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役に立つ薬の情報~専門薬学

キシロカイン(リドカイン)の作用機序:局所麻酔薬

 

手術をするとき、何もせずにそのままメスを入れることはありません。必ず麻酔をします。検査でも同様であり、麻酔をすることで苦痛を感じずに検査を行えるようになります。

 

全身麻酔によって眠らせてもいいですが、大手術でない限り全身麻酔は行いません。それよりも、部分的な麻酔の方が体への負担は少なく、回復も早いです。特に手術や検査をしたい「表面」だけを麻酔することは頻繁に行われます。

 

そこで、手術や検査などで表面だけを麻酔するときに使用される薬としてキシロカイン(一般名:リドカイン)があります。キシロカインは局所麻酔薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

キシロカイン(一般名:リドカイン)の作用機序

 

何かにぶつかったり傷を負ったりすると、その場所から痛みのシグナルが発せられます。例えば、足をすりむいてズキズキする場合、「足に痛みを感じている」というシグナルが足から発生するのです。

 

このときのシグナルは神経を伝って脳にまで到達します。脳がシグナルを受け取ることにより、ようやく「痛みを感じている」と判断するようになります。各部位で「痛みのシグナル」を生じた後、これが脳に届くことで痛みを感じとるのです。

 

そこで、痛みが神経を伝わる過程を遮断してしまえば、「痛みのシグナル」は脳にまで伝わらなくなります。その結果、痛みを感じなくなります。例えば、腕をけがしているのであれば、その周辺を麻酔します。すると、痛みのシグナルが脳に伝わらなくなります。

 

局所麻酔薬

 

これら神経をシグナルが伝わるためには、電気信号の働きが重要です。もっといえば、Naイオンの働きが大切です。

 

詳しい話は省きますが、通常私たちの細胞内外では電気の差が生まれています。Naイオンは細胞の外側に多く存在しており、何も刺激がない場合には細胞外はプラスの電気に傾いています。

 

ここで、例えば「痛みのシグナル」などが伝わってくると、細胞の外側に存在していたNaイオンが細胞内に流入するようになります。Naイオンはプラス性の電気を帯びているため、それまでマイナスだった細胞内の電気はある時点でプラスへと転換します。

 

Naイオンの働き

 

これが合図となり、シグナルが伝わっていきます。ここまで説明しましたが、神経興奮によって「痛みのシグナル」が伝わるためには、Naイオンの動きが不可欠であることだけを認識できれば問題ありません。

 

Naイオンが細胞内へ流入するための輸送体をNaチャネルと呼びます。Naチャネルを阻害すれば、Naイオンが動けなくなるため、「痛みのシグナル」の伝達も起こらなくなります。「痛みのシグナル」が途中で止まって脳にまで到達しないため、痛みも感じません。

 

このような考えにより、痛みを感じるために重要なNaイオンの働きを阻害することで局所麻酔作用を示す薬がキシロカイン(一般名:リドカイン)です。

 

キシロカイン(一般名:リドカイン)の特徴

 

あらゆる局所麻酔薬の中でも、キシロカイン(一般名:リドカイン)は多用される麻酔薬です。その剤形も豊富であり、注射剤や液体製剤だけでなく、ゼリー製剤や点眼液まで存在します。

 

麻酔作用が表れるまでの時間が早い速効性の局所麻酔薬であり、その作用も強力です。古くから使用されているので、さまざまな科で活用されています。

 

なお、キシロカイン(一般名:リドカイン)は局所麻酔薬としてだけでなく、抗不整脈薬としても利用されます。これは、キシロカインによるNaチャネルの阻害作用が、心臓でのリズムの乱れに対して有効な場合があるからです。期外収縮や発作性頻拍などに対してリドカインが使用されます。

 

このような特徴により、主に手術や検査での痛みを和らげる局所麻酔薬として利用されるものの、不整脈に対しても活躍することのある薬がキシロカイン(一般名:リドカイン)です。

 

 

キシロカイン(一般名:リドカイン)の効能効果・用法用量

 

前述の通り、キシロカインにはさまざまな剤形があります。基本的には麻酔のために活用される薬ですが、剤型によって使われ方が異なるので使い分けなければいけません。

 

