保護する薬がエダラボン(商品名:ラジカット)です。
エダラボン(商品名:ラジカット)の特徴
実際にエダラボン(商品名:ラジカット)を使用するときは、24時間以内に投与します。これにより、神経症候(神経系の病変による症状)や日常生活動作障害、機能障害の改善が確認されています。
また、投与期間は14日までとします。急性期の脳梗塞が安定したあと、副次的に生じるフリーラジカルを捕捉するために投与を続けるのです。
主な副作用としては、発疹が確認されています。また、重篤な腎障害(急性腎不全、ネフローゼ症候群)が認められているため、腎機能低下などが確認された場合は投与を中止して適切な処置を行う必要があります。
なお、エダラボン(商品名:ラジカット)は脳梗塞を生じた後の脳保護だけでなく、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬としても用いられます。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は筋肉が萎縮したり筋力低下を起こしたりして、力が入らなくなっていく難病です。運動に関わる神経が侵されることで、運動機能が障害されていきます。
そこでエダラボン(商品名:ラジカット)を筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に使用すると、病気の進行を軽減させることが確認されています。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症や進行にはフリーラジカルの関与が示唆されているため、エダラボンが神経細胞の障害を抑制したのではと考えられています。
このような特徴により、脳梗塞後の脳保護や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行抑制の目的で使用されるラジカル捕捉剤がエダラボン(商品名:ラジカット)です。
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