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役に立つ薬の情報~専門薬学

メチコバール(メコバラミン)の作用機序:末梢性神経障害治療薬

 

手足のしびれや痛みを生じるものに末梢神経障害があります。体をめぐっている神経に障害が起こることにより、さまざまな症状が引き起こされるのです。

 

そこで、末梢神経障害を改善するために投与される薬としてメチコバール(一般名:メコバラミン)があります。メチコバールはビタミンB12製剤であり、メチルコバラミンとも呼ばれます。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)の作用機序

 

私たちの体を正常に動かすためには、栄養を十分に摂取する必要があります。これら栄養の中でも、ビタミンという言葉を聞いたことがあると思います。ビタミンにも種類がありますが、血液を作ったり神経の働きを調節したりする物質としてビタミンB12が知られています。

 

ビタミンB12は酵素の働きを助ける作用があり、葉酸(ビタミン9)と協力して働きます。ビタミンB12の量が少なくなると、欠乏症として貧血や末梢神経障害などが表れます。

 

そこで、ビタミンB12製剤を外から投与することにより、神経障害による痛みを改善させるために開発された薬がメチコバール(一般名:メコバラミン)です。

 

ビタミンB12の別名をコバラミンといいますが、ビタミンB12の一種としてメコバラミンが知られています。

 

メコバラミンは神経細胞への移行性が優れており、これによって神経細胞での酵素の働きを助けます。これが結果として、神経細胞での核酸(DNAなど)やタンパク質の合成を促します。そのため、ビタミン欠乏によって末梢神経障害を生じている場合にメチコバール(一般名:メコバラミン)の投与は有効です。

 

末梢性神経障害

 

このような考えにより、「栄養を補う」という観点で障害された神経組織を修復し、痛みを改善させる薬としてメチコバール(一般名:メコバラミン)が開発されました。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)の特徴

 

ビタミンB12の補給が目的の薬であるため、メチコバール(一般名:メコバラミン)に強力な作用があるわけではありません。その代わり、副作用がほとんどみられないことで知られています。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)によって神経症状を改善させるためには、長い時間を必要とします。また、数ヶ月や数年など長期間にわたって痛みを伴う神経症状の場合、神経の障害は治らないことがあります。

 

これらメチコバールによる治療は、「ビタミンB12が不足している状態」を改善しない限りずっと続けなければなりません。完全菜食の人であると、ビタミンB12が不足しやすいのでメチコバール(一般名:メコバラミン)の投与を必要とすることがあります。

 

糖尿病や神経炎による神経障害が原因で起こる「しびれ、痛み、麻痺」に対して、メチコバール(一般名:メコバラミン)はその有用性が確認されています。

 

なお、先に述べた通り、ビタミンB12の欠乏によって貧血を生じるため、ビタミンB12の欠乏によって起こる貧血の治療にも用いられます。

 

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)の用法用量

 

実際にメチコバールを服用するとき、成人(大人)ではメチコバール500μgを1日3回服用します。年齢や症状によって増量や減量することがあります。

 

メチコバールには250mg、500mg、細粒0.1%、注射液500μgがあります。メチコバールを使用するときは小児や成人を含め、その人に合わせた剤型を選択していきます。

 

患者さんによっては一包化や半錠、粉砕などを行うことがあります。このとき、メチコバールはビタミン剤であるため光に弱いです。そのため、薬をシートから出した後は素早く服用しなければいけませんし、もし一包化などで薬を外に出す場合であっても「遮光する」などの保存方法が適切です。

 

自宅で保存する場合であれば、保管方法としては冷蔵庫の中など暗くて涼しい場所で保存するようにしましょう。

 

また、半錠や粉砕などについては不可です。吸湿性が高く、光によって分解されるためです。ただ、病院などでは服用の直前に粉砕するなど、用事粉砕をすることがあります。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)の副作用

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)を使用することによる副作用はほとんどありません。ただ、「食欲不振、悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状」や「発疹や頭痛、発熱などの症」状が表れることがあります。重篤な副作用として血圧低下や呼吸困難などのアナフィラキシー症状を引き起こすことがあります

 

なお、メチコバール注射液500μgとして注射を活用する場合、注射部位の痛み(疼痛)を生じることがあります。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)の注意点

 

ビタミン剤であるため、飲み合わせなどに神経質になる必要はありません。また、赤ちゃん・小児(子供)や妊婦に至るまで服用できます。妊婦であったり授乳中であったりしても、胎児や赤ちゃんへの影響は報告されていません。

 

また、メチコバールは水溶性ビタミンであり、過剰に摂取しても尿中に排泄されるため過敏症はないと考えられています。アリナミンなど、他のビタミン剤とは異なり尿の着色もほとんどありません。

 

このような特徴により、強力な作用はないものの、主に神経障害の緩和を目的に投与される薬がメチコバール(一般名:メコバラミン)です。

 

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)の効能効果・飲み合わせ

 

それでは、メチコバール(一般名:メコバラミン)がどのような場面で活用されるのかについて、もう少し詳しくみていきます。メチコバールはめまい・耳鳴りや肩こり、手足のしびれなどさまざまな症状に活用されます。

 

めまい・耳鳴り(難聴)への作用

 