まず、表面麻酔を行うためにキシロカイン(一般名:リドカイン)が多用されます。内視鏡(胃カメラ)を使用するときや尿道麻酔、気管内挿管などでは皮膚の表面に麻酔をかけることで痛みや苦痛を緩和することができます。

 

例えば胃カメラの場合、飲む込むときに咽頭反射(嘔吐を生じる反射)があるので苦しいです。そこで、麻酔をかけることで咽頭反射を軽減します。

 

・キシロカイン液

 

液体のキシロカインを使用する場合、成人(大人)では2~5mL(有効成分量で80~200mg)を使用します。

 

例えば、鼻腔内(鼻の中)や咽頭(のど)に対してカテーテルや内視鏡(胃カメラ)などの刺激物を入れることがあります。こうしたとき、前処置として表面麻酔薬キシロカイン5mLを塗布または噴霧します。

 

また、泌尿器科領域など膀胱鏡検査(尿道や膀胱の異常を内視鏡で調べる検査)や尿管カテーテルの挿入、結石処置(尿路結石の治療)などではキシロカインを倍に希釈し、約10mLを尿道内に入れます。その後、キシロカインの麻酔効果を得るために5~10分ほど尿道内に置きます。

 

気管支への内視鏡検査や全身麻酔での挿管を行う場合についても、倍量に希釈した後に10mL以内の適量を噴霧します。

 

・キシロカインゼリー

 

ゼリー状のキシロカインを活用する場合、皮膚表面の麻酔に活用されます。陰部への痛みや性交痛、やけど、レーダー脱毛、痔など、キシロカインゼリーはさまざまな場面で利用します。

 

このときは必要な分だけ適量を使用します。気管内挿管でも適量を使用しますが、年齢や体重、麻酔部位などによって減量や増量を行います。

 

尿道への麻酔にキシロカインゼリーを用いるとき、成人男性では10~15mL、成人女性では3~5mLを活用します。

 

なお、大腸内視鏡検査などでは肛門から内視鏡を挿入することになります。大腸内視鏡に限らず、坐剤を入れるときをなど通常の状態では入れにくいときに潤滑目的の単なるゼリーを患部に塗ります。ただ、一般的なゼリーで対応できない場合にキシロカインゼリーを用います。

 

・キシロカインビスカス

 

主に口の中やのどを麻酔するときにキシロカインビスカスが活用されます。粘性のあるキシロカインビスカスをスプーンなどですくい、のどへ流し込みます。

 

また、内視鏡検査では鼻から挿入することもあります。このとき、鼻腔麻酔をするために鼻からキシロカインビスカスを入れていきます。

 

内視鏡検査で食道などの表面麻酔をする場合、一気に薬の嚥下(飲み込み)をするのではなく、徐々に飲み込ませます。また、口腔内(口の中だけ)を麻酔したい場合、飲み込みなどはせずうがいだけに留めます。

 

・キシロカインポンプスプレー

 

スプレータイプのキシロカインも存在します。同じく内視鏡検査をするとき、のどに向けてシュッシュッと1~5回ふきかけます。

 

このとき、添付の専用ノズルを装着して使用します。ただ、1度に25回以上の噴霧は避けるようにします。

 

・キシロカイン点眼液

 

眼科領域での表面麻酔をする場合、キシロカイン点眼液を利用します。このときは点眼液として1~5滴を点眼します。

 

・キシロカイン注射液

 

キシロカイン(一般名:リドカイン)は局所麻酔薬として多用されますが、このときは注射をすることで局所麻酔をすることがあります。例えば下半身だけを麻酔したいときなど、手術を含め広く活用されます。注射液では表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、くも膜下麻酔で活用されます。

 

表面麻酔は、キシロカインの液、ゼリー、ビスカス、ポンプスプレー、点眼液などのように皮膚表面だけを麻酔することを指します。

 

浸潤麻酔では、皮下などに注射することによって、注射部位周辺の感覚をなくすようにすることができます。注射部位の周辺だけに作用するため、狭い範囲の痛みをなくします。

 

