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役に立つ薬の情報~専門薬学

イムラン、アザニン(アザチオプリン)の作用機序:免疫抑制剤

 

体の免疫が関わる病気は数多く存在します。例えば、臓器移植後は移植した臓器を免疫が攻撃してしまいます。これが、拒絶反応を引き起こします。また、潰瘍性大腸炎やクローン病、リウマチ性疾患なども免疫が過剰に反応することで生じる病気です。

 

そこで、これらの疾患を治療するために使用される薬としてアザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)があります。アザチオプリンは免疫抑制剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)の作用機序
感染症から身を守るために免疫は重要です。ただ、免疫の働きすぎによって病気に陥ることがあります。これが、先に挙げたリウマチ性疾患などです。つまり、世間で言われている「免疫力を上げて病気を治す」は誤りであり、免疫は過剰でも弱くてもいけません。

 

免疫が反応すると、炎症が引き起こされます。風邪などに感染すると熱や腫れが起こりますが、これは体内で炎症が起こっているからです。感染症から身を守るために、炎症は重要な反応なのです。

 

ただ、場合によっては免疫が過剰に反応し、自分自身を攻撃してしまうことがあります。移植した臓器を攻撃すれば拒絶反応になり、全身の消化管を攻撃し始めるとクローン病になります。これらの炎症反応は白血球によって起こります。そこで、白血球の働きを抑えてしまえば、炎症を抑制できることが分かります。

 

新たに白血球を作るとき、DNAを合成しなければいけません。DNAにはすべての生命情報が刻まれているため、DNAの複製ができなければ細胞を作れないからです。

 

このとき、DNAを合成するための原料が必要です。DNAの原料としては、アデニン(A)やグアニン(G)などの物質が知られています。これらの原料を合成するため、私たちの体の中には、DNAの原料を合成するための酵素(専門用語でIMPデヒドロゲナーゼ:IMPDH)が存在しています。

 

そこで、「DNAの原料を合成するために必要な酵素」を阻害すれば、新たな細胞は作られなくなります。その結果、白血球の合成が抑えられて炎症反応が起こらなくなります。

 

 イムラン、アザニン(アザチオプリン)の作用機序:免疫抑制剤

 

このような考えにより、新たに白血球が作られる過程を阻害することで免疫抑制作用を示す薬がアザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)です。

 

アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)はアデニン(A)やグアニン(G)と構造が似ています。そのため、DNAの合成酵素(IMPデヒドロゲナーゼ:IMPDH)は間違ってアザチオプリンの代謝物を取り込んでしまいます。こうして、酵素の働きが抑えられます。

 

 

 アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)の特徴
体内に入った後、分解されることでその効果を発揮する薬をプロドラッグといいます。アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)はプロドラッグであり、体内に入ることで6-メルカプトプリンという物質へと変換されます。この6-メルカプトプリンが、先ほどの「DNAの原料合成を行う酵素」を阻害するのです。

 

免疫の働きを抑えるため、「臓器移植後の拒絶反応」「潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患」「全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・皮膚筋炎、強皮症などのリウマチ性疾患・膠原病」に対してアザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)は有効です。

 

なお、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)は骨髄で作られる白血球を抑えるため、免疫の働きが弱って感染症に罹りやすくなります。これを、骨髄抑制といいます。

 

また、白血球以外の細胞にも作用するため、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)は肝機能障害を引き起こすことがあります。

 

このような特徴により、高い効果を有するものの、副作用にも注意しなければいけない薬がアザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)です。

 

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