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ゼルヤンツ(トファシチニブ)の作用機序:関節リウマチ治療薬

 

関節に炎症が起こることによって関節破壊が進行し、運動障害を引き起こしてしまう病気として関節リウマチがあります。関節リウマチは自己免疫疾患の1つであり、免疫の働きに異常が起こっています。

 

このような病気の治療に用いられる薬としてトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)があります。トファシチニブは分子標的薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)の作用機序
関節リウマチでは関節の中でも、滑膜に炎症が起こっています。滑膜での炎症がずっと続いてしまうと、滑膜が増殖し始めます。これが続くと関節全体に炎症が広がるようになり、骨や軟骨が壊されていきます。その結果として関節が破壊されていき、運動障害が引き起こされるようになります。

 

これらの炎症反応は免疫の作用によって起こります。免疫は細菌などの異物を退治するために必要ですが、自分自身を異物と認識して攻撃を始めることがあります。この状態が自己免疫疾患であり、関節の滑膜を攻撃するようになると関節リウマチを発症します。

 

炎症が起こるためには、「炎症に関わるシグナル」が作用しなければいけません。つまり、炎症を引き起こすシグナルが作用できなくなれば、関節リウマチによる炎症も起こらなくなります。

 

トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)はまさに炎症が関わるシグナルの伝達を遮断することにより、炎症を鎮める働きをします。

 

このような炎症を引き起こすシグナルとして、インターロイキン(IL)が知られています。その中でも、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素がインターロイキンによるシグナル伝達に関与しています。

 

特にヤヌスキナーゼ(JAK)はインターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン7(IL-7)など多くのシグナル伝達に関わっています。

 

これらのインターロイキンは免疫細胞の活性化に必須であるため、このシグナル系を抑えることで様々な免疫反応を抑制できることが分かります。また、炎症が引き起こされるためのシグナルが遮断されるため、炎症反応を抑制することも可能です。

 

 ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬:ゼルヤンツ(トファシチニブ)の作用機序

 

つまり、ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害することによって免疫の活性化を抑え、炎症を鎮めることができます。トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)はヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用があり、これによって関節リウマチを治療することができます。

 

 

 トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)の特徴
関節リウマチ治療薬の中でも、世界初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬がトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)です。「炎症に関わる細胞内のシグナル伝達を阻害する」という新規の作用機序を有しています。

 

トファシチニブは低分子医薬品であるため、生物学的製剤とは異なり経口投与が可能です。

 

抗体医薬品である生物学的製剤は注射による投与であり、抗体医薬品に対する新たな抗体(中和抗体)が作られることで、薬の効果が弱くなることがあります。これを二次無効と呼びますが、低分子医薬品であればこれらの問題を回避することができます。

 

ただし、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)の副作用として結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が報告されているため、薬の使用に関しては慎重にならなければいけません。

 

関節リウマチを完治させるわけではないため、治療による有益性が優ると判断された場合にのみ薬を使用します。このような特徴を有することで関節リウマチを治療する分子標的薬がトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)です。

 

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