伝達麻酔は特定の神経を支配している場所に注射することで、その神経に関わる部分を無痛にする麻酔方法です。主に手や足の手術などで用いられ、例えば足の手術をするときは伝達麻酔によって足の痛みをなくすようにしたあとに処置をします。

 

硬膜外麻酔では、脊髄の近くに存在する「硬膜」と呼ばれる場所の外に麻酔薬を入れていきます。主に手術後の疼痛緩和に活用されます。

 

くも膜下麻酔では、主に下半身麻酔で利用されます。腰部にはくも膜下腔と呼ばれる部分があり、ここにキシロカインを注入することで下半身の脊髄神経の働きを麻痺させます。

 

キシロカイン注射液の場合、注射部位や種類(アドレナリンが入っているかどうか)によって使い方や使用量が変わってきます。

 

なお、そのほか注射にはキシロカイン注シリンジやキシロカイン筋注用溶解液、歯科用キシロカインカートリッジなども発売されています。

 

ちなみに、キシロカイン(一般名:リドカイン)は酸性の溶液であるため、注射時に痛みを生じることがあります。そこで、pH7の中性に近づけるため、メイロンという薬と配合することがあります。pHが中性に近づくと、キシロカインによる注射をしたときの痛みを軽減できます。

 

メイロンはめまいなどの治療薬ですが、注射による痛みを緩和するときにも活用されます。

 

・静注用キシロカイン

 

局所麻酔ではなく、静脈注射として全身に作用させる場合、麻酔ではなく不整脈の治療で利用されます。不整脈の治療では変な部分で心拍が起こる「期外収縮(心室性、上室性)」、急に脈拍が早くなって動悸を生じる「発作性頻拍(心室性、上室性)」などで活用されます。

 

また、急性心筋梗塞では心室性不整脈を生じることがあり、この予防としても用いられます。

 

このとき、大人では1~2mg/kgで計算し、1回50~100mg(2%注射液で2.5mL~5mL)を静脈内に注射していきます。1~2分の時間をかけての静注です。

 

効果が認められない場合は5分後に同量を注射します。効果の持続を目的とする場合は10~20分の間隔で追加投与しても問題ないですが、1時間内の基準最高投与量は300mg(2%液15mL)であるため、これを守るようにします。

 

静脈内注射での作用時間は10~20分ほどで消失します。

 

キシロカイン(一般名:リドカイン)の副作用

 

キシロカインの主な副作用としては、眠気、不安、興奮、霧視、めまい、しびれ感、悪心・嘔吐(吐き気)、じんましん、浮腫(むくみ)などが知られています。

 

また、重大な副作用にショック症状があります。徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸抑制、チアノーゼ、意識障害などを生じた場合、使用を中止します。キシロカインはアミド型局所麻酔薬と呼ばれますが、こうした麻酔薬に過敏症のある人は禁忌であり、使用できません。

 

ショック症状が強い場合はアナフィラキシーショックのような症状を引き起こし、意識障害、振戦(手足のふるえ)、けいれんなどの副作用を生じることもあります。

 

また、これが注射になると副作用が表れやすくなり、異常感覚、知覚・運動障害を起こすことがあります。

 

悪性高熱として頻脈・不整脈・血圧変動、急激な体温上昇、筋強直、チアノーゼ(血液の暗赤色化)、過呼吸、発汗、アシドーシス、高カリウム血症、ミオグロビン尿(ポートワイン色尿)を生じることもあります。

 

過剰投与してしまった場合、中毒症状が表れます。このときは中枢神経症状として不安、興奮、多弁、口周囲の知覚麻痺、舌のしびれ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴、視覚障害、振戦などが表れます。症状が進行すると意識消失や全身けいれんへと移行します。

 

また、血圧低下、徐脈、心筋収縮力低下、心拍出量低下、刺激伝導系の抑制、心室性不整脈(心室性頻脈、心室細動など)、心停止も生じます。

 

高齢者への使用

 

高齢者に対してキシロカイン(一般名:リドカイン)を使うとき、一般的に生理機能が低下しているので副作用に注意しながら使用していきます。また、麻酔を注射したとき、麻酔される範囲が広くなりやすくなります。

 