めまいや耳鳴り(難聴)に悩む人は多いです。めまいの原因としては、耳だけでなく脳が関わっていたりストレスが関与していたりします。このとき、自律神経失調症はめまいの原因の一つとして考えられています。

 

自律神経失調症を改善させるとき、「神経系の働きを正常に戻すビタミンB12を服用する」という方法があります。そのため、めまい・耳鳴り(難聴)の治療でメチコバール(一般名:メコバラミン)が活用されます。

 

めまい・耳鳴り(難聴)の治療薬としてはイソバイド(一般名:イソソルビド)、メリスロン(一般名:ベタヒスチン)、セファドール(一般名:ジフェニドール)、アデホスコーワ(一般名:アデノシン三リン酸)、ステロイド剤(プレドニン:一般名はプレドニゾロンなど)などがあります。こうした薬とメチコバール(一般名:メコバラミン)を併用することがあります。

 

なお、自律神経の乱れについては、睡眠障害(不眠症)やうつ病などの症状を引き起こすことがあります。これら自律神経失調症による睡眠障害やうつ病の場合、メチコバール(一般名:メコバラミン)が活用されることがあります。

 

手足のしびれ、痛み(疼痛)

 

末梢神経障害に活用されることから、神経障害・神経損傷によるしびれや痛みに対して広く活用されます。神経が関わる痛みとしては、帯状疱疹や椎間板ヘルニアなどがあります。こうした痛みや腰痛に対してメチコバール(一般名:メコバラミン)が投与されます。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)を服用することにより、神経の損傷修復が早くなるように調節させることができます。その結果、帯状疱疹や椎間板ヘルニアなどの痛みを和らげます。

 

なお、腰痛として腰が関わる神経の痛みとしては他にも坐骨神経痛、腰部脊柱管狭窄症などが知られています。ヘルニアだけでなく、メチコバール(一般名:メコバラミン)は腰痛に対して広く活用されます。

 

末梢神経障害による痛みを抑える薬としては、他にもリリカが知られています。リリカは「神経損傷による痛み(疼痛)を感じにくくさせる作用」が知られているため、2つの薬を併用することもあります。これにより、しびれや痛みを緩和します。

 

他には、頭痛などの痛みを緩和するときに広く活用される薬として、NSAIDsという種類の薬があります。NSAIDsで有名な薬にロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)があり、ロキソニンとメチコバール(一般名:メコバラミン)を併用することがあります。

 

肩こり、首こり、五十肩

 

多くの人が悩む肩こり、首こり、五十肩についてもメチコバール(一般名:メコバラミン)が活用されます。ただ、どのような肩こりであっても効果を示すわけではありません。あくまでも、神経障害による肩こり、首こり、五十肩に効果的です。

 

肩こり、首こり、五十肩など、筋肉が凝り固まっている場合は筋弛緩剤ミオナールを使用することがあります。ミオナールと併用することにより、肩こりを素早く和らげることができます。

 

貧血

 

貧血の中でも、ビタミンB12が不足することによって起こる貧血として巨赤芽球性貧血が知られています。そこでメチコバール(一般名:メコバラミン)を投与すれば、巨赤芽球性貧血が改善されます。

 

巨赤芽球性貧血では動悸や息切れ、倦怠感などが起こります。そこで、巨赤芽球性貧血による貧血症状を緩和するのです。なお、巨赤芽球性貧血の一種として悪性貧血があり、「悪性貧血の治療」でも活用されます。

 

妊婦など、貧血と判断されたときは鉄材であるフェロミアの他にも、メチコバール(一般名:メコバラミン)を処方されることがあります。

 

抗がん剤による副作用回避

 

がん治療のとき、抗がん剤による副作用を回避するためにメチコバール(一般名:メコバラミン)を使用することもあります。例えば、アリムタ(一般名:ペメトレキサド)という薬はDNA合成を阻害する抗がん剤であり、「葉酸」という物質と似た構造を有しています。

 

この薬の副作用を和らげるとき、葉酸の他にもビタミンB12を一緒に併用することで副作用が軽減すると報告されています。

 

その他(味覚障害・嗅覚障害、眼精疲労、口内炎など)

 

ここまで述べてきたこと以外にも、メチコバール(一般名:メコバラミン)は味覚障害・嗅覚障害を治療するときに活用されます。また、眼精疲労や眼瞼けいれん、顔面けいれんにも活用されることがあります。ビタミンB12の不足によって炎症を生じるため、口内炎を治療するために処方されることもあります。

 

味覚障害から眼精疲労、口内炎に至るまで多くの症状改善にメチコバール(一般名:メコバラミン)は効果を示します。

 

メチコバール(一般名:メコバラミン)とジェネリック医薬品

 

ここまでメチコバール(一般名:メコバラミン)の効果や特徴について記してきました。メチコバールは多様な使われ方がされるため、多くの疾患で処方されます。

 

なお、メチコバール(一般名:メコバラミン)にはジェネリック医薬品(後発医薬品)がありません。メチコバール自体がジェネリック医薬品だからです。

 

ただ、メコバラミン錠としてジェネリックメーカーからも薬が発売されています。薬価を比べると先発医薬品メーカーから発売されているメチコバールよりも、ジェネリックメーカーが発売するメコバラミン錠の方が薬価は安くなります。

 

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