ペンタサ、アサコール(メサラジン)の作用機序:炎症性腸疾患治療薬
潰瘍性大腸炎やクローン病は消化管(食物の消化に関わる器官)で炎症が起こってしまう病気です。炎症が大腸だけに限定している場合は潰瘍性大腸炎ですが、大腸に限らず食道や小腸など消化管全体に炎症が起こる場合がクローン病となります。
これら消化管の炎症を治療するために使用される薬としてメサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)があります。メサラジンは5-アミノサリチル酸(5-ASA)とも呼ばれます。
メサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)の作用機序
潰瘍性大腸炎やクローン病が起こる原因は詳しく分かっておらず、両方とも20歳前後をピークとして若い年齢で発症します。
再燃(病気の症状が悪化する)と寛解(病気の症状が表れなくなる)を繰り返し、生涯に渡ってコントロールしなければいけない病気です。いわゆる難病であり、消化管で引き起こされる炎症が主な原因となります。
そこで、これら消化管の炎症を抑えるために使用される薬がメサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)になります。メサラジンは抗炎症作用を有しており、これによって炎症を鎮めることができます。
炎症性細胞からは活性酸素などの細胞に障害を引き起こす物質が産生されます。メサラジンはこれら活性酸素を除去する働きがあり、組織の障害を抑制することで炎症を抑えます。
また、炎症を引き起こす物質としてロイコトリエンと呼ばれる物質も関与しています。メサラジンはロイコトリエンが作られる過程を阻害することによっても炎症を鎮めます。
このような作用により、消化管で起こっている炎症を鎮める薬がメサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)です。
メサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)の特徴
潰瘍性大腸炎とクローン病はその病気の様子が似ていることから、これらを合わせて炎症性腸疾患(IBD)と呼ぶこともあります。
メサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)は炎症性腸疾患の中でも軽症から中等症の患者さんを改善する時に使用されます。重症である炎症性腸疾患の場合、ステロイド薬や免疫抑制剤など、より作用が強力な薬を使用します。
元々、潰瘍性大腸炎などの治療薬として用いられていた薬として、サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン)が存在します。サラゾスルファピリジンは薬を服用した後に代謝されることで有効成分が生成するプロドラッグであり、消化管の中でメサラジン(5-アミノサリチル酸:5-ASA)へと変換されることでその効果を発揮します。
つまり、炎症を鎮める作用をもつ本体はメサラジン(5-アミノサリチル酸:5-ASA)になります。そこでメサラジン(5-アミノサリチル酸)本体を薬として利用した薬がメサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)です。
サラゾスルファピリジンが分解されることによって生じるスルファピリジンは細菌を殺す抗菌作用などが知られており、副作用の原因にもなります。そこで、最初からスルファピリジンを除去したメラサジン単独で製剤化したのです。
ただメラサジンを何も工夫しないまま投与すると、その大部分は小腸上部で吸収されてしまいます。大腸まで薬が到達することがないため、潰瘍性大腸炎などの症状を改善することが難しいです。
そこで、薬の放出をゆっくりにします。小腸から大腸にかけて全体的にメサラジンが放出されるように制御した薬がペンタサであり、広い範囲の炎症性腸疾患の治療に使用されます。
ただし、潰瘍性大腸炎に限定すると、大腸だけに薬を作用させれば良いことが分かります。そこで、薬の放出をより大腸側に限定させることで、潰瘍性大腸炎の治療に特化させた薬がアサコールになります。
アサコールはpH7以上になることでようやく崩壊するように設計されており、回腸末端や大腸などの消化管の下部に到達することで薬が放出されます。これがペンタサとアサコールの違いになります。
このような特徴によって潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)を治療する薬がメサラジン(商品名:ペンタサ、アサコール)です。
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