フィブラストスプレー(トラフェルミン)の作用機序:褥瘡治療薬
寝たきりなどでずっと同じ姿勢を保っていると、特定の部分だけ皮膚の血行が悪くなります。その結果、皮膚の壊死を引き起こすことがあります。
これを褥瘡(じょくそう)といいます。別名で、床ずれと表現されることもあります。
そこで、褥瘡を治療するために使用される薬としてトラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)があります。トラフェルミンはヒトbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)製剤と呼ばれる種類の薬になります。
トラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)の作用機序
私たちが怪我をして傷を負ったとしても、何日か経過すれば傷はきれいになくなります。これは、傷を修復しようとする機能が働くためです。そこで、「傷を修復しようとする力」を引き出すことで褥瘡を治療しようとします。壊死によって皮膚を欠損したとしても、頑張って直そうとする力を助けるのです。
創傷を負ったときは止血期、炎症期、増殖期、再構築期という4つの段階を経て修復されます。それぞれで役割が異なります。
傷を受けると、すぐに止血期になります。出血を止め、感染症から守るために傷を負った部位に白血球を呼び寄せます。
その後、炎症期へと移行します。白血球によって炎症が起こり、細菌など感染症を引き起こす異物を除去します。このとき、傷をそのままにしていては問題であるため、「細胞増殖因子(細胞を増やすことで、傷を修復する因子)」としてbFGFなどの物質が放出されます。
bFGFは皮膚組織を構成する「繊維芽細胞」に働きかけ、さらに血管の内面を構築する「血管内皮細胞」を活性化します。これにより、新たな皮膚細胞を作ったり、血管の構築(血管新生)を行ったりする作用を促進させます。
これが、増殖力の盛んな若い細胞の形成に繋がります。このような細胞組織を肉芽組織といいます。bFGFという物質は、「傷を修復するために肉芽組織の形成を促す」と理解してください。
最後に、肉芽組織は弾力のある繊維やコラーゲンなどに置き換えられます。このような過程を再構築期と呼び、この過程が終わると傷が元通りになっていきます。
傷を負ったとき、bFGFなどの「傷の修復を促す因子」の働きが重要になります。そこで、人工的にbFGFを作り出して投与すれば、褥瘡などが起きたときに効率よく傷を修復できることが分かります。
このような考えにより、体に備わっている「傷の修復能力」を活性化させ、褥瘡を治療する薬がトラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)です。トラフェルミンは表皮形成や肉芽形成、血管新生などを促します。
トラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)の特徴
遺伝子組み換え技術によって人工的に作り出したbFGFであるため、トラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)はヒトbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)製剤と呼ばれます。
トラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)は良質な肉芽形成を促すため、治療期間を短縮させることができます。また、色素沈着を少なくさせるなど、創傷治療の質を改善させる作用も知られています。
褥瘡治療では、創傷部位の洗浄を行った後に被膜剤(フィルム)を用いて、患部の湿潤(うるおい)を保たせます。このとき、あらかじめトラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)を噴射しておきます。その後、被膜剤を上からかぶせることにより、傷の治りを早くさせます。
褥瘡だけでなく、やけどやうっ血などによって起こる皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)に対しても、トラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)は有効です。
このような特徴により、傷を生じたときの治りを早くし、創傷治療の質まで改善させる薬がトラフェルミン(商品名:フィブラストスプレー)です。
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