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役に立つ薬の情報~専門薬学

プログラフ、グラセプター(タクロリムス)の作用機序:免疫抑制剤

 

臓器移植後の拒絶反応や自己免疫疾患など、これらの病気には免疫が大きく関わっています。そこで、これらの症状を抑えるためには免疫の働きを弱める必要があります。

 

そこで使用される薬がとしてタクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)があります。タクロリムスは免疫抑制剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 タクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)の作用機序
感染症から回復するためには免疫の働きが重要になります。細菌やウイルスなどの異物を敵と認識し、免疫が攻撃を仕掛けることによってようやく感染症から回復することができます。

 

この時に起こる反応が炎症であり、病原微生物から身を守るために炎症は重要な役割を果たします。しかし、この炎症が行き過ぎてしまうと体に害を与えるようになります。

 

例えば、臓器移植を行うときは他人の臓器を体の中に入れることになります。そこで体の免疫系が移植された他人の臓器を異物と認識してしまい、攻撃を始めます。これがいわゆる拒絶反応です。

 

また、何らかの原因によって免疫系が自分自身の臓器を攻撃するようになることがあります。これを自己免疫疾患と呼び、体のあらゆる部分で炎症が起こるようになります。

 

例えば、関節に対する自己免疫疾患が関節リウマチであり、全身のあらゆる部分で炎症が起こる場合は全身性エリテマトーデスとなります。

 

これらの疾患は免疫が過剰に反応していることによって病気が起こっています。そのため、免疫の働きを抑えることができれば、病気の症状も鎮めることができると分かります。このような働きをする薬がタクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)です。

 

免疫の中でも細菌などの異物を認識して抗体産生に関わったり、病原微生物を直接殺したりする重要な細胞としてT細胞があります。このT細胞の働きを抑えることができれば、免疫の働きを弱めることで拒絶反応や自己免疫疾患による症状を抑制することができるようになります。

 

タクロリムスはT細胞の作用を抑制する働きがあり、これによって免疫が関わる炎症反応を鎮めます。タクロリムスは遺伝子レベルでT細胞が作られる過程を阻害すると考えられています。

 

 免疫抑制剤:プログラフ、グラセプター(タクロリムス)の作用機序

 

同じような免疫抑制剤としてシクロスポリン(商品名:サンディミュン、ネオーラル)が知られていますが、タクロリムスはシクロスポリンとは異なるメカニズムによって免疫抑制作用を示します。

 

より詳しい話をすると、タクロリムスはT細胞の活性化に関わるシグナルであるタクロリムス結合蛋白(FKBP)と呼ばれる物質と結合します。免疫活性化のシグナルが遮断されるため、結果としてT細胞が働かなくなるのです。

 

このような作用機序によって拒絶反応や自己免疫疾患を治療する薬がタクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)です。

 

 

 タクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)の特徴
同じ免疫抑制剤であるシクロスポリンよりも、約100倍強い作用を示す薬として創出された薬がタクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)です。肝移植の臨床試験から始まり、骨髄移植や腎移植など、さまざまな臓器移植による拒絶反応を抑えるために使用されてきました。

 

また、自己免疫疾患への治療も期待され、全身に炎症が引き起こされる全身性エリテマトーデスに使用されるようになりました。そこから関節リウマチや潰瘍性大腸炎にも応用され、多くの自己免疫疾患に対しても使われる薬です。

 

ただこれら拒絶反応や自己免疫疾患による症状を抑えるためには、薬を服用し続けることで免疫を抑えていなければいけません。服用を中止すると、再び免疫の暴走が始まって病気の症状が悪化してしまいます。そこで薬の服用をより簡便にするためにグラセプターが登場しました。

 

同じタクロリムスを主成分とする薬ですが、プログラフは1日2回服用する薬です。これをゆっくり薬が溶け出すように工夫した徐放製剤にすることで、1日1回の服用にした薬がグラセプターです。

 

特に臓器移植患者は薬の飲み忘れによって急性拒絶反応や臓器廃絶などを引き起こしてしまうため、薬を服用しやすいようにすることが重要になります。

 

このような特徴によって移植後の拒絶反応や自己免疫疾患を治療する薬がタクロリムス(商品名:プログラフ、グラセプター)です。

 

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