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ダソトラリンの作用機序:ADHD治療薬

 

小児(子供)に多い疾患としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があります。いわゆる落ち着きのない子どもがADHDであり、「不注意(集中力が続かない)」「多動性(じっとしていられない)」「衝動性(攻撃性、思わず動いてしまう)」などの症状が表れます。

 

子供だけでなく、成人(大人)であってもADHDの症状に悩まされる人は多いです。いわゆる発達障害の一種ですが、アスペルガー症候群とは別の疾患です。

 

そこで、ADHDを治療するために用いられる薬としてダソトラリンがあります。ダソトラリンはDNRI(ドパミン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれる種類の薬です。

 

ダソトラリンの作用機序

 

育児に悩む親は多いですが、特に子供の注意力が散漫であったり、攻撃性があってすぐにケンカしてしまったりすることに悩むことがあります。ただ、こうした症状がADHDによるものであれば、それは病気であるので子育ての方法が悪いからではありません。

 

ADHDの有病率は高く、精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)では「小児(子供)の有病率は5%」とされています。クラス40人であると、一つのクラスに1~2人はADHDの子供がいることになります。ちなみに、大人での有病率は2.5%とされています。

 

それでは、なぜADHDの症状が起こるのかというと、これには神経伝達物質が関与しています。

 

例えば、うつ病では意欲に関わる「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質の量が少なくなっています。これと同じように、ADHDでは脳内の神経伝達物質に異常が起こっています。

 

ADHDの場合、ドパミンやノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質の量が少なくなっているために集中力が続かなかったり、じっとしていられなかったりします。そこで、脳内のドパミンやノルアドレナリンの量を増加できれば、ADHDの症状を軽減できます。

 

ドパミンやノルアドレナリンが細胞の外に放出された後、再び細胞内へ取り込まれます。これを「再取り込み」といいますが、細胞内に取り込まれてしまうと神経伝達物質は働くことができません。

 

そこで、ドパミンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害すれば、結果として細胞外で働く神経伝達物質の量を増やすことができます。これにより、神経細胞同士の情報伝達がスムーズになります。

 

 

ドパミン、ノルアドレナリンの再取り込みでは、専用の輸送体(トランスポーター)が関与してます。そこでダソトラリンはトランスポーターを阻害することによって脳内の神経伝達物質の量を増やすように作用します。

 

このような作用機序により、ADHDの症状を改善させる薬がダソトラリンです。

 

 

ダソトラリンの特徴

 

ADHD治療薬にはいくつか種類があります。中枢刺激薬と呼ばれる種類の薬にはコンサータ(一般名:メチルフェニデート)、ビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)などが知られています。

 

また、覚せい作用のない薬としてストラテラ(一般名:アトモキセチン)、インチュニブ(一般名:グアンファシン)なども活用されます。こうした薬の中でも、ダソトラリンは覚せい作用のない薬です。

 

コンサータ(一般名:メチルフェニデート)などの薬は薬物乱用傾向(耐性、依存)などが問題になりやすいです。そこで臨床試験によってダソトラリンと比べた結果、ダソトラリンでは有意に依存性や耐性などの薬物嗜好性が少ないことが分かっています。

 

また、1日1回の服用によって24時間効果が持続する薬です。そのため、例えば子供が服用するとき、朝や夕方の家に帰ったときに薬を服用すれば問題なく、昼など給食のときに周りの目を気にしながら薬を服用する必要はありません。

 

他にもダソトラリンは摂食障害の治療薬としても期待されています。一度にたくさんの食事をとる過食性障害(BED)に対して、ダソトラリンによる良好な結果が得られています。

 

このような特徴により、ドパミンとノルアドレナリンの作用を強めることによって精神症状を改善させる薬がダソトラリンです。

 

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