また、静注として不整脈治療で活用するとき、キシロカインは主に肝臓で代謝されますが、肝機能が低下している場合は血中濃度(血液中の薬物濃度)が高くなりやすくなります。その場合、けいれんなどの中毒症状に注意が必要です。

 

小児(子供)への使用

 

局所麻酔の目的で小児に対してキシロカイン(一般名:リドカイン)を活用することはよくあります。内視鏡検査や手術時を含め、広く利用されます。

 

ただ、乳児や幼児など3歳以下の子供に対して表面麻酔の目的でキシロカインを使用する場合、麻酔効果の把握が困難なので高用量や頻回投与されやすくなります。こうした事態を避けるため、低用量から投与開始していきます。

 

不整脈に対するキシロカインについては、小児では「安全性は確立していない」とされています。ただ、子供に対しても使用することがあり、このときの小児薬用量としては初回に1mg/kgを緩徐に静注し、その後は「20~50μg/kg/分」を維持用量とします(参考:小児や用量ガイド)。

 

妊婦・授乳婦への使用

 

妊娠中の方にキシロカインを使用することについて、液体やゼリーなどの表面麻酔であれば使用しても問題ありません。

 

ただ、硬膜外麻酔など注射液を使用する場合は注意が必要です。キシロカイン(一般名:リドカイン)は胎盤を容易に通過し、このときは「母体の血中濃度(血液中の薬物濃度)に比べて、胎児内では50~60%の血中濃度になる」とされています。

 

妊婦への使用は禁忌ではないものの、中枢神経毒性を示す可能性があるため、注射や点滴をする場合は治療の有益性が上回ると判断されたときのみ使用されます。なお、催奇形性は報告されていないため、妊娠初期で使用したことが人工妊娠中絶の理由にはなりません。

 

一方で授乳中の人については、注射や点滴による使用であっても問題なく使用できます。母乳中に移行することは確認されているものの、その量は微量なので赤ちゃんへの影響はありません。キシロカインは授乳中でも服用できる薬です。

 

 

キシロカイン(一般名:リドカイン)の効果発現時間

 

麻酔薬としてキシロカインを用いるとき、数分で効果が表れてきます。麻酔によって感覚が麻痺してくるようになり、痛みを感じなくなります。もちろん、浸潤させる必要がある場合は時間経過と共に徐々に麻酔が効いてくるようになります。

 

作用時間は長いわけではなく、表面麻酔であれば1時間後くらいには効果が薄くなってきます。ちなみに、静注で投与したときであれば、半減期(薬の濃度が半分になる時間)は2時間ほどとなっています。

 

キシロカインは即効性のある薬ですが、その効果はすぐになくなっていきます。そのため、内視鏡検査や手術時(オペ時)などの使用に適しています。

 

キシロカインにアレルギーをもつ人への対処法

 

患者さんによっては、キシロカイン(一般名:リドカイン)に対してアレルギーをもつ人がいます。このときの症状としては、血圧低下、脈拍低下、意識消失などを伴うことがあります。

 

こうしたとき、キシロカインを使用することはできません。そこで、代替薬を活用します。

 

前に説明した通り、キシロカイン(一般名:リドカイン)はアミド型局所麻酔薬に分類されます。そのため、同じようにアミド型の局所麻酔薬は使用できません。

 

ただ、麻酔薬には他にもエステル型の局所麻酔薬が存在します。こうした麻酔薬としてプロカインが知られており、「キシロカインにアレルギーをもつ人ではプロカインが活用される」という使い分けをします。

 

また、キシロカイン注射液にはアドレナリンを含む薬があります。アドレナリンを含有する場合、添加物(防腐剤)としてパラベンが含まれています。

 

稀に添加物であるパラベンにアレルギーを示す人もいるため、このときはキシロカインアレルギーでなくても「アドレナリン入りのキシロカイン注射」を投与することで、アレルギー症状を生じてしまいます。

 

ちなみに、患者さんによってはキシロカインについて「アスピリン喘息の人は活用できるのか」と疑問に思う人がいます。ただ、キシロカインがアスピリン喘息を起こすことはありません。

 

アスピリン喘息はNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤を服用することで起こります。このNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤は、痛み止めの薬とはいってもキシロカインとはまったくの別物です。NSAIDsとしてはロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)やバファリン配合錠などが知られています。

