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役に立つ薬の情報~専門薬学

タペンタ(タペンタドール)の作用機序:オピオイド系鎮痛薬

 

がんは死因の上位であり、治療困難な病気でもあります。がんの末期になると激しい痛みに襲われ、それが1日中続きます。そのため、がんでは痛みを抑えることも重要です。

 

そこで、がんの痛みをコントロールするために使用される薬としてタペンタドール(商品名:タペンタ)があります。タペンタドールはオピオイド系鎮痛薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 タペンタドール(商品名:タペンタ)の作用機序
怪我などを負うと、痛みを感じます。このときの痛みを抑えるためには、鎮痛薬が用いられます。頭痛を抑制するときなどに対して、鎮痛薬は有効です。そのため、がんによる痛みにも、最初は頭痛などで用いられる鎮痛剤を使用するように規定されています。

 

ただ、がんでは浸潤や転移によって組織が侵され、これによって痛みが起こります。がんの疼痛は激しいため、一般的な鎮痛薬では対処できなくなります。そこで、中等度から高度の疼痛を伴うがんの痛みを抑えるために医療用麻薬が使用されます。

 

医療用麻薬としては、モルヒネが有名です。そして、モルヒネと同じような医薬品として、タペンタドール(商品名:タペンタ)があります。

 

痛みは生きていくために重要な機構ですが、激しすぎると日常生活に支障がでます。そこで、私たちの脳には痛みを感じなくさせるためのスイッチが存在します。このスイッチの一つとして、μ(ミュー)受容体があります。

 

μ受容体は脳内に存在します。この受容体を刺激すると、がんによる痛みであっても強力に抑えることができます。そこで、薬によってμ受容体を活性化させるのです。タペンタドール(商品名:タペンタ)はμ受容体の刺激薬です。

 

μ受容体は、オピオイド受容体とも呼ばれます。オピオイド受容体には何種類かあり、その中の一つがμ受容体なのです。そのため、μ受容体を刺激する薬はオピオイド薬と呼ばれます。

 

 オピオイド系鎮痛薬の作用機序

 

また、神経系の中には「痛みを抑制する神経」というものが存在します。これを、下行性疼痛抑制系神経といいます。そこで、この神経系を活性化すれば痛みを強力に抑制できることが分かります。

 

スポーツ選手などでは、試合中に怪我をしても続行していたという話を聞くことがあると思います。これは、下行性疼痛抑制系神経が活発になっていたからなのです。

 

下行性疼痛抑制系神経の活性化には、ノルアドレナリンが関与しています。そこでノルアドレナリンの量を増やせば、痛みを感じにくくさせることができます。

 

神経から放出されることで、ノルアドレナリンが働きます。ただ、神経から放たれたノルアドレナリンは、再び神経の中に取り込まれます。このとき、ノルアドレナリンの取り込みに関わる輸送体をトランスポーターといいます。トランスポーターによってノルアドレナリンが取り込まれると、それだけ神経間のノルアドレナリン量は少なくなります。

 

そこでトランスポーターの働きを阻害すると、神経間のノルアドレナリン量が増えます。その結果、下行性疼痛抑制系神経が活性化して痛みを感じにくくなります。

 

 タペンタドール(商品名:タペンタ)の作用機序

 

このような考えにより、痛みの抑制に関わるスイッチを起動させたり、痛みを感じにくくさせる神経を活性化したりすることでがんによる疼痛をコントロールする薬がタペンタドール(商品名:タペンタ)です。

 

 

 タペンタドール(商品名:タペンタ)の特徴
オピオイド系鎮痛薬であるタペンタドール(商品名:タペンタ)は、同じような働きをするトラマドール(商品名:トラマール)という薬を改良したものです。トラマドールよりも強い作用を有する薬がタペンタドールです。

 

トラマドールには、μ受容体への刺激作用やノルアドレナリン・セロトニンの再取り込み阻害作用があります。これに比べて、タペンタドール(商品名:タペンタ)ではμ受容体への作用やノルアドレナリン再取り込み阻害作用を強め、セロトニン再取り込み阻害作用を弱めています。

 

痛みに関しては、セロトニンよりもノルアドレナリンの方が鎮痛作用に関与していることが分かっています。また、セロトニンの量が増えると、セロトニン症候群など副作用のリスクも高まります。そこで、ノルアドレナリンへの作用を強め、セロトニンへの作用を弱めたのです。

 

つまり、トラマドール(商品名:トラマール)に比べてタペンタドール(商品名:タペンタ)では、「μ受容体への作用↑、ノルアドレナリンの作用↑、セロトニンの作用↓」となっています。これによって、より強力な鎮痛効果を得ることができます。

 

なお、タペンタドール(商品名:タペンタ)などの医療用麻薬を使用すると、悪心・嘔吐や便秘、眠気などの副作用が表れます。そのため、医療用麻薬を使用している患者さんの中には、吐き気止めの薬や便秘薬を使用している方がいます。これは、薬による副作用を回避するためです。

 

このような特徴により、2つの作用メカニズムによってがんによる痛みを強力に抑え、日々の生活を快適に過ごすための支援をする薬がタペンタドール(商品名:タペンタ)です。

 

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