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役に立つ薬の情報~専門薬学

チアトン(チキジウム)の作用機序:鎮痙薬

 

腕や足を動かすために、筋肉の働きは重要です。筋肉は骨格を動かすだけでなく、腸を含む消化管など、内臓の動きにも関与しています。ただ、筋肉の動きが活発になって急激な収縮を繰り返すようになると、痙攣(けいれん)を起こして激痛を生じるようになります。

 

そこで、胃や腸などの消化管に作用することで、痙攣や腸運動の亢進を抑える薬としてチキジウム(商品名:チアトン)があります。チキジウムは抗コリン薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 チキジウム(商品名:チアトン)の作用機序
消化管の運動を理解するためには、神経の働きを理解する必要があります。神経の中でも、「副交感神経」と呼ばれる神経系が重要です。

 

副交感神経とは、体を休めているときに働く神経だと考えてください。食事中など、休息しているときは唾液や胃酸がたくさん出ます。心臓の鼓動は遅くなり、リラックスすることによる排尿促進によってトイレが近くなります。そして、胃や腸の運動が活発になります。

 

ここでは、「副交感神経が活性化されると、腸管の運動が促進される」ことをまずはおさえてください。腸管運動が亢進しているということは、腸の筋肉が活発に動いていることを意味します。そこで、副交感神経の働きを抑えてしまえば、腸の運動を抑制して痙攣を鎮められることが分かります。

 

副交感神経の活性化には、アセチルコリンと呼ばれる物質が関与しています。「アセチルコリンの分泌 → 副交感神経の活性化 → 消化管運動の亢進」という流れになっています。

 

そこで、アセチルコリンが作用するためのスイッチを阻害すれば、アセチルコリンは働けなくなります。このスイッチを専門用語でムスカリン受容体といいます。ここでは、「腸管運動を活発にする物質の働きを、薬が抑える」と理解できれば問題ありません。

 

 抗コリン薬の作用機序

 

このような考えにより、腸の運動に関わる物質の働きを抑え、腸の痙攣を抑制する薬がチキジウム(商品名:チアトン)です。痙攣を抑えるため、鎮痙薬と呼ばれます。

 

 

 チキジウム(商品名:チアトン)の特徴
アセチルコリンの働きを抑える薬を総称して、抗コリン薬といいます。抗コリン薬という名前には、アセチルコリンに拮抗するという意味が込められています。

 

消化管の中でも、チキジウム(商品名:チアトン)は胃や腸管、胆のう・胆道、尿管に対して優れた作用を有しています。筋肉の痙攣を抑え、筋肉の緊張を和らげるのです。下痢や便秘などが問題となる過敏性大腸炎に対しても、便通異常や腹痛を改善させる作用を有しています。

 

また、消化管の働きを抑えて胃酸分泌を減らすため、胃炎や胃・十二指腸潰瘍に対しても使用されます。「胃酸がなければ潰瘍はない」といわれているため、胃酸分泌の抑制は胃炎の解消に重要です。

 

尿路結石による疼痛(痛み)に対しても、チキジウム(商品名:チアトン)は効果を有します。尿路の筋肉を弛緩させることによって尿路を広げ、尿路結石の排出を促し、痛みを和らげることができます。

 

元々は植物由来の成分を参考にして開発された薬です。植物成分をそのまま使用すると副作用が強いので、その構造を少し変換して副作用を軽減した薬としてチキジウム(商品名:チアトン)が生み出されました。副作用は少ないですが、主な副作用としては口渇や便秘などが知られています。

 

このような特徴により、消化管の筋肉に作用することで「筋肉の働きすぎ」を抑制し、痙攣を鎮めることで痛みを抑える薬がチキジウム(商品名:チアトン)です。

 

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