 

キシロカインEの活用法と違い

 

前述の通り、キシロカインにはアドレナリン(別名:エピネフリン)を含有している製品があります。キシロカイン注射液エピレナミンという名前で販売されています。これをキシロカインEと呼び、エピネフリン(Epinephrine)の「E」が付けられています。

 

アドレナリンには血管収縮作用があります。これはつまり、止血効果を有することを意味しています。

 

局所麻酔で活用するとき、アドレナリンの入っていない局所麻酔薬を利用するのが一般的です。ただ、プロポフォールなどの全身麻酔を使用したときにキシロカインEを用いることがあります。

 

全身麻酔で既に麻酔が効いているにも関わらず、なぜ局所麻酔薬を用いるのでしょうか。それは、アドレナリンによる止血効果を得るためです。局所麻酔のためのキシロカインはどうでもよく、アドレナリンによる効果を得るために用いられるのです。

 

アドレナリン注射としては、ボスミン(一般名:アドレナリン)があります。ただ、止血効果を得るためにボスミンを原液で使用することはなく、10万倍や20万倍などに希釈します。

 

ただ、手術のたびにそうした希釈作業をするのは面倒です。また、薄めるときの濃度を間違えたら大変なことになります。そこで、最初から10万倍に希釈されているキシロカインEを用いることによって迅速・安全に手術を行うのです。

 

なお、鼻血が止まらないときにキシロカインやボスミンをガーゼにひたし、鼻に詰めることがあります。当然、ボスミンは希釈して用います。キシロカインによる麻酔効果やボスミンによる血管収縮(止血作用)により、鼻血が止まります。

 

肩こり、腰痛などの治療で活用されるキシロカイン

 

肩こりや首こり、腰痛を含め筋肉が緊張することによって痛みを生じることがあります。例えば、四十肩や五十肩はその一つです。肩こりによる緊張型頭痛もあります。膝の痛みや腰痛(椎間板ヘルニア、ぎっくり腰など)、坐骨神経痛も筋肉の緊張が関係しています。

 

「固くなって痛みの原因となる筋肉」はコリとなります。こうしたコリの部分を押すと、痛み(圧痛)を生じます。そうした部分をトリガーポイントといいますが、トリガーポイントに局所麻酔薬やステロイド、鎮痛剤などを注射することで痛みを取ることがあります。

 

これを神経ブロック療法といいます。神経の周辺にキシロカインなどの局所麻酔薬を注射することで痛みの経路をブロックし、筋肉の緊張を取り去るのです。

 

ブロック注射では肩こり、首こり、四十肩・五十肩、膝痛、腰痛(椎間板ヘルニア、ぎっくり腰)、坐骨神経痛などに活用されます。効果には個人差があり、急性の痛みでは大きな効果を得られることがあります。ただ、慢性の痛みではリハビリなどを組み合わせて治療していきます。

 

内服薬も使用され、このときはパニック障害にも活用される抗不安薬デパス(一般名:エチゾラム)などが用いられます。デパスには筋肉の緊張を取り去る作用があります。

 

また、痛みを取り去るため、鎮痛薬であるノイロトロピンを活用することもあります。

 

ちなみに、トリガーポイント注射ではキシロカイン以外にも、ネオビタカイン(一般名:ジブカイン)という局所麻酔薬が活用されます。

 

腱鞘炎に用いるキシロカイン

 

腱鞘炎の治療にもキシロカインが活用されます。腱鞘炎には種類があり、ばね指やドケルバン腱鞘炎が主です。ばね指では手の屈折時に痛みがあったり、指を曲げた後に伸びなかったりします。また、ドケルバン腱鞘炎では手首の親指側に痛みを生じます。

 

こうしたとき、ステロイド剤のケナコルト(一般名:トリアムシノロン)と一緒にキシロカインを注射します。ケナコルトは懸濁液であり、2~3週と徐々にステロイドの成分が溶け出すことで効果を発揮します。関節腔内注射としてケナコルトを用い、腱鞘炎の治療をします。

 

なお、腱鞘炎に限らずスポーツや日常生活によって生じる肩や腰、ひざの痛みに対して関節内注射で「キシロカイン+ケナコルト」を活用することもあります。

 

