レグテクト(アカンプロサート)の作用機序:アルコール依存症治療薬
大量のお酒を飲み続けることにより、次第にお酒なしではいられなくなってしまう病気としてアルコール依存症があります。お酒がないとイライラしてきたり、気分が晴れなかったりします。
このようなアルコール依存症になって症状が進行すると、お酒を止めようとしても手の震えや幻覚などの離脱症状まで表れるようになってしまいます。ここまで来ると、自分の意思だけでアルコール依存症を治療するのが困難になります。
そこで、これらアルコール依存症の治療に薬が使用されることもあります。これらアルコール依存症を治療する薬の中でも、「お酒を飲みたい!」という気持ちを抑える薬としてアカンプロサート(商品名:レグテクト)があります。
アルコール依存症治療薬の種類
レグテクトが承認される以前では、アルコール依存症治療薬として抗酒薬(嫌酒薬)と呼ばれる種類の薬が使用されていました。
アルコールは肝臓の代謝酵素によってアセトアルデヒドまで分解されます。さらに、このアセトアルデヒドが分解されることによって酢酸へと代謝され、体外へと排泄されます。
この時、「アルコール → アセトアルデヒド」の過程で生成されるアセトアルデヒドが悪酔いの原因となります。そこで、アルコール依存症の治療薬として、このアセトアルデヒドを蓄積させるように働く薬が使用されてきました。この作用をする薬が抗酒薬(嫌酒薬)です。
このような抗酒薬としてシアナマイド(商品名:シアナミド)、ジスルフィラム(商品名:ノックビン)などがあります。
抗酒薬を服用している時にお酒を飲むと、アセトアルデヒドが物凄い勢いで蓄積されていきます。その結果、数時間は地獄を見ることになります。そのため、抗酒薬を服用している間は怖くてアルコールの摂取をためらうようにさせることができます。
ただし、抗酒薬はただ単にアセトアルデヒドの蓄積を促す薬であり、飲酒欲求を抑える薬ではありません。そのため、適切に服用しようとしない人がかなりいます。
そこで、飲酒欲求を抑えることによってアルコール依存症を治療する薬としてアカンプロサート(商品名:レグテクト)が登場しました。
レグテクトの作用機序
お酒をたくさん飲むと酔っ払いますが、これは脳の機能が抑えられているために起こります。脳機能が低下するため、フラフラしたり眠くなったりするのです。
私たちの脳内で働く神経伝達物質として、「脳の興奮に関わる物質」と「脳の抑制に関わる物質」の2つがあります。
この中でも、前者の脳の興奮に関わる神経伝達物質として記憶や学習に関与するグルタミン酸があります。また、後者の脳の抑制に関わる神経伝達物質としてGABAと呼ばれる物質が関与しています。
アルコールを大量に摂取すると、脳の興奮に関わるグルタミン酸の作用が弱まり、その反対に脳の抑制に関わるGABAの作用が強くなります。その結果、脳の機能が抑制されていきます。これが酔っ払う時のメカニズムと考えられています。
長期間大量にお酒を飲み続けていると、脳内が常に酔っ払いの状態に維持されるようになります。つまり、上の右図のようにグルタミン酸の作用が弱まり、GABAの作用が強くなっているのです。
これでは脳機能が正常に働かないため、このバランスを保つために脳の興奮に関わるグルタミン酸の作用を強くさせるようにします。つまり、アルコール依存症患者では正常な人に比べて、脳内のグルタミン酸が多くなってしまうのです。
この結果、お酒がないとグルタミン酸が過剰になっている状態になってしまいます。
アルコール依存症では脳の興奮に関わるグルタミン酸が過剰に存在しているため、脳内のバランスを保とうとするためにお酒を欲するようになります。これが強い飲酒欲求を起こさせるメカニズムと考えられています。
そこで、アルコール依存症患者で過剰となっているグルタミン酸に関わる神経興奮を抑えることが出来れば、元の正常な状態に戻せることが分かります。
このように、グルタミン酸が関与する興奮性神経の働きを抑制することによって神経間のバランスを調節し、アルコール依存症を治療する薬がアカンプロサート(商品名:レグテクト)です。
この作用によって、アルコール依存症での「お酒を飲みたい!」という気持ちを抑えることができます。
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