ちなみに、関節内注射ではヒアルロン酸を活用することがあります。また、ステロイド剤としてケナコルトだけでなくデカドロン(一般名:デキサメタゾン)も使用されます。

 

抗がん剤の副作用による口内炎治療

 

がん患者に対してもキシロカイン(一般名:リドカイン)が活用されます。口の中に炎症を生じ、食べるときに痛くなる疾患として口内炎があります。口内炎は抗がん剤などの副作用として多いです。

 

こうしたときに口内炎の痛みを抑えたり、口内炎の悪化を防いだりするため、キシロカインをアズノールうがい液に溶かし、この液でうがいをすることがあります。キシロカインにアズノール軟膏を溶かし、これを活用することもあります。

 

また、粘膜保護作用のあるハチアズレと保湿作用のあるグリセリンを混ぜ、「口腔乾燥のある口内炎」を治療することがあります。これに加えて口内炎による痛みがある場合、「キシロカイン+ハチアズレ+グリセリン」を用います。

 

がん患者にとって疼痛のケアは重要です。がん患者ではオピオイド系鎮痛薬(医療用麻薬)が活用されるほどなので、同じように口内炎による痛みをコントロールすることも大切です。

 

歯科領域でのキシロカイン

 

手術や口内炎治療でキシロカインが用いられることから、当然ながら歯科領域でも活用されます。例えば虫歯治療や抜歯を含め、その状態のままでは痛いので麻酔をします。このときにキシロカインが使われます。

 

なお、歯科領域ではキシロカインだけでなくオーラ注という製品もあります。歯科用キシロカインもオーラ注もリドカインとアドレナリンが入っており、製品名が違うだけで中身は同じなので使い分けることはありません。

 

さらに、歯科麻酔薬にはシタネスト(一般名:プロピトカイン、フェリプレシン)も存在します。血管収縮薬アドレナリンの代わりとして、シタネストではフェリプレシンが入っています。フェリプレシンの作用はアドレナリンよりも弱いです。

 

「副作用である血圧上昇などは低いものの、麻酔効果の強さや作用時間はキシロカインやオーラ注よりも弱い」のがシタネストです。

 

また、歯科治療では「口の中に治療器具が触れることにより、オエッと嘔吐反射をしてしまう」ことがあります。こうした嘔吐反射を回避するため、キシロカインポンプスプレーで処置をして吐き気をなくすことがあります。

 

耳鳴りを治療するキシロカイン

 

理由はよく分かっていないものの、キシロカイン(一般名:リドカイン)には耳鳴りを改善する作用が知られています。静注や点滴などをすることにより、耳鳴り症状を軽減できるのです。

 

耳鳴り治療の場合、不整脈治療とは大幅に少ない量の薬を投与することになるため、副作用は少なくなります。

 

ただ、キシロカインの使用によって耳鳴りが完全に消失するとは限りません。ただ、耳鼻科での治療を含め、有効率の高い耳鳴り治療法の一つです。

 

他の麻酔薬との違い

 

アミド型の局所麻酔薬には、キシロカイン以外にマーカイン(一般名:ブピバカイン)、カルボカイン(一般名:メピバカイン)などがあります。それぞれの違いは作用時間であり、「マーカイン:2~4時間」「カルボカイン:1~2時間」「キシロカイン:1時間」ほどの作用時間です。

 

また、長時間作用型の麻酔薬であるアナペイン(一般名:ロピバカイン)も存在し、約8時間は無痛状態を得られるとされています。

 

このように、キシロカイン(一般名:リドカイン)の特徴や性質、使い方について広く解説してきました。

 

医療用医薬品だけでなく、キシロカイン軟膏など市販薬でも用いられているのが有効成分のリドカインです。局所麻酔作用により、市販薬のキシロカイン軟膏ではかゆみや痛みを鎮める作用があります。

 

医療機関を受診して内視鏡検査や歯科治療、手術を含め誰もが一度はお世話になったことのある薬がキシロカイン(一般名:リドカイン)です。キシロカインは古くから用いられている薬であり、多くの人に現在でも活用されています。

 

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